おっちょこクロニクル【池に落ちた日】
自他共に認めるおっちょこちょい歴35年のいちょうよもぎ。
話は小学生の頃に遡る。
休日に家族で水族館ドライブに出かけた帰り道、近くの公園に立ち寄った。
家族で一休みしている中、よもぎのおっちょこクロニクルは産声を上げた。
よもぎは縦横無尽に辺りを歩き回り探検を始める。
おっちょこ脳に理由なし。
気になるだけだ。
広い池を見つけた。
池の周りは立ち入れないよう木の柵が囲んでいた。
柵を越えてみた。
理由があるはずもない。
ただ何となく進めなくなるまで近づいていたに過ぎない。
柵を超えると水面に向かって所々に雑草が生えた斜面が続いている。
そろりそろり
うんこ座りのまま水面へとにじり寄る。
ようやく池を間近に望み、水面に映った自分の姿を確認して
んっ?
何してるんだろ?
とようやく気づく。
すると突然両足の摩擦がなくなり
スキージャンプの滑降のようなスタイルのまま
ズッ
ズズズー。
水しぶきも立てずに緩やかに入水した。
慌てて振り返り斜面に手を伸ばすも、掴むものが全くない。
水を吸った衣服の尋常じゃない重さに身動きが取れず、少しずつ身体が沈んでいく。
僅かに生えた雑草の根元を出来るだけ絞って絞って握り続けるも
無残にもブチブチと雑草は抜け、喉元まで入水。
『たすけて〜』
確信的に伝えたいことを赤の他人に大声で熱弁した最初の記憶である。
『子供が池に落ちてるぞぉー!!』
と池の周りに人集りができた。まさか突然居なくなったよもぎが囚われた宇宙人のような体で、池から救出されている光景を垣間見た家族は、爆笑していたらしい。
よもぎは無事に救い出され、帰りの車で大人用のダボダボのTシャツを来て、後部座席の足元で体育座りをしてグズグズと泣いた。
姉と兄は悪魔のように高笑いをして
『ヒヒヒッ!なんで柵超えたの?バカじゃないの?』
意味もなく自らを池に沈ませに行った弟を散々に弄りまわした。
これはほんの序章に過ぎない。