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偽・誤情報ではない情報の方が多いのだから警戒一辺倒ではなく信頼とのバランスを取った対策が必要ということを検証した論文
我々が日頃接する情報のほとんどは偽・誤情報ではないことは数々の調査研究でわかっている。現在行われている偽・誤情報対策は、偽・誤情報を検知し、排除することに焦点を当てており、メディア・リテラシーは人々に情報に対して懐疑的になることを奨励している。しかし、誤った情報を信じることが、信頼できる情報を拒否するよりも有害であるという検証は行われているわけではない。
●概要
この論文「Media literacy tips promoting reliable news improve discernment and enhance trust in traditional media」(Sacha Altay、 Andrea De Angelis、 Emma Hoes、2024年8月14日、 https://doi.org/10.1038/s44271-024-00121-5 )では、アメリカの3,919人を対象に、懐疑的にさせる、信頼させる、両方の組み合わせの3つの方法の効果を実験した。
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その結果、わかったことは下記である。
・3つの方法すべてに真偽の識別能力向上の効果が認められた。信頼させた場合は正しいニュースの共有と信用を促進し、懐疑的にさせた場合は誤ったニュースの共有と信用を防止し、混合ヒントは両方の効果があった。
・被験者に見せる情報の真偽の割合を変えて試したところ、真偽の割合が半々の場合にもっとも効果があった。組み合わせた方法の場合のみ、正しい情報が75%の場合がもっとも効果があった。
・情報に懐疑的にさせるだけでなく、ただしい情報を信用するようにさせることが重要である。現在のような懐疑心を煽るばかりでなく、情報を信用できるようにすることも重要である。
●感想
この論文はかなりきっちりと作られており、事前登録も行っている。
以前、紹介した類似の論文をはじめとして、冒頭に先行する論文を参照する形で、「偽・誤情報は情報の中のわずかな割合を占めるだけに過ぎない」、「偽・誤情報の脅威は誇張されている」という枕詞を書くものが増えてきている。中には下記のように警戒主義に陥ってしまっているためプレバンキングの効果が有意でなくなったというものまである。
警戒主義が広がった結果、プレバンキングは不要になったという論文、 https://note.com/ichi_twnovel/n/n61096fc36583
言い方を変えると、偽・誤情報ははるかに少ない、偽・誤情報の脅威は限定的ということを検証した論文は増え、その認識は共有されつつある、と言ってもよいだろう。
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