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ナイトホークス
街角のダイナーに入って、モーニングを注文する。楕円形のカウンターは、右側にスーツを着た男が一人、左側は男女のカップルで、めかし込む女と話す男の方はやはりスーツ姿だった。
店内は硝子張りで、信号機の灯りに照らされる夜道が覗える。人どおりはまだかなりあった。人々の上に傘がひらきはじめた。雨脚は強くなっていくようだった。
カウンターごしに給仕がモーニングを渡してきた。トーストと玉子と分厚いベーコン、昼夜逆転した味覚で食しつつ、手帖をひらく。手帖に目を落とし、けれども読みはしない。
右の男に用があるのだ。気づかれないよう観察していると、男は給仕に御手洗いの場所を聴いて席を立った。私の背後をとおり、すると私の背後から腕が伸びて首を絞めてきた。私は立ち上がり、こちらをスリーパーホールドする腕に手を乗せて背負い投げを喰らわせた。相手が派手な音を立てて背中からカウンターの上に倒れると、給仕が後ろへ飛び退いた。
ドラッグを売るプッシャーで、カービン銃まで扱う。そんな男をこの夜に捕まえて引き渡す。それが仕事なわけだが、どんな時間だろうと私は仕事まえにモーニングを食すと決めている。仕事によりモーニングがエネルギーに変換されていくのを実感するのが好きなのだ。飲みかけの珈琲を口にし、それから依頼人に連絡した。すると依頼人は「左の男女も捕まえるように」といってきた。
あのカップル二人にも何がしかがあるのか。様子をうかがうことにした。観察していると、
「いいから早くしろ」
給仕がいった。