読書記録(2022年 晩夏)
フランシス・ベイコン・インタヴュー
GINZA SIXの蔦屋が、アート・デザイン・サブカル系のラインナップが充実してた…!話題の新刊はしっかり押さえつつ、洋書や古書(プレミアついてる系)も取り扱ってて、宝探し感がある素敵な空間だった。「フランシス・ベイコン・インタヴュー」も、そこで見つけた一冊。
フランシス・ベイコンが「本質を捉えたい」というような旨を繰り返し発言していたことが印象的だった。リアルを追求した結果出てきた造形物が、あの作品群だ。
「リアル」という言葉は、写実的・フォトリアルという意味合いで使ってしまうことが多いが、「リアル」ってそういうことだけじゃないよね、と思い出させてくれる感じだった。
そして全体を通して翻訳が丁寧で、集中して読むことが出来た。ニュアンスが難しい言葉も噛み砕いて日本語に落とし込まれていた。
モノクロではあるけれども図版もたっぷり差し込まれていて、「今どの絵について話しているの?」と迷子にならず、ありがたかった。
悪魔絵の物語
悪魔絵ばかりを集めた軽めの画集。ちょくちょく挟み込まれる豆知識が面白かった。聖書に悪魔の姿かたちを定義した記述は無い、赤+黒がネガティブイメージの象徴だった、などなど。
装丁も素敵だし、絵本のようなカジュアル感なので贈り物にも良さそう。ただし、やや大人向けな記述(性的な表現)もあるので、贈る相手は中高生以上が良さそう…!
マン・レイと女性たち
昨年Bunkamura ザ・ミュージアムで展覧会やってたみたい…すっかり見逃した。
マン・レイの人生の歩みと作品の変遷を追った内容。作品タイトルの意味が解説されていて、なんとなく疑問に思ってたことが解決した。なんで手の像が有名なんだ…?とか。タイトルの言葉遊び含めての作品だった。
個人的には、マン・レイは肖像写真作品が良いなと思った。
脳と即興性
脳科学者の茂木健一郎さんとフリージャズ奏者の山下洋輔さんの対談。フリージャズの世界を全く知らなかったけれど、面白く読むことができた。
MASAHISA FUKASE
写真家の深瀬昌久さんの作品総集編とも言える大型写真集。作品の変遷を時代を追って見れる貴重な一冊。深瀬さんの過去の作品集は絶版で、手に入らない状態になっているものが多い…。
深瀬さんの写真を初めて見かけたのは「写真集の本」という、写真集ばかりを集めて紹介した本だった。そこに載っていたのは、普通の家族写真に一人半裸の女性が紛れ込んでいる異様な作品だった。
しかも写っているのは深瀬さんの本当の家族(親族)で、女性は妻らしい。
このほかに全員が正面を向いている写真もあるのだけど、この背面写真では女の人だけが正面を向いている。
なんだか、この人だけがこの世の人では無いような…もしくはこの人だけが生身のような…そんな隠喩を想起してしまった。
怖っっ、と思いつつ、目が離せなかった。
ホラーを狙うのであれば、もっとそっちに寄せた演出も出来るのだろうと思う。でもそうではなくて、ごくごく普通に家族の集合写真撮りました、という気負い無い感じである。多分ホラーは狙ってない(本当のところは知らないけど)。
じゃあなんでこんなゾワゾワするんだろう?と考えたら、写真家本人的には普通に撮ってます感が怖いのである。普通に撮ってこんなもんが出てきちゃうのか…というのが怖くもあり面白くもあった。
他の写真も色々見てみて、全体的に共通してるなと思ったのが、深瀬さん自身の写真撮影に対する気負いの無さだった。
構図がすごく格好良かったりするので、もちろん作品として狙って撮ってるのだろうとは思うけど、それを上回る生々しい感触があった。
主観的で生っぽい視界が特徴的で、瞬きするみたいにシャッター切ってたんだろうな、と思った。
無意識に目で追ってしまったものまで写真に撮れてたんじゃないかと思うほど、カメラと本人の目が一致してるような印象だった。
主観的で生っぽい印象がどこから来るのか考えてみたが、おそらく構図にあるのではないかと思った。
例えば私が写真を撮ると、状況説明的な要素を入れがちになる。こんな室内で、ここに対象物があって、みたいに客観的に見て理解できる絵面にしようとしてしまう。客観性を意識して構図を決定してしまう。
しかし深瀬さんの写真では、そういった説明が省かれているような感じがした。状況がよくわからないけどリアリティはすごい、という写真がいっぱいある。ひたすら主観的に、自分自身の「リアル」を写真に残していったように思う。
そういう意味では、どことなくフランシス・ベーコンと共通する部分があるように感じた。
来年展示があるようなので、どんな作品が見れるのか今から楽しみ!
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