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柴田巌「未来をつくる大学経営戦略」

・本書は、経営のプロフェッショナルとして、民事再生企業の再建や、料理宅配の先駆けとなる会社の経営者として黒字化に導き、教育界においても、インターナショナルの経営に参画し
、日本最大規模の国際バカロレア認定校へ成長させるなど、幼小中高の一貫校を通じて世界標準の教育の国内普及に努めるなどのキャリアがあり、現在は、これまでに培った経験を基に、インターナショナルや企業研修、オンライン大学・大学院(MBA)など多様な教育サービスを提供する著者が、日本で大学や高等教育機関に携わる方々に対し、著者が考える危機感や問題意識を届け、解決案の提案や、著者の実践した経験から得たヒントを中心に紹介した1冊。

・いま、日本の大学に押し寄せる克服すべき課題に、
①過当競争
②ビジネスモデルの弱さ
③教育コンテンツの国際的競争力の低さ
の3つが本書で挙げられている。
・①においては、
◇少子高齢化
◇都市一極集中
◇学生の減少
が背景にある。
・日本では少子高齢化が進み、今後数十年にわたって18歳人口が減っていくことが明らかになっている。
(第一次ベビーブーム(1947〜1949)の出生数が、約270万人に対し、2022年の出生数が約77万人と、出生数が統計史上初の80万人割れを記録した)
・その一方で、国内の大学数は2022年に過去最多の807校にまで増加した。従来の大学や高等機関を産業として見た場合、他の産業ほど収支構造を柔軟に変えることはできない。
・すでに始まっている過当競争はますます激しさを増していくだろうと著者は推測する。
※①〜③の詳細については、本書をお読みください。

・大学のミッションとは、
①高度な教育を提供すること
②深い研究によって新しい発明や発見をして、それをもとに地球全体の未来に価値をもたらしていく
の2つであり、これからも変わることのない柱であると著者は語る。
・ただし、これらの解釈は時代に合わせて変えていくべきものであり、著者は教育機関としての大学を"稼ぐ力や人格を形成する場所"であるべきだと考えている。
・日本がグローバルで戦うには、10年後20年後を見据えて、若い研究者に興味を持ってもらい、なおかつ日本や世界にインパクトを与えられるような研究ができる環境をつくっておかなければならず、そのためには十分に練られた戦略が必要である。
・さらに必要なのが、研究に費やせる潤沢な資金である。いまの日本は研究開発への政府による投資が相対的に少ない国になっている。
・それでもグローバルに打って出ていくためには、政府の補助金に頼るのではなく、だいがくが自ら「稼ぐ力」をつけなければならない。
・その「稼ぐ力」の1つが、教育機関としての良質なサービスの提供である。「蓄積した知見が授業に生かされれば学生が集まり、学生が集まればよりよい研究につながる」という好循環が生まれるため、これまで以上に双方が一体の関係になっていくと考えられる。
※「答えのない時代」に大学は何を教えるべきか、学位よりも、何が重視されるのかなど、大学の存在意義について著者の考えが述べられているが、詳細は本書をお読みください。

・本書は、「なぜ大学改革が喫緊の課題なのか」「大学の生き残り戦略」「Aoba-BBTが提示する未来の大学像」「大学変革のフロントランナーとの議論」という章で構成されており、
◇コロナ禍を経て顕在化した学生のニーズとは
◇価値の高い教員を確保し、質の高い授業を提供し、大学の人気を高めるにはどうすればいいか
◇「世界で活躍するグローバルリーダーの育成」をミッションとする「Aoba-BBT」の事例
◇「東京大学大学院教授」「大阪公立大学学長」「近畿大学経営戦略本部長」「昭和女子大学総長」という大学変革に取り組む4名の方々と著者の対談
といったこれからの大学経営の未来につながる内容が収録されている。

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