アニッシュ・カプーアの聖なる侵入/一日一微発見339
ヴェネツィア・ビエンナーレの面白さは、ヴェニスという街とともにあるのだなと、通うたびに深く思うようになった。
80年代末に初めて来た時は、まったくの門外漢で、その時は、2年に一度ビエンナーレでこの街に通うような「運命」が待ちかまえているとは、ゆめゆめ思っていなかった。
ロンドンにしてもニューヨークにしても殆ど未体験な頃で、世界の都市の空気の違いなんてまるでわかっていなかった。
世界の主要都市を取材やアートの仕事でまわるにつれてヴェニスのユニークさ、くめどつきせぬ深さが肌身に急速にしみるようになってきた。
それには、Airbやレンタルアパートメントを借りて、ホテルのようなエトランジュ用の空間ではなく、人々がどのような暮らしをしてきたか。その痕跡の残る空気の中で夫婦でステイする体験が大きかった。
それに加えて、ビエンナーレだけでなく周辺のコンテンポラリーアートの展覧会もまた、たっぷりと歴史がつまった館(パラッツォ)で行われることもある。
今回見た、アニッシュ・カプーアの2つの展覧会ほど今回のヴェニスでインパクトをうけたものはない。
1つはアカデミア美術館での展示、そしてもう1つはカプーアが自ら購入し、改造したマンフリーのパラッツォである(このテキストはマンフリーを後日見たあとから加筆している)。
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