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敗戦の先(10月12日〜13日/CSファーストS 阪神vs横浜●●)


10月12日 CSファーストS 阪神vs横浜(甲子園球場) 1-3/●


 シーズン最終戦からCSまでの10日あまりはとても長く感じた。一方で、岡田監督の勇退についてと、新監督に関する報道があれこれ流れてくる中、チームがこれからCSを戦うのだということにどこか現実味を持てないまま過ごしていたような気がする。

 この日は午前中に家事を済ませ、買い出しをして帰宅。虎テレのバックネット裏映像を流しながら昼食の準備をしつつ試合開始を待った。
 今日の先発は才木投手。昨年、リーグ優勝を決めた試合(9/14)の先発をつとめた際、監督は才木投手に対し「力み倒すだろうな」とコメントしていた。そして、今年のコメントは「(才木投手に)大事な初戦を託すのは当然」というもの。今年はそういう1年だった。

 1回の表、牧選手、佐野選手にヒットを打たれ、4番オースティン選手にはおそらく敬遠の意味合いで四球。1アウト満塁のピンチを迎えるもそこから2アウトをとり0点に抑える。ピンチで崩れない、その時の最善で踏ん張る才木投手の頼もしいマウンドだった。
 一方で、今シーズン25試合に先発登板、うち4回完投している才木投手に疲労がないわけはなく、どこか自分で自分を鼓舞しているかのような投球にも感じた。
 舞台は秋晴れの甲子園で、スポットライトが当たっているような日向のマウンドと日陰にある打席のコントラストが印象に残る。

 3回の表、先頭の牧選手が2打席連続ヒットで出塁、さらに佐野選手も2打席連続の2塁打、そして宮﨑選手を敬遠し、再びの1アウト満塁のピンチを迎えた。そうして桑原選手のショートゴロの間に牧選手がホームイン、横浜が0-1で先制をした。

 対する阪神打線は森下選手が1回に続いて3回でもヒットを打つが、なかなか点につながらない。

 そんな中、4回表に東投手がヒットで出塁をするも走塁中に足を痛めてしまい、そのまま5回には交代が告げられた。
 今シーズンの横浜は負傷離脱者が多いことは知っていたので相手チームながら心配になってしまう。ただ、5回裏を任された山崎康晃投手がこの回を0に抑えたことで、横浜に流れが傾いたような気がした。

 阪神も6回から継投に入り6回を桐敷投手がしっかりと抑える。
 しかし7回表、おそらく左打者からだからなのか、桐敷投手が続投でマウンドに上がった瞬間、嫌な予感がした。70試合登板している桐敷投手にまたがせるなんて、とも思ってしまうし、ビハインドなのに後手にまわる選択のように感じたからだ。もちろん監督の真意はわからない。
 そして本日好調の牧選手、佐野選手にヒットを打たれ1アウト1、3塁で今度は石井投手を出す。そこでもオースティン選手にタイムリーを打たれ、0-3と引き離されてしまった。

 今シーズンは勝ち頭の才木投手はもちろん、桐敷投手と石井投手で勝ってきた試合がいくつもある。その切り札で失点してしまったということが大きく響いたように感じた。
 8回、島本投手が3者凡退に抑える。ピッチャーライナーを直でキャッチした場面は痺れた。
 9回、岡留投手も3者凡退に抑える。「勝ちパターン」だけでなく、今年しっかり育った頼もしい投手がいるんだぞと思ったイニングだった。

 そして9回裏、前川選手のヒット、木浪選手のタイムリーで1点を返すも追加点は得られず試合終了。
 横浜がCSファイナル進出へ王手をかける形となった。

阪神:才木/桐敷、石井、島本、岡留-梅野
横浜:東/山﨑、佐々木、坂本、伊勢、森原-伊藤



10月13日 CSファーストS 阪神vs横浜(甲子園球場) 3-10/●


 この日は友人とスポーツバーで観戦。店内には私たちと同様にCS観戦を目当てに来ているお客さんが大勢いた。

 1回裏、昨日から好調の森下選手のホームランで1点先制
 これはいけるだろうと思ったところで2回表。先頭の宮﨑選手の二塁打、桑原選手、森選手の連続ヒット、そして戸柱選手のタイムリーで一気に1-3と引き離される。さらに牧選手のタイムリーで1点追加し1-4でこの回が終わる。

 今日の先発は髙橋遥人投手。
 今シーズンの救世主とも言える存在で、横浜とは初対戦、初見ではなかなか打てないだろうという目算があったところにこの乱打はかなりのショックだった。おそらく(当然ではあるのだけど)かなり研究して臨まれているのだなと思う。

 そこで岡田監督は3回から捕手を坂本選手に交代。ここからは0を並べていくが、一方の打線がにも0が並び、1-4のまま6回が終わった。

 7回表、阪神は6回表を投げた村上投手を再びマウンドへ送った。
 昨日の桐敷投手のことがあって、なぜ? と思う。村上投手は先発投手だから複数イニングは当然という思いがあるのかもしれないけれど、リリーフとして準備をするのと先発として数日前から準備をするのとではまったく方法論が違うことは想像がつく。もちろんこんなのは素人の懸念だし、監督はいろんな可能性を考慮した上で動いているのだとも思う。それでも、後のない1-4でなぜ、と思ってしまった。

 先頭、代打で登場したフォード選手の打球がライトスタンドに吸い込まれていった。踏ん張りきれずノーアウト1、2塁のピンチで富田投手に交代するも、出会頭の佐野選手に3ランホームランを打たれ1-8と突き放される。
たまらず岡留投手に交代、さらに2失点があり1-10となった。

 昨年はいわゆる「火消し」と呼ばれるような、ピンチをしのぐことがうまい選手が機能していたような気がする。しかし今日のこの7回の継投は後手後手に回ったことが傷口を広げていったような印象があった。

 7回裏、代打糸原選手のヒットを森下選手が繋いで1点を返す。2-10。
 8回表、島本投手が満塁のピンチをつくるも0に抑えてつなぐ。昨年の「火消し」といえば島本投手だった。今年はずっと肩を作り続けていたのを神宮ブルペンで見てきたし、きっと今日も、ずっと肩を作り続けていたのだろうと思った。
 9回表、石井投手が0でつなぐ。
 そしてラストチャンスの9回裏。代打原口選手が高めの球をホームランにした。8点差の9回1アウトでも、視線を下げるなと鼓舞してくれるような一発だった。

 結果、3-10で2024年の阪神タイガースの野球が終わった。
 数字だけ見れば完敗だし、内容を見ても完敗だったと思う。

 先日、私が野球を見るきっかけになった本『嫌われた監督』の文庫版がでて書き下ろしもあるよと教えてもらったので、この日の行きの電車ではその書き下ろしの章を読んでいた。
 書き下ろしは「2007年日本シリーズにおける完全試合目前の継投」について川上憲伸さんの視点を中心に書かれたもので、そこにこんな言葉があった。

決して心臓が強いとか、そういうことではなくて、重圧にも歴史があって、積み重ねがある。(略)そういう歴史があってはじめて大勢のお客さんの前で力を出せるようになるんです」p522

『嫌われた監督』

 今年、石井投手の初登板は3月30日、自身のエラーも絡んで2失点のスタートだった。その翌日の試合前練習では遠くからでも、落ち込んでいるのかなと心配になってしまう様子だったのだけど、4月3日に抹消され、5月4日に戻ってきてからは頼りになる一角として大活躍のシーズンだった。

 才木投手の今年の活躍も、昨年の大舞台があったからこそだろう。

 だから、今年の悔しさはきっと来年につながるのだと思う。
 自分を「弱いなと思いました」と語った髙橋遥人投手の来年は、きっともっと頼もしいものであるはずだ。
 そう思った敗戦でした。

阪神:髙橋/村上、富田、岡留、島本、石井-梅野、坂本
横浜:ジャクソン/坂本、ウェンデルケン、堀岡、上茶谷-戸柱

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