働き方
どんな働き方が理想ですか?
古内一絵氏の『二十一時の渋谷で キネマトグラフィカ』を読了。著者の作品は『マカン・マラン』シリーズで好きになって度々読んでいるのだが、本作では働き方をモチーフにして、それぞれの人の関係性が描かれており、興味深く読み進めることが出来た。また、時代背景として、令和一年目を舞台に、昭和時代を顧みるという内容となっており、昭和生まれの自分としては時間の流れを懐かしく感じることもできた。
さて、本作品は映画配給会社で働く人々が主人公となっているのだが、登場人物が多様性に富んでいる。その多様性の中で、昭和生まれと平成生まれの世代間の話、男性社会/フェミニズム/LGBTQといった性差の話、正社員と派遣社員という格差の話など、様々な分断が描かれている。それらの分断の中で、多様な働き方や経験を活かしながら、協力して一つのプロジェクトを進めていく姿は、自分自身が現実世界で成し遂げるべき仕事とも重なり、共感しながら読み進めていた。
そんなストーリーの中で、一人一人の価値観、特に働くことに対する価値観というものが具体的に描かれている。お金、人間関係、権力、使命感、自己実現など、仕事も視点を変えてみると色々な価値観が凝縮されている。その中で、時にはコンフリクトが発生する中で、同じ目標に向かって進むことに楽しみを覚えることが出来たら、仕事の時間も少しは有意義になるのだろう。そんなことを改めて思えた一冊であった。
そして、誰もがその先に臨むことは人生の幸せ。時には、忙しい中で忘れがちになる本質を振返ってみても良いだろう。また、忙しさに没頭している状態自体が幸せな時もあるかもしれない。単一の理想的な働き方があるのではなくて、どんな働き方の中でも、主体的に解釈をして、意義を感じられることが重要な気がする。そんな働き方を続けていけたらよいと思う。