太田康夫「漂流する資本主義 新たなパラダイムを求めて 現代資本主義全史 」
・本書は、主に内外のマクロ経済、金融経済政策、金融制度、銀行経営を主催しているジャーナリストの著者が、資本主義の盛衰を深く観察し、そこからさまざまな資本主義を実現しようとする動きの推移をまとめた1冊。
資本主義は、広辞苑によると「あらゆる生産手段と生活資料とを資本として所有する有産階級(資本家階級)が、自己の労働力以外に売る物を持たぬ無産階級(労働者階級)から労働力を商品として買い、それの価値と、それを使用して生産した商品の価値との差額(剰余価値)を利益として手に入れる経済の様式を指す」と定義される。
・それは、生産手段の私的所有を認め、生産や価格、賃金は国による計画ではなく、市場によって決められるという経済システムで、私有財産、利益動機、市場競争などの考え方が基礎になる。
・資本主義の芽生えに関して、比較的古くから議論されてきたのが、商業資本主義の考え方である。
・初期の商業資本主義は9世紀のイスラムで発達し、中世ヨーロッパでは12世紀ごろから始まったとしている。
※商業資本主義の時代は18世紀末から19世紀初めにかけて終わりを迎え、産業資本主義にとって代わられたが、その間にどんな産業が活発になり、何が誕生したのかについて述べられているが、詳細は本書をお読みください。
・1990年代半ばから日本は日本型資本主義からアングロサクソン資本主義(米国・英国で典型的にみられる資本主義の形態)への転換を図った。これにより、日本型資本主義を修正し、経済の活性化を目指したが、成長を目指すはずのアングロサクソン資本主義は日本ではうまく機能せず、国内総生産(GDP)は30年間ほとんど伸びない「失われた30年」が現出した。
・うまくいかなかった一因に、市場経済の中核である金融市場で、長きにわたり金利をゼロ近傍に抑える「ゼロ金利政策」と呼ばれる金融政策が取られ、金利機能が封じられたことがある。
・実際、ゼロ金利政策の恒常化が、経済に与えた打撃は大きい。まず、金利の機能が封殺され、経営悪化企業に超低金利で賃金を供給し続けたため、復活の可能性はないが、潰れないで存続するゾンビ起業が増えた可能性が高い。
・企業の新陳代謝を妨げることで、アングロサクソン資本主義で成長を促す仕組みを殺してしまったのだ。
※その他に、ゼロ金利政策の恒常化が経済に与えた打撃、失敗して行き着いた先に何が待っていたのかについての詳細は本書をお読みください。
・本書は、「資本主義の時代」「モデルチェンジに失敗した日本」「株式資本主義の盛衰」「新しい資本主義の模索」「不都合な真実」という章で構成されており、
◇「アグラリアン資本主義」「商業資本主義」「産業資本主義」といったこれまでの資本主義の概要
◇アベノミクスの罪 資本主義転換の迷走
◇〇〇優先がもたらした環境悪化
◇「ステークホルダー資本主義」「インクルーシブ資本主義」「グリーン資本主義」といった新しい資本主義の概要
といった資本主義の誕生から現時点での資本主義の評価について探るなど、さまざまな動きの推移をまとめた内容となっている。
資本主義を通じて、さまざまな時代や国々の社会や経済について考察されたい方はご一読ください。
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