16才とまの話5。精神神経科

五日目

 人生初めて、東京大学に足を踏み入れちゃった。壮大で小綺麗なとこだよ。小さな森の中にある三四郎池は「心」をかたどっているらしい。太った鯉がお互いぶつかり合いそうになりながらうようよ泳いで、クッキーのかけらを水に投げ入れると我勝ちに集まってきたの、なかなかの見ものだったなあ。僕、奴らのうろこを枝でつついてやった。丈夫な手ごたえを感じたよ。心の中をうごめく、かたいかたい鯉。もう少し奴らの声に耳を澄ましていたかったんだけど、そん時は時間を気にしていて余裕がなかった。それからはひたすら山みたいにでこぼこした道を歩いて森を出て、つんけんした東大生の顔を尻目に病院へ戻った。結構な冒険だった

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