IN&OUT of TOKYO09「 コロナ後の世界ラブロックの新著『ノヴァセン』を読んで考えたこと」/一日一微発見129
東京は、5月の終わりに緊急事態宣言が解けて、6月に入り社会は少しずつだが動き出している。
山手線の乗車率は50%ほどになり、新しい感染者は1桁と、2桁を行き来している。
いっぽう、世界に目を向けるとブラジルやインドで、感染者/死者が増大していて、新コロナの勢いはほとんど弱まってはいない。
中国のように、先に感染が広がり、鎮静したかに見えるところは「ニューノーマル」になったけれど、つねに新コロナは「世界のどこか」で「たった今」猛威をふるっている。
世界が等しく同時に鎮静化しないかぎり、2021年に延期された「東京オリンピック」は開催することは不可能だろう。
緊急事態宣言が解かれたかと言って、「ニューノーマル」には戻らないことが、はっきりと実感されてきた。
新コロナと直接リンクしないにしろ、アメリカでは、無実の黒人を白人警察官たちが殺したミネアポリスの事件が引き金となり、全米140の都市で暴動が勃発して、トランプはその鎮圧のために「州軍」を動員するとまで言い出した。
選挙のために「強い支配者」を演出するために、ありえない暴挙に出たのである。
アメリカは完全に狂っている。
この新コロナで空っぽになった道路を高速で走り、事故死する者が多発していると今日のニュースは伝えている。
アメリカ大陸を26時間(平均速度170キロ)で駆け抜けた3人組の報道もある。
また米中関係も日に日に悪化をたどっている。新コロナは、はっきりと人類の行き先を急速に「今までとは別な場所」にシフトさせつつある。
こんな最中にジェームス・ラブロックの25日発行の『ノヴァセン』の翻訳が出た
(4月25日発行)ので、すぐに読了した。
原著が出たのは、2019年だ。
結論から先に書くと、僕らはこの大きなシフトの時期に、シンクロして決定的に重要な書に立ち会っているんだということだ。
それは、1968年に、バックミンスター・フラーの『宇宙船地球号操縦マニュアル』が出たことを連想してくれたらいい。
フラーは、エンジニアの人だったが、彼が得たヴィジョンは、出版された当時は、カウンターカルチャーとしてあつかわれた。
その後この本は、40年以上経って、「地球と人間」に対する基本書となっている。
ラブロックは今年100歳になる。
この本は、99歳のときの執筆のものだが、(おそらくは)最後の著書、ラブロックの遺言といってよいだろう。
それは未来に生きようとする者への確実な指針を与えていると思う。
僕がラブロックの家を訪ねたのは、1999年の4月10日のことだった。なぜそんなに詳細なことがすぐに思い出せるかというと、その時の訪問記が僕の日記本シリーズ『THE DAY BOOK Ⅳ』(1998-2001)に収録されているからだ。
僕はちょうどこの頃、坂本龍一さんのオペラ『LIFE』のスタッフもつとめていて、ステージ用の映像素材撮影のためにラブロックの取材を行った。
(同じように、アマルティア・センのところにも行った。)
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