解像度
あなたはどんな解像度で世界を眺めていますか?
乗代雄介氏の『皆のあらばしり』を読了。初めて読んだ著者の作品は『旅する練習』だった。当時はラストのストーリーに衝撃を受けたことに加え、どことなく特徴的な作品だと感じた。そして、今回本著を読んで、前作との共通項が抜き出せた気がする。
本作もラストは結構衝撃的ではあったが、それ以外の共通項としては、背景描写が極めて精緻で写実的であることだった。そのため、登場人物の動きがかなり脳内でイメージしやすい。ちょっとした動作やしぐさがなめらかに想像できる作品である。解像度高くその風景をイメージできる点を特徴的だと感じたことが、前作をもう一度読み返してみても思ったことである。
さて、本著の会話の中で、世界をどの程度細かく見ているのかを話題にした箇所があり、そこに人の本質が込められているといった内容の記述があった。
どれだけ対象に意識を志向できるのか。スマホを何となく流し読みしていたら解像度は低いだろうし、世界に意識を向けて細部まで観察すれば解像度は高くなる。解像度が高い状態というのは、それだけ知覚している情報が多い訳で、その情報を処理する神経系や脳の働きも活発になるだろうから、学びも多くなるのだろう。著者は精緻な文章を紡ぐことにより、読者にその大切さを伝えたいのではないかと妄想したりもしてしまう。
自分も疲れてたり退屈している時は、雑に世界と関わっている時間が長くなってくるが、意識を志向できる対象というものをなるべく多く作っていけたら、有意義な時間も増えていく。そのためにも、当たり前の中に宿る細部にまで興味関心を持って、観察をする時間を増やしていければと改めて思えた一冊であった。
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