~第234回~「新嘗祭~桜町天皇と徳川吉宗~」

11月23日は祝日「勤労感謝の日」とされていますが、本来は「新嘗祭」の日です。

新嘗祭は「にいなめさい」「にいなめのまつり」または「しんじょうさい」とも呼ばれる大祭で、神職は神社に参籠し潔斎の上、奉仕を致します。
そして、その年の収穫に感謝して新穀を神様にお供えし、来年の豊穣を願います。
「新」は新穀を、「嘗」はお召し上がりいただくことを意味し、収穫された新穀を神様に献じ、その恵みに感謝し、国家安泰、国民の繁栄を祈るのです。
新嘗祭は古くは宮中祭祀として、旧暦11月の2回目の「卯の日」に行われていました。
また、新嘗祭のうち天皇が即位して最初のものは大嘗祭とされます。
現在では全国各地の神社で11月23日に行われていますが、これは明治6年(1873)年に新暦へ移行した際、祭日が新暦の11月23日になったことによるものです。
しかし、古代より連綿と続いてきた新嘗祭は、一度途絶えたことがあります。

それは後花園天皇の寛正4(1463)年に行われて以降。
当時日本を揺るがし後の戦国時代への幕開けとなった「応仁の乱」と、それからの朝廷の窮乏によるものでした。
その後、第113代天皇である東山天皇(霊元天皇の第4皇子)が貞享4(1687)年に父である霊元天皇の強い希望により即位、同年に221年間途絶えていた大嘗祭を略式ながらも復活させます。

そして第115代天皇の桜町天皇の御代、元文5(1740)年、新嘗祭は元の形に本格的な再興を遂げます。
これは当時の江戸幕府の8代将軍・徳川吉宗の尽力・働きかけと桜町天皇の御心がなければ実現しませんでした。
復活した新嘗祭は、昭和の戦後、稲作だけではなく全ての勤労に感謝する祝日「勤労感謝の日」に定められ、今に至ります。

新嘗祭の復活に桜町天皇の御心に寄り添った将軍・徳川吉宗の助力が関わっていたことはあまり知られていないかもしれません。
日本史の授業では教わることはないですが、とても大切な日本の歴史の一幕です。

徳川家および徳川吉宗と氷川神社(氷川信仰)については過去の氷川風土記を御覧ください。
~第147回~「江戸時代の氷川信仰」https://note.com/ichinomiyahikawa/n/n7de647a67200

〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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