本で繋がる
よく行くカフェで、読書会が開催された。
今月上旬に古本市があったのだが、そのアフターイベントとして開かれたものだ。
私はその古本市の2回目の開催にお邪魔していた。
小説、雑誌、ZINE、ポストカード、栞など様々な品物が出品されていて、会場に入ると心がわくわくした。
そこでZINEを販売していた青森出身東京在住の女性と知り合い、今でも連絡をとっている。
古本市に足を運んだことは、その時勤めていた会社を辞めるきっかけにもなってくれた。
本だけでなく、人との繋がりや、心境の変化までもたらしてくれた古本市にとても感謝している。
だから3回目となる今回も、必ず行こうと意気込んでいた。
しかし転職に伴い土日は休みではなくなり、さらにちょうど忙しい日で、休みを取ることも出来なかった。
悔しくも古本市には参加できなかったのだが、参加出来なかった人も是非!というお言葉に甘え、アフターイベントの読書会に参加してきたのである。
日曜日の夜。
仕事を定時で終えて、急ぎ足で会場へと向かう。
仕事に行くだけだから、といつもはメイクも服装も適当だが、今日はきちんとした。
紹介したい本をリュックに背負い、うまく話せるかな…などとぐるぐる考えているうちに、カフェに到着した。
ドアには読書会のチラシが貼られていた。
私は少し遅れての合流のため、扉を開けるのが少し緊張した。
恐る恐る入ると、そこには10人ちょっとの人が大きなテーブルを囲んで座っていた。
まだ始まったばかりだよ!とマスターが声をかけてくれて安心しつつ、空いている席に腰掛けた。
外はとても寒かったけれど、中は暖房で逆に暑かったので、レモンスカッシュを注文した。
冷えた身体が温まっていくのとともに、読書会の空気感に自分を馴染ませていく。
始まったばかりの読書会は、1人1人自己紹介と、持ってきた本を紹介していく流れだった。
途中参加だったけれど、充分過ぎるほど実りある話が聞けた。
自分の番が来るまでは心臓がずっとうるさくて、実はあまりじっくりと話を聞くことができなかった。
私は緊張しながらもなんとか話し終えて、皆さんから拍手を貰うと、フッと心が軽くなった。
自分と同じように本が好きな人たちが目の前にたくさんいて、好きな本の話ができること。
それはとても幸せなことだなあ、と思った。
私が紹介したのは3冊。全て小説だ。
瀬尾まいこさんの「天国はまだ遠く」と、山本文緒さんの「恋愛中毒」、そして朝井リョウさんの「正欲」を紹介させてもらった。
どれも推し作品なので延々と語ってしまいそうだったので、簡潔に、でもきちんと魅力が伝わるように話そうと思った。
しかし、こうして文章を書くのとは違って、話すことは修正がきかない。
だから私は、人前で話すことにかなり苦手意識がある。
人と話すことは好きだけれど、それなりの人数の前で、会話形式ではなく自分の話を聞いてもらうということには、全く慣れていなかった。
しかし読書会が終わってから、詩を書いているという女性から「紹介がすごくお上手だと思いました。どれも読んでたことが無いジャンルだったから、挑戦してみたくなりました!」と声をかけてもらったのである。
それはあまりに嬉しく、舞い上がりそうな気持ちになった。
さらに、恋愛中毒という小説を紹介した時、眼鏡が素敵な女性が「薬師丸ひろ子さん主演で、ドラマになってたよね…!」と声をかけてくれた。
知らなかったし、私が紹介したことから話が広がったことも嬉しかった。
その方とももっと話してみたかったけれど、あまり時間がなかったので、次があるのなら是非もっと話したいなと思った私であった。
人前で話したことでさらに体温が上がったのか、調子に乗って2杯目を注文した。
杏仁豆腐みたいな風味のお酒をミルクで割った、「アマレットミルク」にした。
美味しいお酒を飲みながら、みんなで本の話をする。
なんて楽しい時間なんだろうと、しみじみ嬉しかった。
みんなが紹介した本を並べて写真を撮って、古本市で販売されていたという本を2冊お迎えして、とてもあたたかな気持ちで会場を後にする。
私よりさらに遅れて合流した母と、「楽しかったね〜!」とにこにこしながら帰宅した。
日曜日の夜、こんな素敵なイベントに参加できたことを嬉しく思う。
来月も開催されるようなので、是非お邪魔したいと思った。
しかしながら、仕事も繁忙期を迎えるためどうなるかわからない。
この調子で毎月開催されないかな、と期待しつつ、また本好きな人で集まれることを楽しみにしていようと思う。