22日後に新刊を出す植本一子(2024/11/9)
超ダッシュで家事を片づけ、午前から午後にかけて2件撮影。偶然にも2組とも10年通ってくれているご家族だった。スタジオを始めてそれくらい経つけれど、こうやって毎年来てくれるお客さんの存在に助けられている。一年に一度会うだけでも、決して弱くはない繋がりを感じる。
家に戻らずそのまま町の中華屋でお昼ご飯。時々こうやって一人で来るのだけれど、13時過ぎの店内はほぼ満席。かろうじて空いていた席に座ると、すぐ隣のテーブル席で五目あんかけ焼きそばを食べていた4人が、ずっっっっっと大きな声で不動産や資産運用の話をしていて非常に不愉快。不動産会社とお客さんの関係なのだろうけど、若い女性社員が中年上司を立てる感じとか、妻が夫を立てる感じとか、具体的な金額も聞こえてきて本当に嫌だった。帰った途端、話しかけたこともない店員さんに「うるさかった〜!」と愚痴りそうになったほどで、このままでは人相が悪くなってしまう、と早々に店を出た。
この不快な気持ちのまま家に戻るのも嫌で、豪徳寺の愛騒へ向かうことに。土曜ということもあり店内はほぼ満席、1席だけ空いていたので座ろうとすると、カウンターでもいいっすか?と店主の石川さんから声をかけられる。カウンターには先客がいたからやめておいたのだけど、このほうが石川さんと喋れるから私は嬉しい。すると、座ろうとしていた席の隣のテーブルの人が、ちょうど私の本を読んでいるのを石川さんが小声で教えてくれる。振り返ると、去年出した『こころはひとりぼっち』を窓際の席で静かに読んでいるお客さんがいて驚く。愛騒には本の選書コーナーがあり、私の本も卸させてもらっているのだ。喫茶を利用する人は読むことも買うこともできる。さっき不動産の話をしている人がいて不快だったという話をすると、何が嫌なのかいまいちピンとこないと石川さん。
私は!!!金儲けの話が!!!心底嫌なのです!!!
石川さんと久しぶりに話したことでささくれた気持ちも落ち着き、さっきのお客さんが帰り際に私の本を購入してくれたことで完璧に心が綺麗に洗われた。ありがとうございます、と声をかけると驚かせてしまい、ここまで読みました、と3分の1ほどのところに帯を挟んだのを見せてくれる。『かなわない』から読んでくれているそう。さっき撮影のお客さんからもらった鳩サブレーをお礼に渡す。
綺麗になった心で店を出ると、自転車のカゴに柴犬を2匹、ぎゅうぎゅうに乗せたおじいさんとすれ違い、さらにピカピカに磨かれる。気分も良く、帰り道のついでに近くのgouldへ寄る。今日着ていたスウェットは夏にここで買ったものだけど、今日は買うものもなく、すぐに帰ろうとすると店主の井上くんに呼び止められ軽くおしゃべり。愛騒の石川さんも、gouldの井上くんも私と同じ40歳。二人とも少々口が悪いところが良い。なんか古着が流行ってるらしいね?と聞くと「下品な流行り方ですよ」と言うので笑った。
勢いがつき、そのまま梅ヶ丘のパン屋・hnnまで行くことに。裏から中に入れてもらい、お茶を淹れてもらってよっちゃんまきちゃんと少しおしゃべり。夕方でパンも少なくなっているのに、お客さんがコンスタントに来るのですごいなあと思って見ていると、常連らしき若い女の子が買いに来て、よっちゃんが「今日はどんな1日でしたか?」と聞いているので驚いた。彼女は嬉しそうに今日あったことを2人に伝え、パンを抱えてニコニコと帰っていった。さっきの問いかけいいね、とよっちゃんに言うと、案外みんなちゃんと答えてくれるよ、と。そんなふうに誰かに聞かれたらきっと嬉しい。この様によっちゃんは気のいい人なのです。hnnのことはそのうちエッセイにでも書きたいと思っている。
すっかり暗くなり、くるみとレーズンのカンパーニュを買って帰る。家までの帰り道、東松原のBotanyの前を通りかかって思い出した。Botanyの店主・貴くんから、hnnに行った時はうちにもパンを買っといて、と言われていたことを。さっき自分のために買ったカンパーニュをそのまま横流し、パン代をいただく。行くことができる場所がたくさんあって私はしあわせです。
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