見出し画像

「The Strategic Case for Democracy Promotion in Asia」に見る現状認識の欠落

Foreign Affairsに掲載されたMICHAEL GREENとDANIEL TWININGの論考「The Strategic Case for Democracy Promotion in Asia」( https://www.foreignaffairs.com/united-states/strategic-case-democracy-promotion-asia )を読んだ。要約すると、「アジアにおいて中国に対抗するため、流行遅れの民主主義を前面に出すのを控える風潮がある。しかし、それは逆効果だ。中国は権威主義国が増えることを望んでおり、その傾向を加速することになる。
韓国、日本といった民主主義が根付いた国々と協力して民主主義を確立することが今こそ必要なのだ」ということを過去の事例などを紹介しながら解説している。

参考にはなるものの、この論考はふたつの大きな問題を無視している。

1.アメリカ自身が分断と不信によって非民主主義的傾向を強めている。国内最大の脅威であるRMVEsへの対処もままならず、悪化するばかりだ。

2.21世紀に入ってから、気候変動、資源・食糧不足、格差の拡大、パンデミック、移民の増加が広がっており、戦争や紛争によって悪化している。ほとんどの国はよほど努力するか運がよくなければ経済を始めとする生活の基本が悪化する状況にある。つまり自動的に社会に不満を持ち、失うものを無くした人々が増産されている。

個人的に思うのはこの2つを抜きにした論考を書く人って、きっと前者のRMVEsが身近におらず、後者の影響をほとんど受けていないのだろう。だから身に染みてわかっていない。
本当は身に染みてわかっている人の方が多いので、たくさん発言すべきだと思うのだけど、そんな機会もないし、発言する方法も知らないし、発言しても聞いてもらえない。

好評発売中!
ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。




本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。