読むチカラ-能力グレードアップ講座 5
「読むチカラって、本当に必要なの? 」 「はい、そのチカラの有無は、学びや仕事の成果に直結します」。この記事を読めば、読むチカラの効用およびパワーアップの方法を知ることができます。
わたしたちの周りは、ネット情報、SNS、本、新聞、雑誌など、さまざまな文字情報で満ち溢れています。読むチカラ(読解力)とは、それらの情報の内容を理解したり、要約したりする力。いまの社会にあっては、生活のさまざまな場面で役に立つ力のひとつと言えるでしょう。
読むチカラを鍛えるとき、もっとも大切な点は、集中力であり、内容を理解しようという意志・気持ちにほかなりません。
内容の理解にもっとも役立つのは、得た知識を他人に話したり、文章に表したりといったことを想定しながら読んでいく姿勢です。一言で述べると、アウトプットを念頭においてインプットすることです。読んだことを自分なりに噛み砕いて、初めて身に付くわけです。
2024年12月10日に発表されたOECDの「国際成人力調査」にしたがえば、日本人の読解力は、世界でもトップクラスに位置づけられています。しかし、個人のレベルでは、いかなる場合でも、みんなイチから始め、試行錯誤を繰り返すなかで、そのチカラを鍛えているわけです。
さあ、あなたも試してみてください。
もっとも効果的な方法は、読書
では、読むチカラをパワーアップできる手軽で、かつ効果的な方法は、なんでしょうか? 常識的な答えになりますが、ずばり本を読むことです。
いまのご時世、人々は毎日、やるべきことをたくさん抱えています。家庭、学校・塾、職場では、時間が飛ぶように経過していくことでしょう。ほかにも、多種多様な娯楽・趣味・楽しみがあるかもしれません。そうした状況下で、一定の時間を読書に費やすのは、結構大変なことだと思います。
でも、読書の効用にはきわめて大きいものがあります。本を読むこと自体が楽しみにつながるのですが、三つのほど、効用を挙げておきましょう。
一つ目は、考える力を鍛えてくれることです。考えるという行為は、言葉で行われます。
言葉を満載した本に接することで、話し言葉だけでは養えない多様で、複雑な思考も可能になるのです。脳科学者である茂木健一郎さんの言葉を借りれば、「読んだ本の高さ分だけ、脳は成長する」ものなのです。 読書が脳の活性化を促すからです。
外部からの情報とは一切無関係に、ただ自らの内面だけを頼りに、考えや思ったことを表現するのは、非常に難しいこと。しかし、本に書かれた言葉を使ったりしながらだと、格段にうまく表すことができるのです。自分自身が漠然と思っていたことをはっきりと認識できるケースもあることでしょう。
二つ目は、コミュニケーション力の基礎になり、対話力を高めてくれることです。
対話力とはなんでしょうか? 斉藤孝さんによれば、「脈絡のある話し方」ができるチカラということになります。そのためには、相手の話の要点をつかみ、その要点を受け止めて自分の角度で切り返すトレーニングが大切です。
三つ目は、直接出会わなくても、多くの人の意見・考え方に触れたり、ほかの人の人生を疑似体験したりすることができること。いずれも、自己啓発や自己実現のための糧になるのです。
一生の間に、実際に会って直接話ができる相手は、そう多くはありません。ところが、本を読めば、すでにこの世にいない昔の人や、海外の人も含めて、多くの人の考えにも接することができるのです。それだけ、教えを乞う相手が増えるわけです。本に書かれた物語を通して、他人の生き方を疑似体験できることも、本の魅力です。
読む力をパワーアップするには
読むチカラを鍛える方法として、おススメしたいのは、次の五点です。
ノートに要点を書き留めたり、メモをとったりしながら読んでいくこと。余力があれば、読んだ本の内容(抜き書きや要約)や感想を「読書ノート」としてまとめてみるといいでしょう。
大事だと思った個所、興味が湧いた個所、基本的な事項・説明部分などにボールペン・鉛筆などでアンダーラインを引いておくこと。「うまく表現しているなあ」「こういう見方もあるのか」「わたしも真似してみよう」「納得」など、いろいろな受け止め方があるはずです。印をつけるのは、頭に残りやすくなるからです。もちろん、内容の違いを色の違うマーカーを使い分けて仕分けすることもOKです! 大事なところに線を引いておくと、あとでもう一度読み返すとき、大変効率よく再読できるので、とても便利なのです。
欄外に「目的・ねらい」「基本問題」「定義」「仮説」「情報」「疑問」「結論」「要検討」「賛成できる」「あとで使える」などの語句を入れながら読んでいくこと。ドキッとした、感動した言葉など、思いついたことは、なんでも余白部分にメモを残しておきましょう。しばしば「資料は、汚して読め」と言われるとおりです(ただし、図書館の本には、くれぐれもアンダーラインなど引かないように)。
記憶を定着させるには、黙って読むだけではなく、目・耳・手など、身体の機能を総動員すると、いっそう効果的になること。脳が一度に系列化できる情報はきわめて限られています。その弱点を克服するには、書いてみる、読んで耳からも情報を入れる。情報を脳に二重三重と刻んでいけるわけです。そうしたことにより、覚えたり思い出したりというチカラが鍛え上げられるからです。
同じテーマ・問題に関して、とりあえず2冊の本を読んでみること。1冊だけだと、どうしてもその著者の意見に引きずられてしまいがちになります。ところが、もう1冊読んでみると、最初に読んだ本との違いがわかります。両者の考え方を比較すると、どこが違うのか、自分の考えはどちらに近いのかといった考えをめぐらしやすくなります。理解力を鍛えることができるわけです。
以上のような点に留意して、さらに読む機会を増やしてみてはどうでしょうか。ひとつひとつの本の書き手の考え方がもっと相対的なものになり、さまざまな考え方があることに気づかされることになります。そうなると、より柔軟な発想が生まれてくることにつながっていきます。読書が人間形成の重要な手段になると言われるのは、そのような効果があるからです。
パーソナル処世訓3 自分でコントロールできないものには、無関心で
「あまり考えこんでもしょうがないよ」。よく自分に言い聞かせました。「いつもクヨクヨ心配性」のところがあったからです。
そして、あるとき出会いました。
「自分でコントロールできることと、できないことがある。コントロールできないことには無関心でいろ」といった言葉に。
なにかあると、その言葉を念じました。少しずつ「クヨクヨ感」が減っていきました。