なにしの39球 前編
こんにちは、箱根一の湯営業・広報担当のなにしです。今回は「江夏の21球」「森福の11球」と将来肩を並べる逸話として語られるであろう「なにしの39球」の完全ノンフィクションです。お付き合いください。
俺達にはサンキューを届けなければならない理由があったんだ
「創業390年だからサンキューで、39個企画やろっか」
そんな社長のヒトコトから一年間に39個ものサンキュー企画をお届けするという破天荒なイベントが始まりました。1年に39個=1か月最低でも3~4個、ってことは10日に1個はマスト。冷静に考えたら震える数ですが、その時は冷静さなんていうお荷物は持っていなかったわけです。
なぜなら我々にはサンキューをお届けしなければいけない理由があったから。その背景には2019年に遭遇した苦難がありました。
まずは2019年5月に大涌谷の噴火警戒レベルが引き上げられたこと、もう一つは10月に襲った台風19号で受けた直接的な被害のことです。
台風では休館に追い込まれるほどの厳しい経営状況でしたが、従業員や取引先の方、そしてお客様に支えられて立ち上がることができたという状況でした。自然に恵まれた箱根という場所で営業してきたということは、自然の驚異も身近にあったわけで、おそらく390年もやってればこれに近しい事は何度もあったのでしょう。ここで立ち止まってはいられない。お客様や従業員に感謝の気持ちを届けたいという社長の熱い思いから、390年祭りがスタートしました。
江夏や森福は投げるほうですが、僕の感覚としては打つ方の39球。イメージで言うならばバッティングセンターで39球を投げ込んでくるマシンのバッターボックスに立った感じ。向こうは等間隔で39球を投げ込んできます。バットを振る準備ができてようが無かろうが1球たりとも見逃しは許されない。空振りでもファールでもいいからとにかく振る!(なんならデッドボールでもいいわ)
ということで、「なにしの39球」が意気揚々とスタートしました。その後コロナで状況が一変し、大変苦労することになろうとは知る由もなく…。
意気揚々と始めた初期
最初のころは宿泊券をプレゼントしたり、バレンタインにペアコーディネートで3,900円で泊まれる企画などを実施。そろりそろりとコロナの足音が近づいてきつつも、当時は緊急事態宣言が発せられることを想像すらしてません。
当然ですが3,900円販売の反響は大きく、賑わいを見せました。SNSのプレゼント企画の反応も良く、センター前クリーンヒットって感じ。
一方でコロナの影響で中華圏からのお客様はキャンセルが相次ぎ、中華圏以外の海外のお客様(欧米圏)のキャンセルも徐々に増加してきている嫌な時期で、不穏な足音は近づいてくるいく一方でした。
バズった第6弾「まじでコロナウイルス勘弁して下さいプラン」
そして、3月。39弾の中でも場外ホームラン級の話題となったのは間違いなく第6弾の「まじでコロナウイルス勘弁して下さいプラン」。名前のキャッチーさからTwitterでバズり、メディアからの取材も複数受けました。内容も2~3か月先の5月・6月に露天風呂付客室の1泊2食付プランを3,900円で泊まれるという破格の内容。
プランをリリースしたのは3月2日。実はこの時、キャンセルが相次ぎ、集客は八方塞がりな状況。「こんな時に旅行行く人なんていねえわ、もう駄目だ。でも5月6月ならコロナもおさまってるかも」とその当時は思い(浅はかでした)、なかば(いや、ほとんど)やけくそで出しました。
あともう一つ。実はその時映画のロケに一の湯を使わせてほしいというお話がありまして。個人的にはその映画の主人公が、かねてからのファンであるNさん。その話が来た時ほど一の湯に入社して良かったと思ったことはありません(正直!)。実際にロケハンにも来て頂いてあとは日程を決めるという段階まで来てたところ、コロナで延期という連絡が来たのがこの頃。
もうまさに「まじでコロナウイルス勘弁してくれ!」です。「あの小躍りした瞬間のキモチ、どないしてくれんねん!」という。裏側にはそんな思い(というか怨念)があり、それをリリース文にのっけて発信。ただし、怒りをぶつける内容ではなく「みんなでこのやりきれない気持ちを共有したい」という思いで書きました。そのやりきれなさが共感を呼んだのかなと思っています。
そんなこんなで出来上がった第6弾。話題になったのは良いんですが、たっくさんの予約が3,900円で入ることになり、収益的には「むっ!?むむっ、むむむっ!?」という感じになりました(苦笑)。それでもSNSでバズってテレビやWEBメディアに取りあげられ、宣伝効果はすごいものがあったので、まあ良しとしてください!
Twitterトレンドにのった第7弾、1945万円支援を得たクラファン企画の第8弾
第6弾の勢いそのままに、第7弾は3月9日のサンキューの日から企画を開始。39名様に宿泊券をプレゼントという内容で、瞬間的にはTwitterにトレンドで5位まで行くことができました。これもホームラン級の当たりでした。Twitterトレンドで広告あてて最上位に持ってくるのって、〇千万円するらしいですよ…。そう考えたらすごいっすよね。
そして第8弾はクラウドファンディング企画。これも思いがこもった企画で、目標1千万円のところ、約2倍の1945万円を集めました。「コロナで助けてください」という企画が多い中、「新しいコンセプトルームを作りたい」っというある意味空気を読まない企画。これもホームラン級の当たりでした。なのでもう6弾、7弾、8弾は「バース、掛布、岡田」ですね。
なにしの39球の中に「バース、掛布、岡田」がいます。もうなんかよく分かりませんね。
緊急事態宣言期間はプレゼント企画で進塁打!
4月7日に緊急事態宣言が発出されて、一の湯も全店休業に。さすがにこの時は困りました。なんせ泊まりに来てって言えない状況です。バット持たずに打席に立ってるようなもんです。
ということでバットをあらゆるものに持ち替えて続けていくことになります。バットは時には一の湯カレーになり、甘夏になり、玉ねぎになり、お酒や野菜スープになりました。
おぉ、バットじゃなくてもボールは打てるんだという新たな発見です。なんとかねばり、進塁打は打てたのではないかと思います。こちらの企画には小田原の國見農園さん、茨城の岡部合名さんにもご協力をいただき、ピンチを乗り切ることができました。
この頃から緊急事態宣言が明けて営業再開をするまでに、テレビに何本も出ました。その時マイクロツーリズムで話題のH野リゾートさんもやたらとテレビに出ておりましたが、宿泊業の双璧といっても過言ではありませんでした。
ワシも来るとこまで来たな、としみじみと思ったものです(嘘です。いや、ちょっとほんとです)。なんせテレビ出過ぎて、子供がテレビ見てて僕がテレビに映っても全然ビックリしなくなりましたから。
ということで、5月が終わる段階で第13弾まで完了し、若干の遅れが見られますが何とかかんとかギリギリオンタイムって感じです。
長くなってしまったので、前編はコチラでいったんおしまいです。引き続き後編をお届けしますね。それではまた!
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