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赤石隆明『UNBROKEN ROOM』/目は旅をする033(写真の未来形)

赤石隆明『UNBROKEN ROOM』
artbeat publishers刊(2013)

3.11東日本震災から10年がたった2021年に、小さな展覧会をキュレーションした。
こんな10年後の世界を、誰も予想できなかったろう。covid-19と名づけられたウィルスの感染によって全世界が機能停止した真っ只中だったからだ。
延期された東京オリンピックは、もはや未来の象徴ではなくなってしまった。

ジェームズ・ラブロックの『ノヴァセン』やブルーノ・ラトゥールの『地球に降り立つ』の訳書が相次いでこの時期に出たが、時代は残酷に進んでいく。凄いスピードで。
僕はこのタイミングで、セレモニーをしたかった。この10年の写真の「今」と「未来」を考えるために。


それが、「FISSION(分裂) and FUSION(融合) − POST/PHOTOGRAPHY 2011-21
3.11から10年目の、写真の今と未来」展だった(会期は2021年3月10日-15日、場所は銀座奥野ビル306号室。共同企画は野村とし子さん)。

参加アーティストは、小山泰介、緒方範人、赤石隆明、川島崇志、羽地優太郎、松井祐生、伊藤颯、児嶋啓多、小野寺純乃、加藤裕士、野村秀樹、すがわらたかみの面々であった。
G/Pgallery時代からのメンバー、昨年TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARDで知り合った若手メンバー、そして306号室プロジェクトで東北に関わりのあるメンバーでる。
これらの人々が銀座奥野ビルという、通常の意味では「ギャラリーではない空間」に集い、どのような化学反応が発生するか、それがキュレーションの意図だった。
その参加者の中の、赤石隆明の作品と彼の写真集『UNBROKEN ROOM』について書いておきたい。

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