【刀剣エッセイ】三十六歌仙の刀
三 十 六 歌 仙 の 刀
「をとめらが袖ふる山の瑞垣の久しき時ゆ思ひき我は」――柿本人麻呂
【序】
私がその刀の存在を知ったのは、まだ十代の頃だった。幼い頃から日本刀が好きだった私は、ある日、戦国時代の武将・細川忠興公の愛刀の名を知った。その名は「歌仙兼定」。名の由来は忠興公の息子・忠利の家臣を「輔佐ぶりが悪い」と三十六人(一説では六人とも)手討ちにしたこと、その人数と和歌の名人の総称である三十六歌仙(または六歌仙)を掛けて、だそうだ。
その逸話を知った時、私は「忠