「孤独というトンネル」を抜ける
一冊の本との出会い
多くの人が抱えている悩みのひとつに、「孤独」がある。
もし孤独から脱却できれば、あるいは孤独とうまく向き合えれば、楽な気持ちで生きていけるのではなかろうか。
私が「未来のためにできること」。それは、「孤独というトンネル」を抜けるための道筋を示すことだ。
大学に入学した頃の私。いつも暗い顔をしていたそうだ。
孤独感にさいなまれていたからである。
しかし、社会心理学者のエーリッヒ・フロムが著した『自由からの逃走』との出会いが、私を変えてくれた。
彼によれば、ヨーロッパで「近代社会が生まれる前の時代に生きた人」は、村落・身分・階級といった固定的な制度・枠内で伝統的な生活を余儀なくされた。一方、「『自我のめざめ』を経験する前の子ども」は、両親の庇護の下にあつた。共通しているのは、行動・選択の自由はなかったものの、ある種の安定感・帰属感を持っていたことだ。
孤独と自由はメダルの裏表
近代社会が成立すると、個人の自由が認められるようになった。
成長過程の子どもも、「自我のめざめ」によって自分の「個」=「自分の世界」を持てるようになった。
こうして、「現代社会に生きる人たち」と「『自我のめざめ』を経験した子どもたち」は、それ以後、二つの方向性を抱え込む。
ひとつは、獲得した「自我」をいっそう発展させていける道。自分自身で考え、個性を発揮し、創造的な取り組みを可能にさせ、自由に生きていける世界だ。
もうひとつは、孤独との遭遇だ。それまで存在した「安定感や帰属感」が失われるからだ。孤独感や無力感が高まると、個性や自由を投げ捨ててしまいたいという衝動(自由からの逃走)が生まれてしまうのだ。
このように考えてみたら、どうか!
自由を獲得すると、孤独という苦しみが生まれるが、あなただけにではない。
自由を得たおかげで、「好きなところに住みたい」「好きな人と結婚したい」「好きな仕事につきたい」など、近代社会以前であれば、夢物語で終わっていたことを実現できる。「天才」にしか許されなかった創造的・芸術的行為を行い、自立的な世界を構築する可能性が「ごく普通の人々」にも与えられるのだ。
そのように考えてみたら、これまでとは違った目線で自分自身を見ることができるのではなかろうか!
半世紀以上も前に読んだ一冊の本。今でも私の人生を照らし続けている。