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ウィンクルボス兄弟ものがたり - 『世紀の大博打 仮想通貨に賭けた怪人たち』

「世紀の大博打 仮想通貨に賭けた怪人たち 」
アカデミー賞各賞受賞した話題作、現代の『市民ケーン』である『ソーシャルネットワーク』の原作者が描く続編。ウィンクルボス兄弟物語。

フィンチャー映画で漫画的に嫌味なエスタブリッシュメントとして描かれ、世界中から嫌われバカにされるようになったウィンクルボス兄弟。シリコンバレーのエリートたちからは敵と見なされ投資すらも断られるようになってしまっていた。そんなウィンクルボス兄弟が投資した先は、東海岸ニューヨークのシリア系超正統派ユダヤ教徒集住地区の地下室の暗号通貨スタートアップだった。

当時、黎明期のビットコインの支持者は、急進的リバタリアン、アナーキスト、犯罪者、凄腕エンジニア。。ザッカーバーグに裏切られ、司法制度にも裏切られ、世間からは理不尽に嫌われ、タブロイド紙中の寓話的キャラクターに祭り上げられた兄弟が信じたのは、トラストレス (Trust less) を信条とするビットコインプロトコルの数学的美しさであった。。

映画『ソーシャルネットワーク』では鼻につく典型的なアメリカンスクールカースト上位の脳筋エスタブリッシュメントとして描かれた兄弟のバックグラウンドには、実は炭鉱街から叩き上げた両親のキャリア、シリコンバレーのソフトウェアスタートアップで育った青春時代や姉の死など意外な側面もあり、本書では光が当てられている。

ビットコイナーとしては、映画化が待ち遠しい書籍でした。そもそも、映画前提で2010年代前半の上級国民・成金の文化風俗を描くような映画的なシーンが満載でその点も楽しいのが本書でした。

(ビットコインウォレットの秘密鍵を生成するのに16面サイコロでランダムな数列を生成し、そこから作るハッシュ値を3分割して、それが印字された紙を全米各地の貸金庫にしまうオペレーションからの、ハッシュ生成に使ったPC、コピー機、USBメモリをハンマーで叩き割るくだりとか、兄弟が謎メール受け取って謎部屋に行ったら、世界的な投資家、学者、起業家、技術者陣が秘密裏に集まってるくだりとか)

(できたらフィンチャーの絵で観たいけど、そうではない布陣で映画化は進んでいるようです)

(BTC黎明期のリバタリアン・アナーキスト・天才エンジニアを描いたナサニエル・ホッパー『デジタル・ゴールド』も楽しいのではよ映画化してほしい。只今kindle 50%off中)

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