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南知宏「グローバル企業のための新日本型人材マネジメントのすすめ」

・本書は、日本と東南アジア各国での人事制度や設計や人事機能強化、人材の現地化に向けた組織・後継者計画設計などに関する豊富な経験を有し、タイを拠点にASEAN全域の日系企業への組織・人事コンサルティングを担当した経験を持つ著者が、これまでの「日本型雇用慣行」を分解・分析し、継承するべき部分を明確にするとともに、これからの企業経営に合った「新日本型人材マネジメント」として人事戦略から人事制度、運用までを新しいモデルとして提唱した1冊。

・現地人材の育成に関する課題は、日系企業が海外進出に本格的に取り組み出した1970年代以降、海外事業の拡大と比例して、存在感を増してきた。
・一口に現地人材の育成強化と言っても、その背景は企業によって異なるが、著者がさまざまな現地法人の経営層と話していると、
①経営の効率化
②現地市場の開拓
③日本人なしでの現地運営へのシフト
という大きく分けて3つの背景があり、それぞれに応じた取り組みをしてきたことがわかった。
・①の「経営の効率化」は、
◇日本人出向者の人件費が大きく、現法経営が逼迫する
◇増加する現地法人の数に対して、現法経営を任せられる日本人の数が追いつかない
といった総額人件費やグループ全体での人材運用の観点から、現地人材の育成を強化したケースである。つまり、現地法人は現地人材で運営できるように、というわけである。
・海外事業を拡大し始めた1970年代から現在まで、多くの企業が現地人材の育成強化を試みてきたが、安定的に成果を出し続けている現地法人は非常に限定的なのだ。
・海外展開といっても、当初は、現地にすでに存在する日系企業を対象としたビジネスを行うところが大半だった。ところが、アジア通過危機の影響が沈静化した2000年代以降、特に現地企業の成長が著しいアジアにおいて、建設業や小売業といった、日経企業がメインターゲットとしてきた現地の日系企業の成長が鈍化し始めた。
・その結果、現地企業が成長をけん引する現地市場へも出て行かねばならない状況となってきたのだ。
・そのような背景から、現地市場を早期に開拓すべく、現地事情を熟知し、現地ネットワークを豊富に持つ現地人材の確保が急務となり、営業戦略の観点からも、現地人材の育成強化の必要性が生まれてきたわけだ。
※2020年のCovid-19のパンデミック以降の現地市場はどのように変化していったのか、現地人材の現在についても述べられているが、詳細は本書をお読みください。

・本書は、「海外現地法人が陥りやすい人材マネジメントの落とし穴と対策」「あるべきグローバル人材マネジメント」という2部構成となっており、
◇海外現地法人で、何が起こっているのか?
◇ケース(人材育成・要因人件費・人事運用・労務管理)に見る現地法人人材マネジメントの課題と対処法
◇日本型人材マネジメントの変還
◇日本式雇用慣行を分析する(何を捨てるか?何を受け継ぐか?)
など、足元の課題解決→過去の日本型人材マネジメントの分解・分析→新日本型人材マネジメントの定義、という3つのステップを通じて、海外の現地法人で起こり得る人事的な課題について実例を使って紐解き、それらに対して想定される打ち手を紹介し、目指す姿へ一歩踏み出せるところまでカバーした内容となっている。

戦略人事のコンサルティングのプロが、理論と実践の両面から解説しています。「現地法人でうまくいっていない」という方は参考になりますので、ご一読ください。

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