体験

最近どんな体験をしましたか?

日々を同じような繰り返しで生きていると、なかなか新しい体験をしたという感覚が得られにくいですね。ですので、長期休暇などに旅行をしたりして、新しい体験を得ることには高い価値が置かれています(だからこそ、相応のお金もかかります)。ただ、コロナの影響もあって、今までやってきたような形での新しい体験も得られにくくなってきていますね。もちろん、コロナだからこその新しい体験もたくさんあるのですけど。

昨日、飲茶氏の『体験の哲学』という本を読みました。飲茶氏の著書は、これまでに『正義の教室』という哲学入門の本を読んだことがあります。哲学を殆ど知らない状態でも理解は進みましたので、読みやすかったと思います。そこで哲学に興味を持ってから、フーコーの著書を読んだり、現代哲学ではマルクスガブリエルに興味を持つに至った訳です。哲学とは、問いを立てて思考することの繰り返しなので、問いを立てる部分はコーチングに、思考する部分は論理的思考の構築に役立っているように感じています。また、根源的な問いに対するヒントが得られると、それ自体が新たな発見となって、意欲や幸福感にもつながりやすいですね。

さて、『体験の哲学』での著者の主張は、一言でまとめると、自己や人生というものは体験で出来ているということです。ただし、歳を取るにつれて体験したことが多くなるから、行動に意識を向けずともできてしまい、無意識の占める領域が増えていき、極端な話では哲学的ゾンビに近づいていくという話です(ここは、一般的にはジャネーの法則と言われてますね)。だからこそ、身近にあるものでも未体験なものが数多くあることを理解し、興味を持ったことに意識を傾けて、新しい体験自体を実感することが人生の幸福には重要だというお話になっています。また、哲学の本にしては珍しく、具体的な実践方法として、チェックリストが設けられています。例えば、寿司のネタだけでも50個程度単語が並んでいて、どれだけ自分が体験をしたのかを記録できるようになっているので、自身の体験の振り返りや、未体験のものに再度意識を向けることも可能となります。この本も、哲学が全く分からないレベルでも読めるような内容にはなっている反面、本質は外してないと思いましたし、お薦め本の一つになりそうです。

人間の身体は感覚器であり、知覚が神経回路を通して脳に伝わりクオリアを形成する。よって、知覚の時間的連続体はクオリアの連続体となり、それが体験として脳に保存される。人の体験やその後の記憶とはこういうものなのかなと仮説を立てつつも、未解明なことが多い脳や意識については、今後のサイエンスの発展にも期待したい。

著者同様に、体験は何よりも重要だと考えているし、体験に意識をフォーカスする時間を長くすることが幸福への道であるとも感じている。結局は、何かに没頭している時間が長いほど、幸福度も高いのかなと。個人的には、意識の向け方はカラーバス効果を活用している。特定のことを意識するとそのことに対する情報が知覚されやすいという認知バイアスではあるが、意識なり観察力というものはこれでかなり上がる気がしている。自身の興味あることが人間とか心理だから、人の行動の観察にもつながりやすいし、これはマネージャー業務やコーチングとも関連するから、仕事的にも役だっているように思う。また、そこで観察される人々の行動を抽象化して一般論と当てはめることで、こうやってnoteにまとめ上げたり絵を描くことにも繋がるし、そういった活動自体は没頭する作業の一つでもあるので、これはプライベートでも役立てられていると思う。

まぁ、その反面、今回の著書を読む限り、自身の体験はかなり偏りがあることも理解できた。特に食に対してはほぼ無意識に進めているかなと改めて思ったところではある。今日は急遽、トラブル対応で出勤することになったが、夜はいつもと違う酒とつまみでも買って、新しいプチ体験が出来たらいいかなと思う。


いいなと思ったら応援しよう!