10年前の私に書く手紙。


どこかのかわいこちゃんとは逆に、タイトルを短くするチャレンジをしている。


以下はタイトルそのまんま、まだ可愛さいっぱいであった頃の私へのお手紙。





はぁーい、イザベッラ・デオダード(仮)。久しぶりね。
相変わらずブラジル人のふりをして下手な歌を歌っているのかしら。


音楽なんてやっている人たちはとっても神経がこまやかで接するのが大変やのに、どうしてそこに飛び込んでみたのか、ほんとうにアンタはドMオンナなのねえ、としか言いようがないわ。


よくもまあ、こんなラテン系なんて自分からかけ離れた芸名をつけたものだなって感心する。

ステージネームやカウンセラーネームをつける割には、自分の生まれ育った名前が大好きで、当時の旦那さんの苗字を名乗ることに10何年も慣れることができずにいたよね。

これはなんでだろうねー。よくわからんね。




しかしさー、結婚生活には私がいなかったよねー。


妻だったり
嫁だったり
かあちゃんである私はいたけれど。


もちろん、それはとてもしあわせなことであったけれど。


旦那さんの苗字に変わり、市川という姓を取り戻した時に、とてもとても安堵したのを覚えているよ。




やっと息ができる。



たくさんたくさん書類を書いた。





市川。


市川。


イチカワ。


ichikawa.


ああ、私の、名前。




あなたは36歳で、若い娘さんだった。


いえいえ、もうとてもそんな、ただの子持ちのおばちゃんです、と言うだろうね。

36歳はねー、若いよー。
若いのよー。
ダイエットしたらすぐ痩せるもの。
もぉね、すぐ太るからね、10年後は。
食べないダイエットとかしちゃ駄目よ。


私今お酒飲んでるんだけど、酔うと説教するのよ、ごめんなさいね。
「私そんな酒癖悪くありません、人に迷惑かけないようにがんばってるのに、そんな失礼なこと言わないでください」って言うだろうね。
周りの人が優しかったのよ。誰も文句も言わずに「出た説教!ウケる!」って、私には内緒でこっそり笑ってくれてたの。


そんな話をしたら、あなたはもう誰とも会わないで一人で過ごすことを選ぶだろうね。


あなたは世界をうたがっていたからね。


私のせいで迷惑をかけてしまう
私がいると輪を乱してしまう
私などいない方がみんなのためになる


ずっとずっと、そんな思いが消えなかった。


元旦那さんにも
お舅さんお姑さんにも
子供たちにも
ママ友にも
先生たちにも


迷惑をかけてはいけない
ちゃんとできる人間だと思われなきゃいけない



私は駄目だから
何もできないから


せめて迷惑かけないくらいできなきゃ生きてる価値がない。



夜、元旦那さんや子供たちが寝静まった頃、どうにもならなくて、声を出さないように必死で慟哭を抑えていたね。

ひきつけを起こすかのように、その息が漏れて音を出すことすら怖がりながら、激しく泣いていたっけ。



助けてあげられなくてごめんね。
いっぱいあなたを責めた。
何にも価値のない駄目な女だと思っていた。
助けてあげるどころか、私こそがあなたの最大の敵だった。


毎日毎日責め苛まれて、深夜に我慢しながら泣いて、それでも朝が来ることは止められない。
また今日も生きなければならない。笑顔をつくって、きちんとしたママのふりをしなければならない。


元旦那さんのせいで
お舅さんお姑さんのせいで
子供たちのせいで
ママ友のせいで
先生たちのせいで
社会のせいで
日本というお国柄のせいで
女に冷たい社会のせいで
関西っていうお土地柄のせいで


私は不幸だ、と他人のせいにしていたけれど、私自身のせいだったんだ。




ごめんね。
痛めつけてごめん。
優しくしなくてごめん。
認めてあげなくてごめん。
否定してごめん。
傷つけてごめん。


あなたは、たくさん不倫をしたよね。
それすら自分を痛めつけるためだったのに。
どうでもいい、そこらにいる適当な男と適当にホテルに行ってさ。
たまに誕生日にモノでしかないモノをもらって喜んだりしていたね。


あなたは安心して暮らしたかっただけなのに。



こんなクズ女、生きてる価値ない。
でも、子供を残して死ねない。


私自身が、お母さんが早世して寂しくてたまらなくて


母のいる同級生を羨んで拗ねて
フツーのお家、ってものに憧れて憧れて

やっと手に入れたのに。
やっとフツーになれたのに。
子供たちにこんな苦しみを与えるわけにはいかない。


どうしてこんなにつらいんだろう。
壊すようなことをしてしまうんだろう。




ちょっといい男だった不倫相手が音信不通になった時、あなたはやっと自分の足で立とうと決心する。

心理カウンセラーと出会い、本当の自分を取り戻す学びを求めるようになる。



私が心理カウンセラーになったのは、あの頃のあなたに詫びたいからなのよ。


私が痛めつけたあなたを。



まだまだ、長い習慣だったから、自分を痛めつけるというその癖は時折顔を出すけれど。



けれど、ああもう嫌ね、私は私をしあわせにすると決めたのだから、と笑うことはできるようになった。



そのたびに、昔の私が

「ホンマにイヤよね」

と、眉をしかめて笑ってくれているような気がするよ。



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変顔チャレンジ。


読んでくれてありがとう。


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イチカ | 【女性専用】タントラ哲学×心理学カウンセラー
ずっと罪悪感を抱えて、自己肯定感ひっくい人生を送ってきたんですけれど、いまは応援していただくことの修行をしています。よかったらサポートお願いします。いただいたサポートで土偶や土器の博物館に行きます。