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地獄の稽古場(大熊)

芸術の道は険しい。
座長の大熊です。
壱劇屋は演劇という名の荒野を歩く集団。
遥か高みを目指して至高の芸術作品を作るため、寝食を削り、命を削り、求道している。
そんな我々にとって稽古場は戦場だ。
技を磨き、心身を鍛え、孤高の舞台を作り上げるために意見をぶつけ合う。
それは時に声を荒げ、主張と主張をぶつけ合う瞬間もある。
また、一言台詞を噛もうものなら、それは怠慢とされ役を奪われる修羅の稽古場。
一度振り付けを間違おうものなら、それは未熟者とされ振りを奪われる弱肉強食の稽古場。
緊張感も恐ろしく高く、一時たりとも気は抜けない。
油断しようものなら稽古シューズに夥しい量の画鋲が投げ込まれ、役を奪われるのだ。

この地獄の稽古によって生まれるのが壱劇屋のストイックな作品なのだ。

そんな地獄の稽古場に先日、劇団員フォトグラファーの河西沙織が、戦場カメラマンの如し緊張感で稽古場に潜入し、写真を撮影することに成功したようだ。それがこちらだ。


あれ?


なんだ?


なぜこやつらは・・・
笑っているのだ!

おかしい。
我々の稽古場は生き馬の目を抜く稽古場。
なぜ此奴らはこのように笑っているのだ!

こいつも!
こいつも!


こいつもだ!

どうなっている!


こいつと!
こいつにいたっては!

寝ながら笑ってるではないか!
高みを目指す我々に笑顔など不要なのに!

おわりだ・・
こんなことでは・・
我々はおわりだ・・

こいつらはもうだめだ・・
もう信じられるのは己のみ。
己だけでも自我を律して鬼面で稽古に臨まねば。
そして此奴らの弛んだ性根を叩き起こさねば。
俺だけでも!


ん?
あっ
あらっ
あれえ?
ほぉ・・・



我、気付かぬうちに表情弛緩せり!!!



半田「大熊さんも人の子・・」


・・・むぅ。
・・・・むぅん。
・・・・・なるほど。


わーい!

やっぱり稽古は楽しいのが一番!

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