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偽・誤情報関連アクターのアジェンダ設定パターン メディアの偽・誤情報マッチポンプ・ビジネス?
偽・誤情報関連アクターは根拠なしの言動が多い
偽・誤情報のアクターには、FIMI(海外からの情報干渉、Foreign Information Manipulation and Interference)、SNSプラットフォーム、IBEs(Identity Based Extremists)、政府や当局、専門家、反IBE、メディアなどがある。
これらの関係アクターのFIMI、政府と当局、IBEs、メディア、専門家は根拠なく、自分たちの利益のために偽・誤情報が発生するたびに同じ主張を繰り返す傾向がある。特に情報の少ない初期段階ではほぼそうなっており、事実が明らかになってくるにつれてすりあわせするものの、主たる主張は変化しない。主たる主張とは、SNSプラットフォームの責任、FIMIへの対応である。IBEsや偽・誤情報対策に触れることもある。
しかし、根拠がないため、対策を講じても有効に機能することは期待できない。
FIMIやIBEsにとっては都合がよいので、何度でも同じことを繰り返す理由になる。メディアにとっては偽・誤情報はビジネス上のメリットが大きく、党派を超えているうえ、炎上する可能性も少ない素晴らしいネタなのですぐに飛びつき、自社でファクトチェックまで行う。情報空間への影響力の大きいメディアが根拠のない主張を繰り返している限り、偽・誤情報の実態や影響は広く知られるようになることはなく、有効な対策が講じられる可能性は低い。
メディア報道が誤・偽情報についての誤った認識を刷り込み、メディアビジネスの利益につながったというケンブリッジ大学刊行レポート、 https://note.com/ichi_twnovel/n/nce2f420dd2d7
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中露イランなどのFIMIや極右などのIBEsは偽・誤情報を利用しているが、政府やメディア、専門家も、根拠なし、あるいは危うい根拠に基づいた言動を行うことが多い。危ういというのは、少数の事例に依拠している場合、総合的な優先度や全体像を無視している場合などを指す。これまで欧米、特に専門家であるアメリカのシンクタンクなどの民間企業が行ってきた調査の多くは少数の事例に依拠していることが多い。特定の偽・誤情報について、その内容を分析するものだ。優先度や全体像を無視というのは、少数の事例に依拠することにも通じるが、他に重要なものを見逃している可能性を顧みないことだ。たとえば、多くのメディアの報道では、投稿数や閲覧数をあげることが多いが、全体の投稿数や閲覧数を示すことはない。たとえ100万回閲覧されても、全体の閲覧数が数百億であった場合、ごくわずかの人しか見ていないことになる。これと似たもので「週に1度以上偽・誤情報を見たことがある」という質問は明確に回答を悪用する意図を持っている。なぜなら、1週間に人間が受け取る情報は莫大であり、週に1度、偽・誤情報を見ることが問題になるほどの割合にはなり得ない。アメリカの調査ではアメリカ人の偽・誤情報摂取量は全体のわずか0.15%だった。
根拠なしで発信しても問題にならない理由
理由は簡単で、目立った騒動が起きれば必ず偽・誤情報が発生する。ロシアなどのFIMIはそれらを拡散するし、IBEsも同様に拡散し、場合によってはリアルに騒動を起こす。特に人が死ぬような事件や悲惨な事件の場合は、FIMIやIBEに利用されやすい。
メディアから見た場合、大きな事件で偽・誤情報が発生した時には、FIMIやIBEsの関与を示唆することは間違いにならないことがほとんどで、最初からそう思っていれば裏付けとなる事例はすぐに見つかってニュースにできる。
もちろん、事例はとれてもごくわずかで全体への影響が少ないことも考えられるが、FIMIやIBEsが活動していたのは確かなので誤報にはならない。しかも(理由は不明だが)全体から見た場合の影響力などを考慮していないニュースでも寛容に非難なく消費してもらえる。
たとえば、メディアの多くはトランプ暗殺未遂事件で偽・誤情報が氾濫したかのような報道を行っていた。メディアはこうした場合、後から誤報と言われるのを避けるために、意図的にSNSでの偽・誤情報の拡散がニュースになる時、全体のどれだけの割合を占め、どのような影響が出ているかの説明をしないのが通例だ。全体量に対して偽・誤情報の割合がきわめて少なければ氾濫しているような表現や、それが問題であるという指摘はミスリードになる。しかし、偽・誤情報そのものがあったことは間違っていないので誤報にはならない。
トランプ暗殺未遂事件の後の誤・偽情報騒動 規制すべきはマスメディアの報道だと思う、 https://note.com/ichi_twnovel/n/nc38f5641f379
また、SNSプラットフォームは必ず関わっており、叩いてもたたき返されることのない都合のよいスケープゴートになっているので社会正義の名の下に漏れなく叩ける。
メディアが大きく取り上げれば政府と当局も動かざるを得ないが、(理由は不明だが)根拠がなく具体的なことを言わなくても大丈夫なので、「民主主義への脅威」、「安全保障上のリスク」と言い出すことが多い。
メディアはビジネス上のメリットのために偽・誤情報を拡散する
偽・誤情報はメディアにとって、おいしいネタであるため、すぐに飛びついてニュースにする。欧米のメディアの購読者は知的な富裕層が多く、偽・誤情報への反応がとてもよいのだ。2015年から2023年にかけてニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、USAトゥデイ、AP通信の見出しを調査した結果、移民と失業に次いで3番目に多く取り上げれたのが偽・誤情報だった。偽・誤情報は一貫して読者から高い関心を持たれており、党派を超えてアピールし、広告主との間で問題が起きることもない。しかも無尽蔵に湧いてくる。メディアからすると貴重な金のなる木なのだ。欧米各紙がファクトチェックに乗り出しているのも当然だ。そして、偽・誤情報を扱う時のテーマはSNSプラットフォームの責任が圧倒的に多い。偽・誤情報のテーマに必ず関係し、叩いても大丈夫だからだろう。
メディアに報道させて拡散することがFIMIやIBEsにとって重要であることは言うまでもない。
ファクトチェック、リテラシー、メディア報道には効果があるが、マイナスの副作用の方が大きい可能性 nature論文、 https://note.com/ichi_twnovel/n/n9946fcf4369f
偽情報への注意喚起や報道が民主主義を衰退させる=警戒主義者のリスク、 https://note.com/ichi_twnovel/n/n02d7e7230e8b
情報エコシステムの中での誤・偽情報の重要性を、2016年1月から3年間のメディア消費データから検証した論文、 https://note.com/ichi_twnovel/n/n45aedb12dedd
専門家もあてにならない
トランプ暗殺未遂事件が起きた時、専門機関のいくつかはロシアが偽情報を仕掛けてきているという速報を出した。確かにロシアは偽・誤情報を拡散していた。しかし、それはどんな場合でも行うことであり、特別なオペレーションでなければ警戒するほどのことはない。この分野で有名なデジタルフォレンジック・リサーチラボは事件後の2024年7月18日に、ロシアの干渉の可能性を示唆する記事を出したが、そこにはあまり根拠となる定量的な裏付けはなかった。続報がないことから、自身でフライングだったことに気がついたのだろう。
多くの専門家、特に安全保障系のシンクタンクはFIMIを重要視する。それは実態として多かったり、脅威だったりすること以上に、クライアントとの関係において重要だからだろう。
一気に世界各国にリーチできる環境
FIMIから見た場合、根拠のないアジェンダ設定は機能しており、一気に世界中に報道され、各国にリーチ出来る環境となっている。
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