40年ぶりに山口昌男の対談集を本棚から取り出す/一日一微発見244
誰もが同じだろうけれど、すっかり「リモートワーク」が常態になってしまった。まぁ、いつかはコロナ禍は鎮静するのだろうけれど、この「ワークスタイル」は、会社や仕事の形態、いや人間の生き方だって大きく変えることになるだろう。
僕は、コロナが流行るすこし前から脱東京を考えて、浜松に拠点(G/Pギャラリーの倉庫や書庫、仕事場、直営ショップ)などを移動させていたので、今回の「事態」は、ある意味で自分のヴィジョンを加速化する機会にもなった。
コロナの感染者が爆発的に増えたオリンピックの期間も、東京郊外に住む仕事仲間のグラフィックデザイナーに、わざわざコロナ禍の「都会」に「出勤」するのではなく、「地方」で落ち合って仕事をしていた。安全に仕事をするための自己管理である。
そんな毎日だから、自分の書庫にある本とも久しぶりに「対面」する時間も多くなる。
僕は、引っ越しなど、「人生の大移動」がついて回ったものだから、ずい分と本は散逸した。手元にあるものは、偶然的に生き残った戦友である。
倉庫のような仕事場で、ふと見上げるとある本が目につき、手に取ってみた。
山口昌男の『20世紀の知的冒険 山口昌男対談集』である。
といってもこの本には上巻の「正」と下巻の「続」2冊がある。成り行きで続編が出たのだろう。
僕の本箱には、どういうわけか「続」しかない。
奥付を見ると1980年刊で、山口昌男は1931年生まれ(2013年没)だから49歳のときの本だ。
1980年。
ちょうどその少し前に、僕は京都から東京に出てきた。「知的冒険」というタイトルも60年代後半から70年代の思想には、まだ色濃く「政治性」があったものが、ブリーチされ、ゲーム化して行った過程を醸し出している。
今からすれば「知的」な「冒険」なんて実に気恥ずかしい。
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