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濱口秀司のコラボレーション理論〜会議の質を高めるブレストテクニック

 前回のnoteでは、濱口秀司氏の創造的思考モード「ストラクチャード・ケイオス」を紹介しました。本稿では、チームでのブレストを「ストラクチャード・ケイオス」の状態に近づけるコラボレーション術を紹介します。また、このコラボレーション術を応用した会社で使えるブレスト術を考えていきたいと思います。

濱口秀司のコラボレーション理論を学ぶとどうなるか

 今回、紹介する濱口秀司氏のコラボレーションテクニックは、以下の対談記事でわかりやすく説明されています。きっと、この方法を知ると、多くの人が糸井さんのコメントと同じ感想を抱くはずです。私もこの手法を知って以来、社内のブレスト会議を全てこの手法に変えたいと思うようになりました。

糸井
明日からの会議の仕方を、変えたくてしょうがないです。
わくわくします。
濱口
わくわく、しますよね。
僕もね、チームで最高の答えを出すためには、ひとりひとりが課題に対して頭を使い切れるよう、ベストな状況をつくること。
そのために、静かな時間が必要だとわかったときは、興奮しました。
いいコラボレーションには、静けさが必要なんです。

 それでは、濱口理論の2つのコラボレーション術(濱口メソッド)を紹介していきたいと思います。

濱口メソッド1:個人が考え切るプロセスを用意する

 濱口秀司氏の提唱するコラボレーション術の1つ目は、「個人が考え切るプロセスを用意する」です。

 「専門家が何人集まろうとも、結局は新たなアイデアは個人の頭の中で生まれる。だから個人が考え抜き、頭脳を使い切ることが、コラボレーションで1+1=2を超える成果を上げる条件」と濱口氏は考えているようです。

 感覚的にはたしかにそうだと思うのですが、濱口氏のすごいところは、実際にそれを実証する実験を行っているところです。実験では、同じアイデア出しのお題を与え、コラボレーションの方法をAからDの4グループに分けます。

A:60分話し合いをする(チーム1と2)
B:最初の20分個人で考えて、残り40分話し合いをする(チーム3と4)
C:最初の20分個人で考えて、一旦アイデアをシェアした後、さらに20分個人で考えてから、最後の20分話し合いをする(チーム5と6)
D:最初の40分個人で考えて、最後の20分話し合いをする(チーム7と8)

コラボレーション_1101.com:hamaguchihideshi:2017-11-27

出所:https://www.1101.com/hamaguchihideshi/2017-11-27.html

 この中で、最も成果をあげるグループはどれでしょうか?

 正解は、圧倒的にCの成績がよいとのことです。

C:最初の20分個人で考えて、一旦アイデアをシェアした後、さらに20分個人で考えてから、最後の20分話し合いをする(チーム5と6)

 Cのやり方では、最初に個人で考え抜くことで、アイデアを出します。それを一旦他の人とアイデアをシェアすることで、自分の考え方を客観的に捉え、自分とは違う視点を得ることができます。そこで、その気づきを元にさらに個人で考え抜くことで、最終的にアイデアをシェアする時には、自分のアイデアだけでなく、他のメンバーのアイデアに対しても、ある程度共通認識が形成されています。

 前提知識がバラバラなメンバー同士で議論しても、議論が空中戦になって、噛み合わないことがよくあります。アイデア出しについても同じで、お互いがお互いのアイデアを理解して、自分で考え切っているからこそ、最後のコラボレーションの時には、ベストなアイデアがどれか、自然と皆が理解し、その報告に議論を集中させることができるようになります。

 「議論の前に共通認識を形成」

 これが議論の能率を劇的に向上させてくれます。

濱口メソッド2:「アイデア」と「切り口」をセットで議論する

 濱口秀司氏の提唱するコラボレーション術の2つ目は、「アイデアと切り口をセットで議論する」です。

 これは、濱口氏の「バイアスブレイク」の手法をブレストに取り入れることで、クリエイティブなアイデアが生まれるという主張です。むしろ、バイアスブレイクそのものと言えます。

 ブレストをする際に、「アイデア」だけを評価するのではありません。なぜそのアイデアが面白いと感じたのかと理由を考え、その「切り口」を説明します。

 「アイデア」だけでなく「切り口」をシェアすることで、共通のバイアスが見えてきます。バイアスが構造化できれば、さらなるアイデア出しの方向性が決まり、そこで強制発想してアイデアを生み出します。

1 アイデアと切り口を説明する
2 切り口から各アイデアに潜む思考のバイアスを可視化する
3 バイアスブレイクの方向に強制発想

 ひとりでアイデアを考えると、その人のアイデアが全て同じバイアスに捉われていたとしても、気づくことはほぼできません。しかし、他人のアイデアと切り口を見ることで、自分のアイデアも客観的に見ることができるようになり、バイアスを発見しやすくなります

ブレストを革新する濱口メソッド応用術

 しかし、いきなり上司や同僚にバイアスブレイクの手法を説明して、それで「ブレストしましょう!」というのは、実際にはとても難しいと思います。そこで、会社では普通に誰でもできるように濱口メソッドの応用術を使っています。

濱口メソッドを応用したブレスト術

1 あるテーマについてアイデアを書き出したテキストファイルを作る
2 1のファイルを共有して、各々がブレスト会議前に目を通しておく
3 ブレスト会議する

 ブレスト会議前にアイデアを書き出し、共有する。これだけです。これをするだけで、会議の質が劇的に向上します。

 これはなぜかというと、会議前にこの1ステップを加えることで、「個人で考える時間を十分に取る」「他人のアイデアを見ることで自らのアイデアを客観視する」という濱口メソッドの本質的な部分を活用することができるからです。

 この方法であれば、他人にバイアスブレイクの方法を強要することなく、会議の質を向上させることができます。さらに、できる人はバイアスブレイクの考え方を使ってよりクリエイティブなアイデアを加えればより良しです。

 さらに、実はこのブレスト方法なら全てオンライン上で完結できます。個人のアイデア出しに焦点を当てているため、必ずしもインタラクティブな会話を必要としません。そのため、意外にもWeb会議でも十分なのです。ただし、1と2のステップを飛ばして、対面と同じようにWeb会議でブレストすると、会話のタイムラグが多すぎて、ほぼほぼ大失敗するのでお気をつけください。

 「ブレスト会議前にアイデアを書き出し、共有する。」これが成功のキモです。

まとめ

 「個人が考え抜き、それをシェアすることで、さらに個人の考えを深めることが、コラボレーションの質を高める」という思想からは、ブレストを「個人の発想のためのチームでの議論」としている印象を受けます。組織でイノベーションを起こすには、どうしても最後は個の力に帰結します。それは、実務の中で生きてきた濱口氏だからこそたどり着いた答えなのだと感じました。

もっと濱口理論を学びたい方へ

 もっと濱口理論について学びたい方は、「SHIFT:イノベーションの作法」という論文集が販売されていますので、こちらは勉強になると思います。

 一方、濱口秀司氏の思考法の多くは、実はWeb上でのインタビュー記事などで公開されています。濱口秀司氏の思考法が学べる厳選リンク集を以下のnoteにまとめたので、グーグルで検索して同じ記事を探す時間をSaveし、その時間を学びに当てたい方はご参考ください。

 濱口氏の思考法は、実際の仕事に役立つものが多いので、これからもnoteに濱口理論のまとめ記事を更新していきたいと思っています。どうぞご支援よろしくお願いします。

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TANAKA ICHIRO / 大企業の事業開発
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