独裁者ノート 独裁者が読むべき『アフターデジタル』

これまで何度か言及したように独裁者にデジタルの知識は必須だ。Shoshana Zuboffの『The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power 』(Public_Affairs、2019年1月)は監視資本主義を知るうえでも、その使い方を知るうえでもお勧めなのだが、しかしいかんせん英語だし、長いし、難解である。適当な本がないかと思っていたら、『アフターデジタル』シリーズ(過去に2冊出ている)があった。それでも長いし読むのが面倒という人には下記の著者自身の講演記録が参考になるだろう。

アフターデジタル社会のDXポイントは、世界観づくりと具現化
https://www.sumave.com/20200731_18817/

念のために申し上げておくと、著者はおそらく独裁を否定しているし、監視社会にも否定的である。しかし、著者の言う行動データを使って、粘着度(サービスから離れられない度合い)の高いサービスを提供し、世界観を提案する企業像は、まさにそのものズバリである。この本の企業を政党や独裁者に置き換えると、そのまま応用できる
本書では社会信用システムによって人々が規範ある行動を取るようになり、顧客満足度も向上したとしているが、この仕組みをそのまま独裁者が使えば、政府の言うことに従う反抗しない人々にできることを意味する。そしてそのサービスの粘着度を上げることで、本人の意思で独裁者の意向に沿う行動を取るように誘導できる。企業がこうしたことを実践し都合のよい利用者を育てていることは、Shoshana Zuboffの『The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power 』を始めとして多くの資料で指摘されている。

『アフターデジタル』シリーズは、企業側に立って監視資本主義社会で発展するための処方箋をわかりやすく説いた本であるが、そのまま独裁者のテキストとして読み替えることができる。、Shoshana Zuboffの『The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power 』を始めとする多くの参考書が英文ばかりの中で、貴重な日本語の資料と言えよう。

*資料については過去記事を参照。(「デジタル独裁3種の神器」 、「独裁者は指導者民主主義を目指す」 )

そして『アフターデジタル』シリーズが売れていることは、日本にはこうしたデジタル独裁あるいはデジタル全体主義に対する抵抗が少ないことを示している。

よき独裁者たらんことを!

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一田和樹のメモ帳
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