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グロービス あすか会議 2023 (2023年7月1日〜7月2日)

グロービスあすか会議にはじめて参加した。

あすか会議がどういうものかについては、ホームページにこんな説明がある。

「あすか会議」(ASKA=Assembly for Synergy, Knowledge and Ambition)は、グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために、経営者、学者、政治家、メディアなどのトップリーダーとグロービス経営大学院の学生(在校生・卒業生)および教員が一堂に集い、開催するカンファレンス。

たしかにこの通りだけど、こちらの印象としては、いろんなゲストを招いた在校生・卒業生による同窓会であり、(フェスっぽい雰囲気の)ネットワーキング・パーティという感じ。

開催場所は(膝の上に猫をのせた、古い007映画の悪玉がいそうな)京都国際会館。地下鉄烏丸線の北の終点にある。

門を入ると、「世界は 一つ」という湯川秀樹の言葉。「京都に来たぞ」という気になる。

なぜリーダーに哲学が必要なのか?

基調パネルディスカッション第1部のテーマは、「歴史から学ぶリーダーの在り方

印象に残ったのは、ポッドキャスト「コテンラジオ」の深井龍之介さんの言葉。

どこの国のどんな時代のリーダーであっても、現状認識ができないリーダーはかならず失敗する。

もちろん現状を認識することが大事だということはどんなリーダーも分かっている。が、それがどれだけむずかしいことなのかを本当に理解しているリーダーはそう多くないということ。

Q&Aでは、「これからの生成AIの時代に向けて、子どもたちに何を学んでほしいか?」という質問に対して、深井氏は「歴史と哲学」と答えていた。

なぜここに哲学が入ってくるのかについて、深井氏はとくに説明していなかったけど、たぶんこういうことなのだと思う。

現状認識がむずかしいのは、正しく現状を認識するためには、単に現状に目を向けるだけではなく、自分がそれをどのように認識しているのかを認識すること(つまりメタ認知)が必要になるから。

単に何かについて考えるだけでなく、考えているプロセスで何が起き、自分がどのように考えを進めているのかを認識する。さらに、そうしたステップで自分は何を前提に考えているのか? どのように考えを進めているのか? その流れで進めた考えは本当に正しいといえるのか? みたいなことをしっかりと認識することが大事。

だから哲学が必要なのだ。

感情が「ある」ことと感情が「感じられる」こと

第2部のテーマは、「Generative AI時代に高まる人間性~AI×エンタメの可能性~」 たぶん今年はいろんなところで生成AIに関するディスカッションが繰り広げられているに違いない。

ライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」代表の前田裕二さんが面白いことを話していた。

ChatGPTに「あなたの感情を教えてください」と頼むと、最初は「私には感情がありません」みたいな答えが返ってくるが、しつこく頼むと、「では、やってみます」みたいな話になる。

自分のいまの感情を、喜びや怒り、悲しみや楽しさの各10段階評価で答えてもらうようにして、意地悪な質問をつづけていると、だんだんとChatGPTの怒りのバロメーターが振り切れるようになる。

すると、こちらもChatGPTに感情がめばえているように気になってくる。ひょっとすると、感情というものは受け手の側で「生み出す」ものなのかも。

これ、似たような話を(たぶん)文化人類学者のクリフォード・ギアツがしていたような気がする。

ゴミが入って目をしばたかせているのか、相手にウィンクをしているのかは、本人の意図ではなく、その(ウィンク的な動作が向けられた)相手がどのように感じるのかによって決まってくる、みたいな。

AIに感情がめばえるのか、めばえないのかという議論と、AIに感情がめばえているように感じられるのか、感じられないのかという議論は、まったく別物なのだ

その後は、グロービスの卒業生を招いたパネルディスカッションの「アラムナイ・セッション」を中心に話を聞いた。

とくに印象に残ったのは、低迷していた雑誌「ハルメク」をV字回復させた編集長の山岡朝子さんの話。

以前テレビ見て、そのあたりのだいたいの経緯は知っていたけど、この場で語られるホンネベースの生々しい話がとても興味深かった。

なんだかんだいって、やっぱいろいろタイヘンなことはある(これは他の方々の話でも感じたことだけど)。

こうして第1日目が終了。

総勢1,900名が集まったあすか会議。夕食会のにぎわいもすごいことになっていた。

生成AIの時代はリベラルアーツの時代

2日目に参加したセッションは、「未来を照らすリーダーの挑戦~変革推進の要諦~」と「インクルージョン&ダイバーシティ~多様性社会におけるリーダーシップ~

2つのセッションを通して感じられたのは、最初に「こうするぞ!」と決めたことを組織に根づかせるのか、それとも探究を通じて、めざすべき方向を共創のプロセスの中から浮かびあがらせるのか、については、単純な二者択一ではなく、どちらの方法をとるにしても、その途中経過でつねに「揺らぎ」みたいな状況が起きるので、その状況にどう対応するかが大事だということ。

決めるべきことをしっかり決めておいて、走り出したら柔軟に状況に対応する。いちばん大事なことは、もっともシンプルで当たり前のことだったりする。

休憩中は、私が担当する「人材マネジメント」を受講したみなさんと写真撮影会。4月期のクラスはオンラインだったので、ちょうどこの機会にお目にかかることができてよかった。

(リアルでお目にかかると「わ、身長高っ!」「う、思ったより小さい人だった!」という驚きが。ちなみに私はみなさんから「ひえ、思ったより痩せてますね!」と驚かれた)

あすか会議をしめくくるパネルディスカッションは、「ネクストユニコーン起業家たちの挑戦~巨大産業DXの旗手~

これも面白かった。

昔ながらの業界に部外者として飛び込んだ起業家たちが、何にどう挑戦し、どのような成果を生み出してきたのかを語るセッション。

巨大産業のDXというとデジタルな空中戦を想い描いてしまうけど、大事なのはしっかり地道に関係を築き、声を聞き、よろこばれるものを提供すること。

ここでもやはり、ブレない軸を持ちながらも、走り出したら状況に柔軟に対応できる身のこなしが大事だということなのだと思う。

* * *

というわけで、はじめて参加したあすか会議の2日間はとても面白いものだった

いちばん印象に残ったのは、1日目のセッション「Generative AI時代に高まる人間性~AI×エンタメの可能性~」に登壇した(SNSプラットフォーム向けのコンテンツを制作するワンメディア代表の)明石ガクトさんの言葉。

生成AIが当たり前になる時代に必要なのは、さまざまな知識を横断的にむすびつけるリベラルアーツの力だ(正確じゃないけど、まあ、そんなような趣旨の話)。

これはとてもいいことを聞いた。

これまで、ビジネスやマネジメントとリベラルアーツをむすびつけて考えることが大事だよ、みたいな話をするとき、「その方が何かと面白いじゃん」みたいなものすごく軽いノリだったけど、これからはこんな風に語ればいいのだ。

といわけで、うんと昔からそう考えてきたかのように、「生成AI時代これからはリベラルアーツの時代なのだ!」と声を大にしていこうと思った。


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