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2024年にタンス預金が没収される?堤未果『デジタルファシズム』の警告1

2024年に来るXデーをご存知だろうか?

 堤未果著『デジタルファシズム』には、恐るべき未来が書かれている。あまりにもおぞましいが、岸田政権が、湯水のように赤字国債を使って次から次へ大盤振る舞いをしているのは、次のようなシナリオを考えているからだろう。
 2019年4月9日。
 閣議後の記者会見の席で、麻生太郎財務大臣はこんな発表をした。2024年度に、千円、五千円、一万円の3種のお札が新デザインに切り替わるという。
 このニュースを聞いた時、あることを思い出してゾッとしたという声がある。
 終戦直後の1946年。日本で行われた「預金封鎖」だ。
 当時日本は、第二次世界大戦の資金調達のため国債を大量に発行し、国の財政が悪化していた。敗戦後に残った莫大な借金を帳消しにし、インフレを抑えながら国を復興させるために、政府が実施しだのが「預金封鎖」だ。
 政府は預金者が銀行に殺到するのを防ぐため、予告なしに突然次のような文言を発表した。
 

「預金封鎖を行います」

 ピンときた国民は慌てて銀行に走り、預金をできる限り引き出した。
 だがここで政府は、さらなる発表をする。
 「お札は新しいデザインに切り替わります」
 新しいお札に切り替わるということは、それ以降は古いお札が無効になるということだ。預金封鎖前に急いで銀行から下ろした現金も、自宅に隠し持っている現金も、銀行に持っていって新しいお札に交換しなければ、もう使えなくなってしまう。
 その翌日、政府は預金封鎖を開始した。人々が銀行に持ってきた旧貨幣を数えると、一人一人の資産が明らかになる。これを記録し、データが揃ったところで、いよいよ本命の政策を実行する。10万円を超える預金に、財産税をかけたのだ。財産税は、資産総額が大きいほど税率も高くなる。例えば1500万円を超える資産を持っている人にかけられた財産税は90%、つまりほとんど持っていかれてしまう。多額の資産を持つ富裕層は、まさに一網打尽だった。財閥は解体され、資産家は容赦ない国の手によって転落してゆく。
 銀行に預けた預金を下ろそうとしても、政府が先に手を川していた。1ヵ月の引き出し上限額が300円に設定されていたのだ。
 現金の他にも、土地や貴金属など全ての財産に財産税がかけられ、逃げることは不可能だった。
 政府は預金封鎖の理由について、「戦争で背負った国の借金は、全国民で平等に背負いましょう」「これも全て、日本経済の復興のためなのです」などと美しい精神論で飾り立てていたが、後になって当時の渋沢敬三大蔵大臣の証言により、この政策の真の目的が財産税徴収だったことが明らかになっている。
 まさかそんな恐ろしいことが、と思うだろうか?
 だが預金封鎖は、決して珍しいことではない。
 2001年にはアルゼンチン、2002年にはウルグアイ、2013年にはキプロスで、それそれ実施されでいる。
 近代史を見ればわかるように、人間の歴史は、一定のサイクルを経て、同しことを繰り返すものだ。
 2020年1月。
 当時の高市早苗総務大臣は、2016年1月から始まったマイナンバーと、国民の銀行口座の紐づけ義務化を検討するよう、財務省と金融庁に要請したことを発表した。
 国民一人一人に12桁の番号を割り振り、税金、住民票などをまとめて管理するマイナンバーと銀行口座を連動させれば、個人資産把握が可能になる。
 紐づけされる情報は、この他にも医療情報や運転免許証、最近では文科省が子供の成績との紐づけを検討し始めるなど、次々にその範囲が拡人中だ。
 ちなみに政府のロードマップ案によると、全ての個人情報が紐づけられたマイナンバーの導入は、新札が登場する前年の2023年に設定されている。
 マイナンバーの口座紐づけによる国民の財産把握。そして麻生大臣の新札発行の発表。

 戦争の代わりにオリンピックとコロナパンデミック対策のための大規模な財政出勤。
 多くの人が「預金封鎖の再来」を不安視するのは、不気味なほど1946年と同し条件が揃っているからに他ならない。2024年に登場する新一万円札のデザインに使われる渋沢栄一氏が、かつて預金封鎖を実施した渋沢敬三大蔵大臣の祖父だというのも、当時国民が受けたショックを思うと何とも言えないブラックジョークだろう。

キャッシュレスの次はデジタル財産税

 1946年の突然の預金封鎖と財産税徴収という苦い経験があるせいで、日本人は家の中に現金を置いておく傾向が強い。
 日銀の「資金循環統計」によると、2020年12月末時点で、日本の家計が保有する現金、いわゆる「タンス預金」が、過去最高額の101兆円を記録した。
 これをあぶり出したい政府にとって、新札切り替えは大きなチャンスになる。
 財産税に関しては、新札と旧札を交換する際の交換レートを調整することで簡単に徴収できる。例えば資産の9割の財産税の場合は交換レートを1対10にすればいい。
 そんなことできるわけがない、という声もある。
 財産権の侵害だ、憲法に引っかかるじゃないか、と。
 そう、確かに、今のままの憲法では財産悦は違憲になる。
 バンデミックや金融危機など、想定外の大災害が起きて〈緊急事態宣言〉が発令され、政府が全権を掌握するような特別なケースにでもならない限り。
 憲法改正を推進する、自民党の日本国憲法改正草案99条第1項には、こう書いてある。
 〈緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる〉
 また、「財産税など、国民の怒りを買って選挙で落選するのが怖い与党にできるわけがない」などと一笑する声もある。
 だが本当にそうだろうか。
 財産税は、必ずしも政府が直接手を下さなければできないわけではない。
 例えば最近、お菓子を買った時、前よりも中身が少ない上げ底だと感じたことはないだろうか?それは物価が上がっているからだ。値段を上げると売れなくなるので、メー力ーは消費者に気づかれないよう、中身を少しずつ減らしている。
 物価が上がるということは、その分お金の価値が下がるということだ。物価が二倍になると、それまで同じ値段で買えていたものが半分しか買えなくなる。
それはつまり、私たちの預金の価値が半分になってしまうということだ。
 逆に物価が上がると借金は事実上減る。だから国の借金も、帳簿上の数字はそのままでもお金の価値が下がるため、実質半分になるのだ。
 国がわざと市中にお金を大量に流せば、インフレが起きて国の債務はぐっと減る。
 だがそんなことをしたら大ごとになるので、どこの国でもお金の供給量が増えすぎないよう、しっかり目を光らせているのだ。
 たった一つの例外を除いては。
 デジタルマネーが社会の隅々まで拡がって、市中に出回るお金の量が把握しきれなくなった時に、財産税徴収のチャンスがやってくる。
 PayPayのような、実体でなくスマホ内の仮想空間に貯まってゆくお金が増えてゆくほどに、市中のお金の総量はうやむやになっていくだろう。
 デジタル時代の財産税は、音を立てずにやってくる。
 キャッシュレス決済という華やかな新技術に隠れ、そっと私たちの足元に忍び寄ってくるのだ。


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