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高輪築堤をゆるーく見に行く。

2024年12月9日、月曜日。この日は仕事が休みだったので、高輪ゲートウェイ駅のすぐ近くで行われていた高輪築堤の見学会に行ってきました。

高輪築堤ってなに?

高輪にあった築堤のことです。……。あ、待ってください、ブラウザバックしないでください。しかし、実際に文字どおりで現在の東海道本線(山手線・京浜東北線)の高輪ゲートウェイ駅付近に築かれた堤のことなのです。それが再開発に伴って地中から発見され、国指定史跡となり一部が保存されることになりました。

なぜ国指定史跡になったのかというと、1872年(明治5年)に日本最初の鉄道が新橋〜横浜間で開通した際の線路が通っていたのが高輪築堤だからです。つまり、高輪築堤は日本で最初の大規模な鉄道構造物と呼んでいいでしょう。しかも当時は海上に築かれていました。

歴史の授業で「いやなつ(1872)かしい鉄道開通」みたいに語呂で漫然と覚えていたあの日本最初の鉄道が、実は海の上を走る鉄道だったとは。わたしはそこそこ鉄道ファンであると自覚しているのですが、恥ずかしながら知りませんでした。


高輪築堤を見に行こう

山手線の内回り電車を降りて、高輪ゲートウェイ駅のコンコースへ上がります。無人コンビニは健在で、100円のホットコーヒーを買ってふたりで飲みました。

都会の駅だがのどかな雰囲気が漂う

ささづかまとめ
スタバを見上げながら飲む100円のコーヒーは格別ですね」

たかやまさん
駅は空いてるのにスタバは混んでる」

嫌味を言わないと気が済まないわたしたちです。どうかこれからも末長くお付き合いください。

駅名がダサいとか駅名看板のフォントがおかしいとか言われた開業から、4年以上も経ちましたが、駅の中はきれいに保たれています。広くとられた改札内の空間には駅ピアノも置かれていて、実際に演奏している人もいました。

たかやまさん
「んー、つっかえつっかえ、だね」

ささづかまとめ
「つっかえながらの演奏を堂々と披露できるのって、逆にすごいですよね」

たかやまさん
「そんなこと言うとブログ書いてる人、ほとんどみんなブログやめないといけなくなる

ささづかまとめ
「ぐはあっ」

ダメージを受けた後は、改札を出て見学会場に向かって歩きます。駅前では、2つの背の高いビルの工事が大詰めを迎えています。外側はだいたいできあがっていますが、中身はこれからという感じでした。

ビルの1階部分の工事中の様子。天井のパネルを貼る作業が進む
デッキの下を歩く

重機が大活躍しているところにビルの2階部分と駅を直結するデッキが覆い被さっていて、地上の歩道部分は空気が悪いです。空気が霞んでいます。そこを通過して、再開発エリアの品川駅寄りにある見学会場に着きました。たくさんの方が来場しています。

平日なのもあって来場しているのは主に中高年の方たち

会場入口で資料のプリントが手渡され、それを片手に今回見学できないエリアについて解説された掲示、トレンチと呼ばれる発掘現場、出土品、今後のまちづくりと遺構の活用法についての掲示を見ていきました。

きっちりとした見学レポートはどこかのだれかがやってくれているのを探して読んでもらうことにしまして、見学会のメインである発掘現場がこちら。

一番低い部分の壁に引かれている白線が海面の高さなのだそうです。そこから石垣が始まって、すぐに細かい石のゾーンになりますが、これは石垣の後ろに詰めこまれているはずの裏込め石です。裏込め石が露出しているのは、より沖のほうを埋め立てた際に、石垣の石を再利用したためではないかという説があるそうです。

裏込め石の右側の平場が、1872年(明治5年)に開業した新橋〜横浜の線路があった部分です。まさにここを蒸気機関車が走っていたのです。海上を走る蒸気機関車。明治時代初めの人々の目にはどんなふうに映っていたのでしょうか。

会場には港区の教育委員会の職員の方が何人もいらっしゃって、見学者の質問に答えていました。たかやまさんが「あの地層みたいな縞模様はなんですか?」と質問すると、職員のおじさまがうれしそうに答えてくれました。

「あれは明治の終わりにこの築堤を海側へ拡張したときに、材料を変えながら土を入れた跡なんです。全部同じ質の土で盛るとすべりやすくなってしまうのでそれを防ぐための工夫です。これは江戸時代にはすでに確立されていた土木技術なんですよ」

職員のおじさまはそう言って、ほかの見学者の方に解説するため移動していきました。いろんな方向から質問攻めに遭っていて忙しいのです。

ささづかまとめ
「土がすべるってどういう意味なんですか?」

たかやまさん
「説明するの難しい。でも築堤の場合は、崩れるって意味でいい」

ささづかまとめ
「崩れるって言っても石垣でとめてあるんですよね?」

たかやまさん
「あるけど、石垣ごと崩れたり、そもそも地面の土ごと動いちゃう場合もあるから」

石垣の下端部。右から根石、胴木、留め杭で石垣を支えている

ささづかまとめ
「でもああやって縞模様に重ねると防げるんですね?」

たかやまさん
「土の種類が違うと、上からかかる重さとか水分とかに対しての性質も違うから、計算が複雑になって崩壊しにくい、ってことだと思う。海側を高くしてるのもポイントかな」

ささづかまとめ
ふむう?

たかやまさん
ジグザグ打線と同じ」

ささづかまとめ
「へ? ……あ、野球で例えたんですね?」

たかやまさん
毎試合相手投手が青柳なら1番太田賢吾でバントすればいい

ささづかまとめ
「例えの難易度が高すぎてわからないです」

トレンチを見た後は出土品のコーナーも見ました。近世の食器や器が多いですが、それらに混じって汽車土瓶や犬釘が出土するあたりが、さすが鉄道遺構という感じでした。

汽車土瓶のかけら(中央)

今回見学したトレンチは埋め戻されますが、発掘された築堤は一部分が新設される公園内にて展示されると説明されていました。2025年3月末にまちびらきする高輪ゲートウェイシティ。開業して少し経って落ち着いた頃にまた遊びに来てみようと思います。


おまけ

ちなみにこの見学会の後は京浜東北線に乗って東京駅に行って、改札内のトレニアートで鉄道グッズを眺め、中央線に乗って前面展望を楽しみました。東京駅から御茶ノ水駅までの前面展望はなかなか楽しいのです。

反対側のホームから甲府行きの特急かいじ39号が出ていく
すぐに快速列車が入線してきて、わたしたちの乗る列車の発車時刻になった
東京駅出発直後。実質3階の位置にある中央線ホームから、首都高都心環状線と日本橋川の間を通り抜けるために下っていく

高層ビルが整然と立ち並ぶ東京駅から、ごちゃっとした神田に下りていきます。

神田を出ると左にカーブしながら右に秋葉原をビルの隙間から見て、パセラのハニトーの広告、総武線の松住町架道橋(アーチのほう)、万世橋駅の跡地、総武線の神田川橋梁(踏ん張ってるほう)と眺めていくと、お濠の中に列車が停まります。東京が凝縮されているみたいな情報量のある景色で、好きです。

改良工事も佳境の御茶ノ水駅はお茶の水橋口から出ます。お客さんが吹きさらしになる構造のみどりの窓口はだいぶ珍しくなった気がしますが、こちらは将来どうなるのでしょうか。

駅の近くのファミリーマートとサブウェイの複合店舗の前で、たかやまさんが「えっ!」と声を上げます。視線を上げると、たかやまさんが店頭にあるサブウェイの広告を凝視しています。

たかやまさん
「シェフズサンド、か。ああ、びっくりした」

ささづかまとめ
「どうかしたんですか?」

たかやまさん
「一瞬、ジェノサイドに空目しちゃった」

ささづかまとめ
「あはは、それはだいぶ物騒ですね」

たかやまさん
物騒どころじゃない

ささづかまとめ
「上の挟んでるところの余裕がないのが原因ですね」

たかやまさん
「目の端で捉えたときに一瞬そう読めちゃってびっくりした。たまにない? こういうの」

ささづかまとめ
「自転車で走ってるときに、道端のネコがいきなり高速で動いてびっくりしたら、ビニール袋だったっていう経験はあります」

たかやまさん
「それ、疲れてる」


坂を下ってエチオピアの後ろを通り靖国通りを渡って、わたしの大好きな本屋さんである書泉グランデへ。

5階で鉄道グッズを眺めます。たかやまさんは6階(アイドル関連の階)にも遊びに行ってました。

いろいろ断捨離してしまったのでなかなかグッズは買えませんが、代わりにカレンダーを買うことにしました。カレンダーは1年で捨てられるのです! 鉄道系の大きなカレンダーを買うのは実は初めてでした。

鉄道写真のカレンダーと言っても、車両にフォーカスしたもの、鉄道会社や撮影する地域を限定したものなどさまざまあります。平積みされたたくさんのカレンダーたちから「あなたは何鉄?」と問いかけられているような気分です。

今回わたしは季節感を大切にした風景写真的で、列車があまり大きく映っていないカレンダーを買うことにしました。いろいろな表情を見せる日本の国土を列車が健気に走る様子がわたしは好きなのです。

新しいカレンダーの入ったビニール袋を提げ、たかやまさんがかわいい水着について語っているのを半分うわの空で聞きながら地下鉄で帰りました。鉄道で満たされた冬の一日でした。