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書きたい

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ちょっとした詩とかエッセイとか、小さな文章作品をまとめます。
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記事一覧

底なしの夜

何もできない夜は 安寧の闇に沈めもせずに 放棄したものたちの山に埋もれ 私だけの宝の山に包…

草一条
1か月前
4

或る兄弟の話

 舞台の上のその男は、俺の知っているあいつではなかった。舞台の幕が下りるまで、俺はすっか…

草一条
1か月前
6

鏡張りの部屋

そこは鏡張りの部屋 しかも四角い部屋じゃない 面だらけの部屋 きれいな多面体でもなければ …

草一条
5か月前
2

愚痴

 他人が私を見て小さいだとか、頼りないだとか、そう思うのは仕方がないことでした。それが事…

草一条
9か月前
4

濁流

増大した不安が 真綿のように首を絞める どうにか こうにか どうか 息をしたいが でももは…

草一条
1年前
1

タカラモノ

なにもかもだめで いやになったんだ どこかで誰かが歌った 僕は消えたいなんて歌 そんな気持ち…

草一条
1年前
2

だるまさんがころんだ

(四拍子。一行で一小節。「おつきさんいくつ」などのわらべ歌みたいな適当な節で) だーるまさんがこーろんだ さあ 振り返ったら誰もいない 幻か夢か でも 振り返っても夢じゃない だーるまさんがこーろんだ だーるまさんがこーろんだ だーるまさんがこーろんだ …誰かが肩を叩いた 泣きながら振り返る でも やっぱり誰もいなかった 闇雲に走った ぶつかって転んだ 「今度は私が鬼よ」 笑い声が言った だーるまさんがこーろんだ 動いたらだめよ 「捕まえたら私 もう ひとりぼっちじ

雨が来る。私たちは歩く。

 雨が来る。その予感を孕んだ秋風が吹いている。もうずいぶん歩いた。広い公園を一周して、美…

草一条
2年前
1

ひとりごと

懊悩は泥濘のごとくわが足を捉え 現実は大河のごとく眼前に行く手を阻む 向こう岸から呼び声が…

草一条
2年前

小説「氷磨と王子」第五章

これまでのお話 下のマガジンにこれまでのお話をまとめてあります。第四章前半までは、あらす…

草一条
2年前
2

小説「氷磨と王子」第四章 後半

これまでのお話 下のマガジンにこれまでのお話をまとめてあります。第四章前半までは、あらす…

草一条
2年前
1

考え事 ー新入社員と社長ー

 四月、勤めていた会社に、一人の新入社員がやってきた。専門学校を出て就職で、その当時二十…

草一条
2年前
4

詩 「もう一度」

「もう一度」 もう一度 あなたと歌を もう一度 あなたの手を 耳を澄ませ 手をのべて あな…

草一条
2年前
7

小説「氷磨と王子」第四章 前半

これまでのお話 これまでのお話はこちらのマガジンにまとめています。更新の間が開いてしまいましたし、なんとなくことのあらましはリンクの下に書きます。作者ですら混乱するので関係図も置いておきますね。  これはある国に、二つの民族が住んでいるお話です。もともと「東の民族」が住んでいた土地に、「西の民族」が入ってきます。西は侵略者ですが、やがて二つの民族は争いをやめ、互いに混ざるようにもなります。しかし、このお話で扱う時代に西の民族の王になったのは、東の民族を忌み嫌う王でした。彼は