Missingシリーズ / 甲田学人
懐かしいと思う方も多いだろう。Missingシリーズといえば美麗な挿絵とその精密で凄惨なホラー描写で人気になった、当時はライトノベルの先駆けだった。現在新装版が刊行されており、かつて青春を彩ったシリーズを買い直している。
Missingと出会ったのはライトノベルというのが流行りだした矢先だった。それまではギャグテイストのものが多く、あまり手を出していなかったレーベルだったのだけれど、その美麗な表紙に惹かれて買ったのが運の尽き。
ホラーが苦手だった私は震えながら夜を過ごしたのを未だに鮮明に覚えている。じつは未だにクローゼットが半開きだと泣きそうになる。
Missingを読むのは必ず朝の読書の時間と定めていたのだけれど、朝の読書の時間というのは学校の取り組みだったわけで、学校ホラーを白昼とはいえ学校で読むそのチャレンジ精神には驚くばかりだ。秋にさしかかった窓硝子の反射も、美術室も、廊下も階段もトイレもとても怖かった。
大人になると鈍くなるというのは本当なのだろうか。鈍くなったと言うより、いろいろ見聞きするウチに慣れてしまったというのだろうか。いずれにしろ、あの頃の感性はどうやら今の私にはないらしい。おかげで、今は震えずに平常心で新装版を読むことが出来ている。良いのだか、悪いのだか。
舞台が学校ということもあり、学校からずいぶん離れて仕舞った大人には、元からあまり怖くないのかもしれない。良くも悪くも学校という舞台は異質で独特で、その時にしか味わえない恐怖も確かに合ったのだなあと思う。
舞台は寮のある趣ある学校ということで、今読むとなおさらファンタジー感も感じる。そのファンタジー度合いも良いあんばいなのだけれどね。
今読むと登場人物たちがみな初々しい。高校生にしてはひねくれていると思ってしまうのは、大人になって長すぎるからだろうか。高校生がどんなことを考えていて、どう生きているかなんて、今は想像するしかできないからそう思うのだろうか。
今は今で初々しい彼らの道筋を思い出しながら読むのが楽しい。結末はというと実はあまり覚えていなくて、読み直しながら「このエピソードMissingだったんだ」などと思う有様である。あんなに繰り返し読んでは怯えていたというのに、年月というものはあっという間に過去を置いていくものだけれど、改めて読み直せるという点では悪くもない。
新装版刊行も11月末で最終刊が出ることになったそうだ。最後まで追いかけ直せるのも大人の醍醐味である。