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日本語版のあるZooniverseプロジェクト

(最終更新2025/1/14 新たに公開された1プロジェクトを更新)

市民科学プロジェクトのウェブサイト(プラットフォーム)であるZooniverseでは、現在多数のプロジェクトが活動しており、天文学から人文科学まで自分の興味のあるプロジェクトに参加できます。

今はブラウザの自動翻訳がそれなりに役に立つので英語のページでもさほど抵抗がないですが、中にはボランティアによって日本語化されたページを持つプロジェクトもあります。


この記事では、宇宙・天文分野の複数プロジェクトの翻訳を担当した筆者が、日本語版のあるプロジェクトについて紹介し、さらに自分の興味のあるプロジェクトの日本語版を立ち上げる方法について解説します。
天文学系のプロジェクトが中心ですが、全分野を調べた限り(2024年12月時点)現在アクティブ・一時休止になっているプロジェクトのうち日本語版が存在するものはすべて天文・宇宙分野だけだったので…

NASAがパートナーとなっているプロジェクトに関して、NASAの市民科学についての特設ホームページで多言語版について紹介されました。

日本語版もいくつか紹介されており、ページの最後には各国の翻訳者リストとしてZooniverseでの私のHNも載っています。(せっかくなので日本語併記してもらいました)

Zooniverse 日本語版プロジェクト(私が訳したもの)

1 更新する小惑星 デイリーマイナープラネット (DMP, TDMP)

原題はthe Daily Minor Planet。よくDMPとかTDMPとか呼ばれます。
https://www.zooniverse.org/projects/ja/fulsdavid/the-daily-minor-planet?language=ja
詳細はこの記事で。

2 活動する小惑星 Asteroid in Active -アクティブアステロイド-

原題はActive Asteroid。

https://www.zooniverse.org/projects/orionnau/active-asteroids?language=ja

CTIO4m望遠鏡に写り込んだ小惑星画像から、彗星活動を見せる小惑星「活動小惑星」を探すというもの。2019年のGaultみたいなのですね。なかなかレアで10000個に1個程度しかない見積もりだそうで、わざと既知の彗星画像を混ぜて利用者の目を慣らしています。(そういう画像は分類後にダイアログメッセージが出るので、尾が見えたのに何もメッセが出なかった画像はいよいよ当たりです) そのかわり当たりを引けばその1天体だけで論文が出せます。既に10を軽く超える数の論文が出ています。プロジェクトオーナーのColin研究員は昔日本語を専攻していたそうで、プロジェクトページのうちトップ画面部分は彼の訳を私が少し直したものです。

3 恋する変光星 Variable in Gaia

原題はGaia Vari。

https://www.zooniverse.org/projects/gaia-zooniverse/gaia-vari?language=ja

位置天文衛星のGaiaが得た恒星のライトカーブのうち変光星を、種別ごとに分類するというものです。変光星の光度曲線について知識が付きます。ESAが行っているプロジェクトということでヨーロッパでの注目度が高く、9言語版が存在します。

4 堪える小惑星 Asteroid in alive

原題はExoasteroids。

https://www.zooniverse.org/projects/exoasteroids/exoasteroids?language=ja

恒星が死を迎えて白色矮星になっても、その周囲には小惑星が恒星の爆発や外層放出を堪えきって生き残っている例があるとされ、こうした太陽系外小惑星の痕跡をWISEの赤外線画像から探すというもの。こういう白色矮星は時折不規則な変光を示すので、差分アニメーションから変光を探します。

5 恋する超新星  Supernova in diff

原題はKikonova Seekers。

https://www.zooniverse.org/projects/tkillestein/kilonova-seekers?language=ja

GOTOサーベイという突発天体サーベイが毎日撮影した画像から、差分画像を見て新しい天体・増光天体を探すプロジェクト。このサーベイは重力波アラートやその他ニュートリノ(後述する粒の名は。プロジェクトのIceCubeが発したものです)・X線バーストなどのアラートを受けて光学対応天体(中性子合体による光学天体がキロノバ)を探すのが本業ですが、アラートが出ていない時間帯(だいたいは出ていないことが多い)は全天サーベイをしています。なので発見する天体はほとんどが超新星か矮新星です。
既にZoonverseボランティアによる発見としてTNSに2023年夏以来47個のAT番号のついた超新星候補を報告しており(2024/12/13)、うち11個は確認観測を受け正式にSNと認定されています。(超新星は昨今報告数が爆増し、確認観測が全く追い付いていない)
アラートが出ている時に見つかった天体はもしかしたら本当に、原題通りキロノバかもしれないです。ちなみにGOTOはカナリア諸島とオーストラリアに観測所を持っており、15分ごとに新規データを更新するプロジェクトです。なので1時間前とかに撮影された画像がどんどん表示されます。

なお超新星を探すZooniverseプロジェクトは過去にもありました。PANSTARRSのデータを使っていたSupernova Huntersは休止する2023年までの数年間で4137個(わかりやすい単位で換算すると、約22板垣!)ものAT天体を報告しましたが、1.8m望遠鏡で自動検出には引っかからない暗い天体だけあって、分光観測で超新星と確認されたのは1%にも満たない33個だけです。
SkyMapperのデータを使っていたSupernova Sightingは2017年から2018年にかけて21個のAT天体を報告し、11個が超新星と確認されました。当時はまだ発見数が爆増する前なので、半分が確認観測に回りました。
Galaxy Zooでは過去のアーカイブ画像から(プロジェクト目的からすると半ば偶然の形で)275個のAT天体を報告しましたが、過去の画像なので追跡確認ができたものは1個もありませんでした。

GOTOは40cm望遠鏡合計32台からなるシステムで、比較的明るい超新星しか写らないのでこの時代でも分光観測が何割か回ってくるのでしょう。

6 ベビースターサーチメン

原題はBaby Star Search。
https://www.zooniverse.org/projects/astrotrav/baby-star-search?language=ja

分子雲領域をチリの4m望遠鏡でサーベイした画像から、ハービック・ハロー天体と呼ばれる原始星ジェットを見つけるというものです。アマ天体写真でもナローバンドで有名なSⅡ輝線は、ジェットが分子雲に衝突する際に発する光だそうで、SⅡとHα画像を見比べて探します。発見数が少なくまとめて見つかるだけで論文化が間違いない、注目のプロジェクトです。

7 星屑デンパズー

原題はRadio Meteor Zoo。

https://www.zooniverse.org/projects/zooniverse/radio-meteor-zoo?language=ja

ベルギーにある流星のレーダー観測網BRAMSが観測した、流星群の時期の電波観測画像から、流星が電波を反射して起こした電波エコーを探すというものです。流星群の時期は明るい流星が増えるのですが、明るい流星の電波エコーはすごく複雑な形で普段BRAMSが動かしているコンピューター検出が使えないそうです。2016年開始の長寿プロジェクトです。

8 俺の隣人がこんなにクールなわけがない

原題はBackyard Worlds: Cool Neighbors。

https://www.zooniverse.org/projects/coolneighbors/backyard-worlds-cool-neighbors?language=ja

WISEの連続画像から固有運動の大きな天体を探すプロジェクト。太陽系外の天体でも10年間で空での位置がはっきり動いているのが分かるものがゴロゴロあります。目的は太陽近傍の超低温褐色矮星、表面温度が数百Kしかないような天体の発見です。ちなみに同じWISEの連続画像で、目的を異にするためちょっと処理方法を変えただけの姉妹プロジェクトが後述の「バックヤードワールド プラネット9」と、前述の「堪える小惑星」です。プロジェクト運営チームはほぼ同じです。

9 粒の名は。

原題はName that Neutrino! 。
https://www.zooniverse.org/projects/icecubeobservatory/name-that-neutrino?language=ja  
IceCube実験という、カミオカンデの水槽の代わりに南極の分厚い氷床を使ったニュートリノ検出実験で検出されたニュートリノを、信号の特徴に応じていくつか名前の付いたタイプがあるのですがそれらに分類していくというもの。宇宙からのニュートリノ検出が目標です。日本からは千葉大学が参加しており、そこの院生さんに翻訳を確認してもらっています。(つまりこの邦題は公認です)

10 名探偵コクテン

原題はSunspot Detective。「なんとかDetective」はZooniverseでよくあるプロジェクト名。

https://www.zooniverse.org/projects/teolixx/sunspot-detectives?language=ja

19世紀にローマ天文台で、イエズス会士兼天文学者のセッキが長年太陽スケッチを行っており、まだ未整理で残っています。いつのスケッチに黒点が何個あるかを正確に読み取っていけば、精度よく過去の黒点相対数を決定できます。実際にスケッチを見て黒点を数えるというプロジェクトです。

11 食連星パトロール

原題はEclipsing-binary-patrol。

https://www.zooniverse.org/projects/vbkostov/eclipsing-binary-patrol?language=ja

宇宙望遠鏡のTESSが太陽系外惑星を探すために恒星の明るさを連続測定したデータを流用して、食変光星と呼ばれる天体を探すプロジェクトです。

12 レッドシフト・ラングラー

原題はRedshift Wrangler。
https://www.zooniverse.org/projects/jeyhansk/redshift-wrangler?language=ja

すばる望遠鏡などが観測した銀河の分光データから、輝線や吸収線を探して赤方偏移の研究に役立てるというものです。

13 ぼっち・ざ・ゆにばーす!

現在実装済みのデータはすべて解析済で、今後未分類のデータを追加するそうです。データが追加されるまではTwitterとかでの告知はしません。未分類データは今後観測で取得し、いつ観測するかを今(24年12月)チーム内で議論中らしいので、多分データが上がってくるのは早くても2025年の春以降になるんじゃないかと勝手に思っています。
原題はAre We Alone in Universe? (つまり直訳すれば『私たちは宇宙でぼっちですか?』)

https://www.zooniverse.org/projects/ucla-seti-group/are-we-alone-in-the-universe?language=ja  
他の恒星に電波望遠鏡を向けて、地球外文明由来の電波信号をキャッチするSETI観測についてのプロジェクトです。信号には有望度が5段階あり、殆どノイズのレベル1から初期フィルターを突破したレベル2の信号候補について、よくある地球の人為的電波の混線パターンを見比べて分類していくというのが具体的なプロジェクト内容。つまり参加者の分類によってレベル3の信号が見つかります。これを研究者の精査を突破すればレベル4、再度の電波望遠鏡の追跡観測とピアレビューを経てレベル5になれば、高確度な文明の兆候として大発見になります。

14 クモフォーマーズ

原題はCloud Spotting on Mars。
https://www.zooniverse.org/projects/marek-slipski/cloudspotting-on-mars?language=ja

火星探査機MROが撮影した火星の高層雲(地球でいう夜光雲に相当するような、高度50kmを超える中間圏雲です)を探すプロジェクト。チームメンバーには、海外からJAXAのあかつきミッションやMMXミッションに携わっている人もいます。

15 クモフォーマーズ シェイプス

原題はCloudspotting on Mars: Shapes。

https://www.zooniverse.org/projects/matteocrismani/cloudspotting-on-mars-shapes?language=ja  

火星探査機MAVENが撮影した火星の紫外線画像から特徴的な形の雲を探すプロジェクト。雲の形に着目したプロジェクトです。クモフォーマーズの姉妹プロジェクトで、そちらは火星探査機MROの画像で雲の形ではなく存在そのものに着目したプロジェクト。一方こちらは2024年秋に立ち上がった新プロジェクトです。

16 振幅グラフィティ

原題はBurst Chaser。
https://www.zooniverse.org/projects/amylien/burst-chaser?language=ja 

NASAのスウィフト宇宙望遠鏡が捉えたガンマ線バーストを、パルス信号の振幅や形状によって分類していくプロジェクトです。今はスウィフトのデータだけを使っていますが、今後ほかの装置によるGRBも追加できないか検討中とのこと。とはいえスウィフトも(運用期間が20年に達し、2024年までに4つあったジャイロの2つが壊れましたが)まだ現役です。

17 ブラック★ホールシューター 

原題はBlack Hole Hunter。

https://www.zooniverse.org/projects/cobalt-lensing/black-hole-hunters?language=ja

連星系ブラックホールを重力マイクロレンズ現象を使って探すプロジェクトです。銀河系内に見つかる恒星質量ブラックホールは、伴星として非常に近くに恒星を持ち、そのガスを吸い込む際に出るX線を手掛かりに見つかります。逆にそういう特殊な条件がそろわないと見つからないのですが、ガスを吸い込めるほど距離の近くない連星ブラックホールでも、ブラックホールが地球から見て恒星の手前を通過した際に、重力場で光をレンズのように曲げて集光させることで恒星が一時期的に明るくなる、自己レンズによる重力マイクロレンズ現象が起こると予想されています。予想だけでまだ観測例はないのですが、TESSのデータをちゃんと探せば100個くらいあってもいいと予想されており、じゃあ探してやらあ!というプロジェクトです。ただし探すデータは数百万件規模であります。

18 冴えない銀河の見つけかた

原題はDark Energy Explorers。
https://www.zooniverse.org/projects/erinmc/dark-energy-explorers?language=ja 

アメリカのホビー・エバリー望遠鏡(分光専用の固定望遠鏡なので知名度は低いですが、30m級次世代望遠鏡が建つ前の時点で世界で3番目の口径を持ちます)が100万個以上の遠方銀河を分光したサーベイHETDEXのデータからノイズと本物の銀河を分類します。加速膨張の観測による暗黒エネルギーの研究が主目的です。日本からは東大宇宙線研究所のグループが参加しており、院生さんが翻訳のバックアップにあたってくれました。

19 コスミック・ディスコ

原題はCosmic Disco: Characterizing Galaxy Collisions Statistics。 https://www.zooniverse.org/projects/kbmantha/cosmic-disco-characterizing-galaxy-collisions?language=ja

衝突合体中と思われる近傍銀河の画像を見て、合体のステージ(近くにあるだけでまだ形は変わっていない~完全に融合し一体化している)を分類していくプロジェクト。過去の他のZooniverse内のプロジェクト(Galaxy Zooなど)では合体しているかどうかを単にYES/NOで聞くだけだったのを進化させ、2025年1月にスタートしたばかりのプロジェクトです。ちなみに「衝突合体中と思われる銀河」の画像をそもそもどうやって拾ったかというと、その以前のプロジェクトでのボランティアによる分類結果を使ってZoobotというAIを開発・訓練し、SDSSとDESIサーベイの銀河を読み込ませてふるいにかけたらしいです。こうして科学は進んでいくんですね。
原題のセンスが良すぎたので(銀河の衝突シミュレーションはまさに銀河同士のペアダンスに見えます)、思わずそのまま採用しました。

20 あの日見た星の爆発を僕達はまだ知らない

原題はCosmic Cataclysms。

https://www.zooniverse.org/projects/cheerfuluser/cosmic-cataclysms?language=ja

これもTESSのデータを使ったものです。TESSは太陽系外惑星探しのために明るい恒星の明るさを高い精度で一定期間、数分ごとに観測しています。系外惑星探しが始まるまで数分おきなんて短いスパンでの高頻度サーベイは無かったので、超短時間の恒星の明るさの劇的な変化などダイナミックな変動が急速に知られるようになってきました。このプロジェクトではたった1時間も続かないような恒星の急増光を探そうというものです。面白いのは、まだまだ未開拓な領域特有の、どんな現象が見つかるかの予想すらつかない(一応恒星フレアや矮新星などの候補はあるもののそれだけでは収まらない)闇鍋プロジェクトであるということ。
去年からベータテストが行われており私も参加していました。そして満を持して2025年1月7日に正式ローンチ。5000件ほどあった最初のデータセットはわずか12時間ほどで無くなりました。ローンチ後のハネムーン期間の解析ペースの凄まじさはZooniverseあるあるですが、このペースを過信して追加のデータセットをまとめて大量にアップすると、ペースはすぐに落ち着くのでなかなか消化できなくなります。まだまだ数万件のデータストックがあるらしく、順次追加されていってます。

(21?) 宇宙灯台(仮称)

現在翻訳中、原題はEinstein@Home: Pulser Seekers。
公開後のURLは https://www.zooniverse.org/projects/rsengar/einstein-at-home-pulsar-seekers?language=ja (今もリンクは有効ですが工事中です)

Einstein@Homeは、BOINCというプラットフォームソフトウェアを使って世界中のボランティアのパソコンにちょっとずつ電波望遠鏡の観測データを送り解析計算させて(分散コンピューティング)パルサーを探すという市民科学プロジェクトです。しかし、集まった解析結果がパルサーを捉えたものなのか、ノイズ信号を捉えたものなのかを分類する必要があり、それをZooniverseで行おうというもの。
市民科学で市民科学を支援するという面白い取り組みです。ちなみにEinstein@Homeのほうも、ググればでてきますがソフトをインストールして簡単な設定をすれば、データの受け取りや返送・計算まで全部勝手にやってくれるので、手軽な市民科学としておすすめです。
おそらく掛け持ち勢も多いでしょう。

(22?) 繋がる小惑星

詳細は別で書こうと思いますが、COIASユーザーのアマチュアの方(トルコの方?)が立ち上げた(!)プロジェクトです。原題はAsteroid Connect。

https://www.zooniverse.org/projects/06r2d206/asteroid-connect?language=ja

で、実は私も開発チーム側に入っていまして… 私はプログラムはできないので、日英のサイトの文章作成を担当しました。だから大部分は私が書いたものです。(そして解析するデータ自体に私はノータッチです)
小惑星の同定(軌道連結)を行うプロジェクトです。同定についての詳細は https://note.com/icigasu_shine/n/n1ac675232734  で。
ちなみにまだベータテストすら始まっていない、開発段階です。

and more…

Gravity Spy, Space Warps euclid,  garavity wave zoo, Radio Galaxy EMU はそのうち訳したいなと思っています。(邦題を思いついたから)
Planet Hunterも候補に入れていましたがTESSは後継する代表者不在で休止、NGTSも先行き不透明らしく…(だったらそれを早くアナウンスせんか、と伝えたのでそのうち公式発表があるはず) あとはベータ版で今後立ち上がるものに面白そうなのがありますね。
いずれにしても1月8日にCOIASが再開したのでしばらく翻訳はストップです。 

Zooniverse 日本語版プロジェクト(他の方が訳したもの)

1 ディスクディテクティブ

原題はDisk Detecive。

https://www.zooniverse.org/projects/ssilverberg/disk-detective?language=ja

多波長の恒星画像から原始惑星系円盤を探すというものです。訳したのは大学教員のヒョウゴミチハルさん。

2 バックヤードワールド プラネット9

原題はBackyard worlds:Planet 9。

https://www.zooniverse.org/projects/marckuchner/backyard-worlds-planet-9?language=ja

赤外線の宇宙望遠鏡WISEのデータから、第9惑星を探すというもの。WISEは大きな口径を持っていませんが、第9惑星は太陽から遠く離れた位置にあり結構な質量をもつとの予想から、赤外線で自ら光っている可能性があるのでWISEの射程圏内かもしれないんですね。太陽光の反射で光っている成分は暗すぎて、大望遠鏡でも果たして見つかるかというレベルです。訳したのは大学教員のヒョウゴミチハルさん。

3 AI4Mars

https://www.zooniverse.org/projects/hiro-ono/ai4mars?language=ja

原題は同じ。火星の地形を分析するプロジェクトで、現在すべてのデータを解析し終えたので休止中です。日本人のNASA職員として有名な小野雅裕さんが開発チームのリーダーなので日本語版があるのでしょう。この人がもっと宣伝していればZoonivesreの知名度は日本でもっと上がっていたのに。

どのプロジェクトに参加するか?

どれに参加するか?の答えは「面白そうと思ったもの」に限りますし、いくつでも掛け持ちすればいいだけの話ですが、せっかくなので興味関心とはちょっと違う切り口で紹介していきます。

多くのプロジェクトは分類用のデータを、観測機関が収集したデータのアーカイブから作っています。一方で、リアルタイムで観測されたばかりの画像をそのまま分類に回しているプロジェクトが2つあります。それが「更新する小惑星(Daily Minor Planet)」と「恋する超新星(Kilonova Seeker)」です。
超新星の方は更新される画像数はあまり多くないので、参加者がこぞって分類に殺到し、データの更新待ちになっている時間も長いです。

一方小惑星のほうは、1日に上がるデータ量が多く、参加者に対してデータがかなり有り余ってる状態です。その状態でも新しいデータを解析できるよう、古いデータからどんどん、未完了でもお構いなしに削除されていってます。満月の時期や観測所のあるアリゾナ州がモンスーンで長雨の季節になっている際は、新しいデータがないので削除した古いデータを引っ張り出して解析していますが、解析できるのは一部です。

また、アーカイブデータを使っているプロジェクトも、その観測プログラムや施設・探査機がどんどん新規観測を行っている場合は、まだZooniverse用に処理をしていない「積ん読」状態のデータが溜まっていっているはずです。Zooniverseの解析とデータの追加、どちらが早いかはプロジェクト次第と思いますが、この速度比をプロジェクトの紹介論文( https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ad1de2#ajad1de2s8 )で公開しているのが「活動する小惑星(Active Asteroid)」です。論文によるとこのプロジェクトで1日に解析が終わる画像が平均800枚に対し、DECamが現在進行形で広視野撮影を続けている結果、解析できる画像は毎日平均5000枚ほど増えているとか。さらに、2025年以降、DECamの上位互換ともいえるLSSTによる観測が始まると、当然LSSTデータを使って活動小惑星を探したいですが、LSSTデータだと一晩で120万枚も画像が増えるそうです。
いくらか効率化の方法は考案されているようですが、少なくともこのプロジェクトに関しては参加者が増えれば増えるほど大助かりでしょう。

ということで、どれもこれも面白そうだけどどれかに絞って参加したい、という方におすすめするなら「更新する小惑星」「活動する小惑星」の2つを推します。

と言っても、Zooniverseに参加するうえで義務感や使命感、焦燥感を感じる必要なんて全くありませんし、上記の事情など知ったことかと自由に選べばいいと思っています。そもそもZooniverseが無ければ最初から存在していない研究ですし。表にしていないだけで実はもっと切実に参加者が増えてほしいプロジェクトもあると思いますし。

日本語版を立ち上げるには

だいたいはこのページに書いていますが、順を追って説明します

  1. 興味があるが日本語版がないプロジェクト(画面右上やトップページタイトル横の言語切り替えトグルに日本語版がないもの。あるいは言語切り替えバー自体が存在しない=英語版しかないものも。)を見つけたら、まずそのプロジェクトのフィールドガイドやチュートリアル、その他Aboutページの内容を理解したうえで、十分慣れるまで分類を自分で取り組むこと!プロジェクト自体をちゃんと理解していないと翻訳は不正確になります。

  2. About->teamから、プロジェクト開発チームメンバーのアカウント一覧が表示されるので、「Researcher」か「Owner」の権限をもったチームメンバーのアカウントページからメッセージ送信画面に入り、「このプロジェクトに興味を持った、日本語に訳して広めたい」等などコンタクトを取りましょう。ただ、このメッセージに早く返事が来る研究者を擁するプロジェクトは多くないです。アカウントページからはその人が、プロジェクトの掲示板に投稿した履歴を確認できるので、書き込み頻度の高そうな人にコンタクトを取るとよいでしょう。

  3. たいていは二つ返事で「りょ!」って返事がきます。するとあなたのアカウントには「Translator」の権限が付与されます。(About->Teamにあるメンバーリストにあなたのアカウントも加わっているはずです)

  4. 多言語版管理用の専用ウェブページに入ります。

ここで、権限が付いたZooniverseアカウントでログインし、権限をもらったプロジェクトを選び、「言語を追加」で日本語を選ぶと、プロジェクト内にある各種原文の横に日本語を入力するページが表示されるのでここで翻訳作業を行っていきます。プレビュー確認や、翻訳作業後に原文が更新された箇所の強調表示などの機能が備わっています。ちなみに過去のワークフローやページ作成作業用、テスト用の未公開ワークフローなどが含まれている場合があるので、現在実行中よりも多い数の複数種類のページのどれを訳したらいいかわからない際は確認しておきましょう。
5. 翻訳が終わったら対応してくれたチームメンバーに終わりましたと声をかければ、ページに反映してくれます(この操作がされるまで、言語切り替えメニューでは反映されません。ちなみに日本語版の作成を翻訳画面で始めた時点で、原語ページのURL末尾に?language=jaを追加すればページの作成自体はされていることが分かります。)。これで完了。

画像内の埋め込み文字やダイアログメッセージは訳せないという問題こそありますが、このように翻訳の流れは非常に簡単です。ぜひ取り組んでみてください!

ちなみに研究者にメッセージ飛ばして、翌日返ってくるケースはファーストコンタクトでは体感で3割切ってます。研究者の名前で調べたらだいたい個人ウェブサイトがヒットするので、メアド調べて直接メールしましょう。自分のアカウントIDを伝えるのを忘れずに。(アカウントホーム画面のURL送りましょう)

おまけ:ユーザーグループ Godness Manga Time Kirara

24年9月に、Zooniverseにユーザーグループなる機能が追加されました。現状ではグループを作った・参加したからと何かがあるわけではないようですが、試しに私も「Godness Manga Time Kirara」というグループを作ってみました。Zooniveseにログインしておき、以下のリンクを踏めば自動的に参加できますので、試してみたい方はぜひどうぞ。
https://www.zooniverse.org/groups/2676430?join_token=3867541a07e8d9ce

おまけ:いろいろ統計

言語別対応プロジェクト数

2025年1月20日のZooniverse公式ブログでアクティブなプロジェクトにおける、各言語ごとの対応プロジェクト一覧がhttps://daily.zooniverse.org/2025/01/20/multilingual-zooniverse-projects-january-2025/ に載っていました。
非英語だと、フランス語26プロジェクト、スペイン語17プロジェクトに次いで、日本語版16プロジェクト(集計後1月20日までにあと2つ増えているので正しくは18です)は現在世界3位(2位)らしいです。ただし現在休止中・終了したプロジェクトは数えられておらず、フランス語もスペイン語もそうした古いプロジェクトにも数多く対応しているので累計はもっと差があるはずですが、それでも他に日本語版より多く対応している言語は無いはずです。

各画像を何人で分類するか?

Zooniverseでは各画像(サブジェクト)を複数人に分類させて、その多数決で各画像ごとの分類結果を決定するという方法を取っています。この「何人」の人数(Retirement limit)はプロジェクトによってまちまちで、各プロジェクトのスタッツページから確認できます。スタッツページには英語版のトップページのURL末尾に /stats と加えると入れます。

$$
\begin{array}{|c|c|} \hline
プロジェクト & 人数 \\ \hline
TDMP & 15 \\ \hline
恋する変光星 & 20 \\ \hline
堪える小惑星 & 20 \\ \hline
超新星 & 12 \\ \hline
ベビースター & 15 \\ \hline
星屑 & 10 \\ \hline
隣人クール & 20 \\ \hline
粒の名は & 20 \\ \hline
黒点 & 15 \\ \hline
食連星 & 5 \\ \hline
レッドシフト & 25 \\ \hline
ぼざゆ & 15 \\ \hline
火星雲 & 20 \\ \hline
火星雲シェイプス & 25 \\ \hline
振幅 & 50 \\ \hline
冴えない銀河 & 10 \\ \hline
ディスコ & 20 \\ \hline
あの星 & 6 \\ \hline
ディスク & 15 \\ \hline
プラネット9 & 8 \\ \hline
AI4Mars & 15 \\ \hline
\end{array}
$$

追記

(2024/1/7)
私、Zooniverseのプラットフォーム全体の日本語翻訳者となりました。各プロジェクトごとの部分ではない共通部分(全体アカウントの作成とか)の日本語化を進めていきます。実は一応他にも日本語訳者はいたっぽいんですが、中途半端で放置されていたんですよね。


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