嫌いを考えてみる

あなたが嫌いなものを嫌う要因はなんですか?

私は虫が大の苦手だ。それにもかかわらず、前野ウルド浩太郎氏著書の『孤独なバッタが群れるとき『バッタを倒しにアフリカへ』エピソードⅠ』を購入してしまった。買った理由は「孤独」や「群れ」という人間社会にも通じる要素について、何等かの新たな視点を得ることが出来るかもしれないと思ったから。一方で、表紙だけで買ったため、本著に数多くのバッタやその幼虫、卵、解剖された写真が掲載されていること等は想像もしていなかった。おそらく、それを最初に理解していたら、反射的に避けていたかもしれない。1ページ目の口絵からして写真だらけだったので、気付かない自分にも呆れるばかりではある・・・

さて、表紙を開いてみると早速バッタの写真なのだが、思ったほどには嫌悪感を覚えない。むしろ様々な色のバッタが掲載されており、少し興味をもってしまった。そのまま本文を読み進めていくと、本著は著者の過去の研究成果を、一般人でも読めるレベル感まで落としてはいるものの、内容としては学術的な側面が強いことが分かった。時折大発生してアフリカ~中東~アジアにかけて食料危機をもたらすサバクトビバッタに関して、その発生機構を紐解くために研究をしている。このバッタは周囲にバッタがいる時と、孤独な状態で成長が違うことが知られているため、そこをキッカケにして、メカニズム究明をしようという話になっていた。研究職をやっているからかもしれないが、仮説が解き明かされている過程に面白さをかなり感じてしまった。

さて、まずは本著の最初の目的である「孤独」や「群れ」について何か学べたのかというと、生命の相互作用というものは遺伝子レベルで制御されていることが改めて実感できた。それは当然人間にも当てはまることだから、その時々の置かれた環境により、ある人は生存戦略として孤独を、ある人は群れを作るのも当たり前だろうということも再確認した。一方で、バッタは外部環境変化に即座に対応する反面、人間のスピードは非常に遅いのだろうということも感じた。これは、人間に思考や、そこに紐づく価値観などが根付いているせいでもあるだろう。

続いて冒頭の質問に対して。自身が虫を嫌いな理由の一端は掴めた気がする。自分が嫌いな虫は、動きが早かったり、予期せぬところから出てくることが大きいように思う。一方で、視覚的な醜さはあまり気にならないのだろう(ただし、紫っぽい色は嫌い。この理由は未だ分からない)。幼少期は虫図鑑を楽し気に眺めていたことも思い出した。結局のところ、静的な状態では耐えられるものの、動的挙動に対して予測がつかないから、過度に不安を覚えてしまうことが大きいのだろうと思った次第である。

歳を取ると、嫌いなものや苦手なものが色々と増えてくる。ただ、このように要因を分解していくと、意外な発見ができ、あわよくば対処法や解決法も見つかるかもしれない。ただ、残念ながら今回の発見はあまり実生活での改善には結びつかないだろう。虫は都合よく止まってはくれないから・・・

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