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ロシア連邦保安庁FSBリークレター:11月27日付【スレッド要約】

今回の記事は、数日前に公開されたFSB告発文書/リークレターの全文翻訳です。ツイッターでイゴール・スシュコさんが発信してくれたものを翻訳しました。

(リークレターの背景に関しては別途まとめて投稿予定)

こちらが私がツイッターで投稿していたものです。(ほぼ実況的翻訳……)

以下、ほぼ全訳です。

  • 見出しは瀬道が追加

  • ()内は英原文にある補足と翻訳上の説明

  • 【】内は瀬道の補足とつぶやき

となります。


やあ、ウラジミール【オセチキンさん】!

ベラルーシを介した攻撃についてもう少しと、手紙の内容、「ロシア外務省の第2部門」に関する情報に関して正確でない部分を少し修正しよう。

三国併合のために動く外務省の部門

CSTO【集団安全保障条約機構。旧ソビエトの軍事同盟】総会の決議案に必要な項目を準備するために、FSBの第2部門(ここで著者はロシアの学校成績(2~5)の「落第点」である「2」と同じ呼び方をして、その失態を嘲笑している)――またの名をSZKSBT(憲法規律保護およびテロ対策部門)――が手伝ったのは、外務省の『CIS(独立国家共同体)の第2部門』だ。

これはとても重要な点だ。(前回の)手紙には『第2部門』とだけあったが、外務省内にそれはいくつか存在する。話題に上ったのは『CIS(独立国家共同体)』の第2部門だ。それには3つの国しか含まれていない:ウクライナ、モルドバ、ベラルーシだ。

ここで情報を詳しく見てみよう。誰が、何を、何のために行ったのかを。

ルカシェンコへのロシアからの圧力と抵抗

当初は、ルカシェンコは『簡単なターゲット』だと思われていた。部署のレベルでは、彼を我々の思い通りに操るのは難しくないと考えられていた。

しかし『特別軍事作戦』の――3日目には明白だった――失敗の後、ルカシェンコは我々の手に負えなくなり始めた。そして我々の組織には彼を排除できるだけの力は無かった。

3月1日にあった彼と軍との会議を思い出してほしい。彼は軍の動きを示した地図を公開して、オデーサを経由してトランスニストリアへ、そしてモルドバへ侵攻する計画を露にしてしまったのだ。【画像↓↓↓】

FSBは、ルカシェンコは意図的に、無意識にやったふりをして秘密の計画を漏洩し、国際的な注目を軍による攻撃の本当の目的に集めさせたのだと今でも信じている。

(そうすることによる)彼の利益は明白だ。ベラルーシによる、そんな風に速攻で秘密をばらすような『不信頼性』を目の当たりにすれば、ロシアはミンスクに情報を共有しなくなる。彼らが戦争に引きずり込まれるのを避けるためにそれは有益なのだ。

それ以降、ルカシェンコを陥れる計画はことごとく失敗してきた。脅しも詐欺も通用しない。遂にはミンスクに賄賂を贈るしかなかった。これは毎回、半分だけ成功している。

ルカシェンコは、通常は払い戻し不可能の貸付金の形で金を受け取り、ウクライナに対し(動画のような)攻撃的な弁論を展開する。しかしベラルーシの銀行への全額資金移動が終わった瞬間に、彼は(ロシアにその金額で)要求されている残りの50%の義務を放棄するのだ。

もしまた彼を買収しようとすれば、彼は同じことを繰り返した。

ミンスクにおいて重要な、公開されていない論点の一つは、ベラルーシは『特別軍事作戦』における積極的な参加者という位置に立つ準備は出来ておらず、プーチンには『別の枠組みを見つける』ように頼む、というものだ。

ルカシェンコに協力を強いるための計画

(逃れ続けるルカシェンコを追い詰める)ため、賢い解決策が模索された。

それが、FSB管理下にあるCSTOに直接的な責任のある分野である『テロリズムと過激派討伐の問題』に対する、CSTO議会における特別な配慮だ。

それは、あまり理解されていない2つの項目を、一般決議案に滑り込ませるというものだった。

以下がその2項目だ。

条約への参加国の権利の追従機能を最適化するため、および憲章第8条に従い、本機構のために全ての参加国の領地におけるテロリストの脅威に対抗するために戦力を行使する権利を、全ての参加国が所持する

(つまり、理論的には、ベラルーシはロシアによって『併合された』ウクライナの領地に、CTSOの旗印のもと対テロリズム作戦と謳い侵入出来ることになる)

憲章第10条の下、各国の国内法令との一貫性を改善するための労力を強化することに、参加国は同意する

これらの一見無害な項目は、ロシア外務省のCISの第2部門と協力して作成されている。この部署は可能な限り我々(FSB)とSVR(海外諜報部)と連携して働いている。なぜなら、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバは国土拡大の最優先ターゲットだからだ。これらの3つの国の完全な併合、少なくともそれが正式なゴールとされている。

これらの(2つの条項の)文章内における官僚的な言葉選びについて少し説明させてほしい。

ロシア側には、優先事項がある。それはベラルーシから戦争における直接的な関与を避け続けられる機会を奪うこと

これらの項目はミンスクに、国内の法令をその目的で前もって調整させたうえで、CSTOの旗の元で戦力と領土を動員させることになる。

つまり、ベラルーシの領土からの(ウクライナに対する)大規模な攻撃に、「テロリズムの脅威に対抗するためのCSTOの戦力の導入」の名目をつけることが出来るのだ。

もちろん、他のCSTO参加国は憤慨するだろう。しかし団体自体がすでに破滅しているようなものだ。それが完全に終わる前に、少しの実益は絞り出せるかもしれない。

加えて、そのような決議はミンスクからは意義を唱えにくい。なぜならそれらは、議会内で公式に提案され、一般宣言の中で全ての参加国に署名された(はた目には全く無害な)項目だったからだ。

そしてここが鍵だ。誰も、この計画にミンスクの同意を得ようと声にあげなかったのだ。

もしこれらの計画が本当に宣言に組み込まれていたならば、ルカシェンコは追い詰められていただろう。「ほらごらん、問題は全て解決してあげたよ。うろたえることは無い」と言われるかのように。

失敗に終わった計画

しかし、(ロシアにとっては)何かが随分とおかしい方に向かってしまった。(いつものように、全てがおかしい方に向かったのだとは思うが。)

まず、ルカシェンコがこう公言した。

「CSTOの命運はウクライナでの『作戦』にかかっている」

(CSTO内の)ロシア側には、はっきりとした指示が出ていたのに、だ。それは、出来るだけウクライナには言及せず、出来るだけ速やかに『テロリスト対策』の議題を立てるというものだ。前述した項目が、疑惑を呼び起こさずに、簡単にそして目立たぬよう組み込まれるようにするために。

次(に起こったの)が、パシニャン(のあの行動)だ。

【パシニャンはアルメニアの首相でCSTOの議長でもあった。彼は話題に上げられている会議の際、(計画が織り込まれていた)共同宣言に署名せずに閉会を宣言した。動画はその瞬間の様子。】

一方では、彼の立ち位置は理解できる。アルメニアはロシアに対して攻撃的で、CSTOには主張を繰り返しており【つい最近アゼルバイジャンによる攻撃を受けた際に、CSTOに支援を求めたが無視されていた】、その外交戦略は必然的なものだ。

しかしFSBは、その政策の裏に、CSTOのあらゆる行動や宣言を邪魔するための各国の連携があったのではないかと疑っている

失敗の責任転換

そして、ここが最も面白いところだ。

メディア【報道機関の発表を意味すると認識】では、ロシア外務省のコメントは『貴方』から始まっている。【自信なし。誤訳なら後で修正】「V・オセチキンとアルメニア人」というフレーズがあったのだ。

FSBは(SVRも)、ウラジミール・オセチキンはDGSE(フランスの海外諜報部)と綿密に連携していると信じている。【手紙の受取人である人権活動家オセチキンさんはフランスに亡命している】……なぜならFSBの論理では、公に出ていると同時にどんな特別組織からも独立している人物など、存在するはずがないのだ。そんなことは不可能に決まっているのである。

【裏を返せば自分の国(ロシア)の公人は全部政府の管理下にあるのが当たり前ということ……ウクライナを応援する私たちも欧米が組織した「反露プロパガンダ部隊」の一員だと思われてそうですw】

それにフランスは、アルメニアの欧州における主要パトロン国家のようなものだ。だからフランスの特別部隊は、最終的な宣言に含まれる条項を含めた、ロシア外務省のCIS第2部門の計画を知っていたと考えるのが(FSBにとっては)論理的だ。

フランスはアルメニアと共謀していて、パシニャンは計画を外交措置として破壊したに違いない。ルカシェンコも、ロシア側の計画を知っていたのだろう。彼は、彼に全てを警告してくれる欧米と秘密の会話を設けているに違いない――そう思われているのだ。

概して我々の人員が見る全体像は出来上がり(ロシアの防衛職らは全てがかみ合うまで陰謀論を展開し続ける)、そこで最も重要なことは、全てを説明し失敗の責任がどこにあるのかを探すことになる。

ルカシェンコは裏切者、オセチキンは欧米の秘密情報機関のために動く〇〇野郎。みんな一生懸命働いている。FSBには責任は無い。全て筋が通る。報告は完璧だ、というわけだ。

スケープゴートとしてのワグネル

軍に関しては、何を考えているかは私にはわからない。彼らは彼らのゲームを展開している。彼らは私たち(FSB)を信頼していないし、彼らに関する特別な情報は特にない。しかし、誰にとっても明らかな事実がひとつある。

それは、「プリゴジンのミュージシャン(ワグネル傭兵)を無効化する」ことが目標なのではない限り、『ベラルーシ経由のウクライナへの攻撃』の成功はありえないということだ。

因みに、この辺りではFSBも軍も(そしてほぼ誰でも)一致している意見がある。

「『ワグネル人』たちをウクライナ人の手によって殺させる」と同時に「彼らにあらゆる責任を擦り付ける」というやり方は、非常に実行可能な選択肢であるという点だ。

戦争に既に負けた事実は明確すぎると言っていいい。というか、我々は勝利を勝ち取るのが完全に不可能なところまで来てしまった。だがここから更に事態は悪化するだろう。

『引き分け』に持ち込むための交渉が試みられているが、それはいずれ敗北の対価に関する交渉になる。そして傾向から見るに、ロシアの条件(要求)を気にしているものなどほとんどいない。

シニカルに言わせてもらえば、私はワグネル人の運命などどうでもいいと思っている。どちらにしろ、誰かがこの団体を焦土化レベルで排除することを強要されることになるだろう

そして軍は動員兵たちを簡単に屠殺場(戦場)に送ることが出来る。現実、何の罪もない、ただ単に『母国への義務』と呼ぶことをしている人々を送っているのだ。

軍の指導者たちにしてみれば、彼らに必要なものを提供し彼らを訓練することに責任を持つよりも、決定的な数の動員兵を素早く突然『失う』ことの方が簡単だ。

キーウから見たベラルーシ経由の侵攻

キーウが全てを完全に理解しているのは明らかだ。非常に信頼性の高いデータによれば、ベラルーシからキーウへの国境からの防衛線が活発に準備されている

だがここにカニバリズム的な論理が展開できる。ロシアからのベラルーシを介した攻撃は、ウクライナにとっては非常に利益が大きいのだ。地雷を設置した平原、防衛における完全な砲撃優位性、防空システムによる強固な守り……ウクライナ軍は素晴らしい勝利を僅かな値段で手に入れることが出来る。

そして彼らにとっては『ワグネル人』たちを抹殺するよりも、動員兵たちをそうした方が有利なのだ。なぜなら動員兵たちの大規模な損失は、ロシア社会に崩壊への引導を渡すことになる。ロシアの『勧誘』の目的は代わりに、『ロシアの反乱を治める』になるだろう。

この点において、ウクライナ側は積極的にデータを集め準備し、それと同時に「(ベラルーシからの)攻撃は期待していない」という主張を行うに違いない。そうすればウクライナは、攻撃の可能性を議論する全ての者を『挑発行為だ』と非難することが出来る。

彼らには我々の兵力を大幅に削るための絶好のチャンスが見えているのだ。それを失いたくは無いだろう。

軍事的に見れば、彼らの行動は正当化されるだろう。だがこれは純粋なカニバリズムだ。そして自らの利権のために彼らに合わせて動くロシアの将軍たちは卑劣な悪党どもだ。

背景補足:ロシア軍の士官たちも、もう勝てないことは理解している。そうなった場合選択される行動の一つが、『負けが確定して全てが終わるまでに出来るだけ金を手に入れておく』というもの。出来るだけ多くの人数を部隊に入れて、死亡した場合はその報告を先延ばしにする。するとその間(もう書類上にしか存在しない兵士に)支払われる予算を責任者が懐に隠せるという流れ。これはロシア軍の中で常習的に行われていると見られていて、それがロシア側が発表する戦死者数が少ない一因でもある。このような習慣はあらゆるロシアの組織で蔓延っているとカミルさん。本レターの著者は、上記の文章でこれを非難していると思われる。】

プリゴジンのプロファイリング

この手紙はずいぶん長くなってしまったが、せっかくなのでプリゴジンについての情報も追加しておこう。彼の心理的な肖像についてだ。

若いころ、プリゴジンは独身の女性たちから略奪(意識がなくなるまで窒息させるやり方を好んだ)し、10代の子供たちに酒を飲ませていた。彼はいつも『パワー・コンプレックス』(権力に対する複雑な観念)の奴隷だったのだ。彼は青少年たちに残酷でとても重い罪を犯させ、自分自身は手を汚すことを避けていた

これらの行動から、以下のことが読み取れる。――これらの情報は公式にFSBでファイリングされている。もう奴に何かを持ち去ったり破壊することは出来ない。【以前プリゴジンがFSBとロシアを壊滅させようとしていた件と推測】

  • 臆病で内面は弱い(被害者は独身女性、そして酔わせた未成年に命令するのは簡単)

  • 自分より上のランクの前では自分自身を卑下するのを厭わないが、『奴隷が求めるのは自由ではなく、自分のための奴隷』のことわざを地で行く

  • パワー・コンプレックスと部分的に満たされたナルシスト障害により塞がれた深刻な劣等感

  • サイコパスで、誇大妄想に取りつかれている

  • 明白な加虐性愛への先天的な傾向

彼が『最も強靭で熟練の』傭兵たちを自分のテーブルに招いてすぐに、戦闘のデモンストレーション(特にナイフによるもの)(プリゴジンを楽しませるために、お互いで)を行うことを提案したケースが何度かあった。

この要求は明らかに非実用的だが、プリゴジンの主な快楽は、彼自身が得ることの出来なかった性質(勇敢さ、真の豪胆さ、強さ)をもともと持った人たちが、グラディエーターのように殺りくに向かう事実なのだ。

そしてこれ――彼らに対して権力を持っていることに相殺されている、本当に強い性格への無意識な嫉妬――この特性が、彼をプーチンと結び付け、他の多くの人には精神的に入り込めない部分にまでお互いを近づけているのだ。

【プーチンの精神鑑定は別途要約したので、後でnoteにもまとめます】

経験ある精神科は、もっと完全で広範囲の性格描写が出来るだろうが。

敬具


【翻訳以上】

私にとっては、ルカシェンコのふるまいや、同盟国を巻き込もうとするロシアの試み、そしてロシア当局におけるワグネルとプリゴジンに対する認識など非常に興味深い内容でした。

その信頼性に関しては議論されるところでしょうが、新たな視点が見つかったのは確かです。


今後は過去に翻訳したものも、(大量にあるうちの少ない数ですが)順次投稿予定です。

それでは、また次回。

翻訳者、瀬道

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せどう いちか/Sedou, Ichika
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