キャプチャ

A

A   

北に住むAはバズという言葉に反感がある。
Aは朝からバッズを焚き、粒子状のベールを幾重もかけていく。
HARDCOREな音楽と紫のけむり漂う部屋に出現したのは、長いお別れ。

Aはかけがえのない友人を失くした。
エンドルフィンのオーバードーズによるものだった。
ハーコーしながら死んだ。

友人の死は拡散された。
見事にバズった。
Aは傷ついた。

友人もHARDCOREなものが大好きだったが、愛しすぎていた。
とかげが好きだった。
モヒカンだった。
いつもため息まじりだった。

友人の死がAを傷つけたのではない。
失くした友人が記号に見えて痛かった。
Aの目に。

何事だ。

バッズの芳香漂う部屋のなか、せめて今だけは記号を暴こうと、
赤い目を鋭くさせ、英和辞典サーフィンしてしまうのを抑えながら、
意味をあらためて探った。
ABCDEFG、
HARDCOREにたどりつくと《筋金入り》とある。
違う、とAは笑いだした。
違う、HARDCOREとは練り込んで極め高めることだ。

Aは焚く。
記号を殺す。

道産子のバッズを追い焚きした。
ぶりぶり赤く燃えゆくかたまり。

彼はAだ。
酔いしれた記号である誰しもが、Aを笑う権利はない。



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