松家仁之著『光の犬』を読む

 横浜に住む40年来の友人から紹介されて、松家仁之(まついえまさし)著の小説『光の犬』を読んだ。前回の投稿との関係で家族というか血縁について深く考えさせられる小説だった。北の町に根づいた一族三代と、そのかたわらを照らす北海道犬を描いた小説だが、助産婦を志した祖母が東京で弟子入りした医師から聞かされた言葉が印象的で、心に残った。

「血のつながった親子は、じつはやっかいだ。血のつながりのない他人に愛されて育てられたら、かえってほんとうの信頼を育てられるかもしれない。子どもはほんとうの意味で自由にするものがなんであるか、正解はないと思ったほうがいい。」弟子たちに向かって話をしながら、先生は自分に向かってこの話をしているのではないか。よね(祖母の名前)はそう感じた。

 もう一つは、三代目の男の子である始(はじめ)が、50代になって東京から北海道の田舎に妻と別れて住み、年老いていく父母と結婚しなかった父の三姉妹を見ながら「家族って、幻想なんじゃないか?」とつぶやく場面が強く記憶に残った。

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