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ハウステンボス歌劇団:「幸せなめぐり逢い」

ハウステンボス歌劇団、チームフラワーさんの「めぐり逢い ~心を繋ぐミュージック~」
芸術を愛するすべての人に観てほしい、そんな作品でした。

「あなたのファンより」

この作品のヒロインであるカトリーヌの元へ、ある時から「あなたのファンより」とだけ書かれた手紙と共に、音楽を学ぶための支援金が届くようになります。この作品はさまざまな形で音楽やバレエという舞台芸術への敬意と、それを支援する人々の熱い情熱について描いています。
芸術を志す人とそれを支援する人、そしてそれを演じる人とそれをまた観る人と。「あなたのファンより」という言葉はわたしたち皆のものだと、そう思いました。役替わり、新人公演を経て10月6日に大千秋楽を迎えます。以下、作品の本筋に触れる内容になりますのでぜひ現地で観てから読んでいただけると嬉しいです。

熱く支援するという心

紫城けいさん演じる本作の主人公フランソワは一見やんちゃな印象の貴族の青年です。変装して出掛けては陽気に遊び回っている様子ですが、意外と繊細なキャラクターがとても可愛らしいです。彼はカトリーヌと出会い彼女の夢を一心に応援します。その健気さ、ストレートな言葉に思わず胸をうたれます。
もうひとりの主人公、愛那月ひかるさん演じるクリストファーは作曲家として大成しつつある人気者です。しかし彼は壮絶な過去に苦悩し続けています。自分の過去と向き合い続けるクリストファーさんの誠実さ、勝手ながら愛那月さんの真面目なお人柄がにじみ出ているようにも感じました。音楽家としての活動を続けながらカトリーヌに資金援助をすることを決めたクリストファーさんですが、その側にもまた長年彼を支え続けたソフィアさんの姿がありました。
複数の視点で芸術家と、彼らを支援する人が描かれているこの作品ですが、中でも個人的に印象に残ったのはソフィアさんです。クリストファーさんを献身的に支える女性として登場しますが、従順な人というわけではなく自分自身も情熱家であるようにうかがえます。しかもかなりの「しごでき」です。善い行動に喜び、良い結末を信じて情熱的に相手を支援する人。メインキャラクターの4人が歌う場面ではひとり祈る仕草をしているのが印象的でした。「あなたの決めたことに着いていくわ」という言葉をかけているのも、彼が正しい道を選択できるように常に見守ってきたという自負があるのかな、なんて推察してみます。演じる人によって最も印象が変わったキャラクターでもあるので、またその感想もどこかで書いてみたいです。

パリの雑踏が美しく

この作品は芸術の街パリが舞台になっていますが、オープニングから華やかに街の人々が登場します。劇団生さんの動きも衣装も照明で映されたパリの街並みも素晴らしく、始まりからまったく違和感なく想像の世界を広げてくれました。(この街の人達がクライマックスのある場面で再登場します。今度は壁のように、まるで顔のない人たちとして出てきますが、この雑踏の表現があまりにも胸熱演出でかっこいい!さらにそれをかき分けた先に現れる駅舎の表現も素晴らしかったです。)
パリの人々は皆芸術に興味津々で、中にはバレリーナや作曲家志望の若者もいるようです。そんな芸術の道を志す若者の姿は劇団生さんに重なるようでした。それゆえにバレエの練習シーン、歌のオーディションのシーン、王立劇場で本番の舞台に立つシーンはいずれも見ている側も息を止めてしまうほどの緊張感です。歌もバレエもプロの技を贅沢に見せていただいているといった感じで、個人的には追加料金を払いたいくらい…。ひとつ驚いたのは作曲家見習いのアランくん、伴奏を担当しているのですが、これが実際に弾いているようにしか見えないのです。もちろん実際に弾いているわけではないと思うのですが、音と合うように運指も考えられているのだとしたら細部へのこだわりがすごいです。他にもバレリーナの練習風景はまるでドガの絵画のような美しさで、劇団生の皆さんもこんな風に練習を積まれてきたんだろうなと想像していました。

心を繋ぐミュージック

ミュージックとタイトルに入っているだけあって、音楽劇といえるほど劇中歌が盛りだくさんです。さらに、お芝居が終わってからのショーも含めて同じメロディが何度か登場します。劇中で愛された音楽のようにこの作品が千秋楽を終えてもたくさんの人に愛され続けますよう。さらには気が早いようですかいつか再演していただけたらなあ…なんて思っています。

さて、最後まで読んでくださった方がもしいらっしゃるならありがとうございます。何度も観劇させていただきましたが、観る度に味わい深いこの作品の素晴らしさを少しでも感じていただけたなら嬉しいです。

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