JK24歳(短編小説)
合田由希子は不眠症のフリーター。
眠れない夜には色んなバンドやミュージシャンのYouTube動画を見て過ごす。
時々ライブDVDをポータブルDVDプレイヤーで見ることもある。
秋も深まる時期、さっそく由希子は岡村靖幸のライブDVDを見ていた。
「岡村ちゃん、カッコイイよな。元々は某国民的男性アイドルグループに提供しようとしてたビバナミダとかサビの歌詞が泣けすぎる」
高校時代の制服を着ながら彼女はライブ映像を見たりしている。
スーツ姿でメガネをかけた岡村ちゃんはステージ上で独特なダンスを踊っていた。
なんかの雑誌で岡村ちゃんが色んな有名人に結婚の秘訣についてインタビューする記事を読んで知ったんだっけか。
覚せい剤で3度? 何度も捕まってもう10年以上はクスリをやめれてるのはすごい。
「あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう」
「だいすき」
などの人気曲を披露して、岡村ちゃんはやはりダンスを踊る。
彼のライブDVDを見終え、にじさんじVtuberのジョー・力一さんが岡村ちゃんの曲をひたすらカバーする配信のアーカイブを見たりもしつつ由希子はひとりごとを言った。
「岡村ちゃんは何で結婚しないんだろう」
カルアミルクを飲みつつ、由希子は軽くメイクをして自撮りを撮ってXに載せた。
『イケナイコトカイな愛が欲しい、不眠症の女です。誰かに依存したいかも』
#依存されたいのタグを貼りつつ、由希子は
ピーチクリスマスと名付けた日常垢兼病み垢でつぶやく。
実際、童顔な由希子はコンビニで年齢確認されたりする。
24歳になる自分を若く見てもらうのは嬉しいが、酒が買いづらくてめんどくせぇと彼女は思っていた。
眠れない夜を一緒に音楽鑑賞できる音楽好きな女の子の友だちか彼氏ができたらいいのにな。
そんなことをロゼワインを飲みつつ由希子は思った。
真夜中は人を感傷的な気分にさせる。
文章力が常人以上にあれば音楽ライターになって色んな推しのCDの推薦文が書きたかった。
そう由希子は思った。
南波志帆さんや土岐麻子さん、コトリンゴさん、PUFFYとかのインタビュー記事を書いてみたい。
声優さんだと安野希世乃さんの歌声とかめっちゃかわいくて同性だけど胸がときめいてしまう。
通勤電車で愛聴する上記の女性アーティストに会って取材できる人とかうらやましい。
特に志帆ちゃんはNHKラジオのミュージックラインで癒し系な声でDJするのが好きで、radikoで時々聴いたりする。
頭の中くるくる回る回るミュージック
私のミュージック
志帆ちゃんの声、話し声も歌声も癒されるなぁ。
YouTubeでMUSICのMVを見ながら由希子は思った。
セミロングの髪型な由希子はデビューからある程度経ってた頃くらいの南波志帆さんのロングヘアに少し憧れてた。
だから彼女がショートヘアに髪を切ったのは残念だった。
猫カフェでの自撮り動画をTikTokに上げる時、安野希世乃さんの「ふわふわとしてる」を使ってみたらポップで切ないメロディにやられた。
声優名は知っていても、歌までは知らなかったからこんなに大人でフェミニンな歌声とは。
そう思った由希子だった。
歌声はキュートなのに、時にカッコイイ感じの声での演技をする安野さんはなんだかギャップがすごい。
スタートゥインクルプリキュアでのキュアソレイユの声は同じ声優とは思えないほど
凛々しくてイケメン女子な声をしているし。
はあ、声と歌唱力か演技力があれば声優か女性シンガーにもなってみたい人生だったと由希子は思った。
『ああ、1年ほど誰とも付き合ってないけどそろそろ結婚を前提にした恋愛とかしてみたいかも。誠実に私を愛してくれる男の人とかいないかな……』
今日の仕事にアルコール臭がしないよう、ひたすら水とオレンジジュースを飲みながら由希子は切実に思った。
恋がしたい。
恋がしたい。
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