アンフォルメルギタースクールができるまで ⑤
当時感じていた独学での行き詰まりは自分の音楽性の変化によるものでした。ブルースやブルースをベースにしたロック、ハードロックのバンドを組んでいましたが、それを解散して次に考えたのはジャズロック期のJeff Beckと70年代のプログレ、特にKing Crimsonのような音楽性のバンドでした。
ブルースは大好きだったのですが、様式がある音楽なのでどこかマンネリを感じていたのと、歌よりも楽器のアンサンブルに重きを置いた音楽に興味が移っていました。よりブルースから離れた音楽をやりたいと考えるようになり、King Crimsonのコピーバンドを始めました。
ところが全く弾けないんです。耳コピもなかなか進まないんです。
音楽雑誌の記事を漁ってもKing Crimson関連の奏法解説や楽曲分析の記事は一切見つからなからず、わずかに発見できたのはPlayer誌で人間椅子の和嶋氏が持っていたコラムの手書き楽譜数小節分でした。
演奏技術の行き詰まりにはフォームの改善が必要だろうという察しがついていたのですが、これも試行錯誤するものの定まりません。
雑誌の教則記事や教則本、教則ビデオを観ても言うことは十人十色です。
しかも、論理的・科学的な説明をしている人はほとんどいなかったです。
これは一度誰かに師事して自分の演奏スタイルを見直す必要があると考えました。そんな時に友人宅で見つけて貸してもらったビデオが「ギター特殊奏法」でした。
パッケージ写真のフレットが沢山打たれた変形ギター、出演と解説のJinmo氏はギターマガジンやPlayer、サウンド&レコーディングマガジンで執筆していた記事を読んでいたので名前は知っていましたがどういう音楽性の人なのかは知りませんでした。ビデオの内容はこれまで観たどの教則ビデオとも全く異なるもので強い衝撃を受けました。同じ頃にギターマガジンのコンサートリストで氏の公演が近場では名古屋市内であることを知り、当時のバンドメンバーと名古屋公演を訪れました。
演奏形態は無伴奏でのエレキギター独奏でした。Steinberger/GLとChapman Stickでの演奏は最初の1音で聴衆を氏の音世界に引き込む独創性の強いものでした。東京での楽器フェア等のイベントでテクニカルな演奏をするデモプレーヤーは沢山観ていたのですが、その人たちとは違って高度な演奏技術を既成概念に縛られずに自由に使ってライブペインティングのように音を音を空間に放っていくのです。
「こういう演奏ができるようになりたい!」と思いました。
その後、家にあるギターマガジンのバックナンバーのJinmo氏のコラムを再読する中でレッスンをしていることを知り、連絡をとりました。
当時は氏の自宅は横浜市にあり、静岡市から横浜市まで2年間ほぼ毎週通いました。大学生でレッスン代も交通費も自分で賄っていたので新幹線は使わずに在来線を使い、金曜の深夜2時頃にバイトから帰宅して始発に乗って午後からのレッスンに間に合うように横浜駅に着く。片道3時間半ほどかかっていたのですが、苦にならないほど充実していました。
この頃に自分の演奏技術は大幅に改善され、音楽観も確立されていきました。
大学卒業後は諸々考えた末に愛知県に戻ることにしました。
*最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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