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ボイスドラマ視聴紀行「個性派」編
今年の9月下旬からスタートしたボイスドラマ紹介企画「市川智彦のボイスドラマ視聴紀行」のご閲覧、本当にありがとうございました。
年末年始の新規紹介はいったんお休みしまして、前回に引き続き「年末年始もボイスドラマで楽しめる!」といった主旨の「総集編」をご用意させていただきます!
なお、今回が年内最後の更新となります。拙筆で年末年始を充実したボイスドラマ三昧でお過ごしくださいませ!
以下、文章表現の都合上、敬称略とさせていただく箇所が存在します。あらかじめご了承の上、本記事をお楽しみください。
また、ボイスドラマを視聴・聴取した上で感想を書き進めるスタイルのため、あえて備考やクレジットを見ずに執筆している場合もございます。
▼今回は「個性派特集」をお届け!
紹介記事執筆の初年を振り返る更新といたしまして、ラストは「個性派」を総集編としてピックアップします!
尖りに尖った作風でありながらも、誰にでも聞きやすい。そして完成度も高い……市川智彦が「これは秀逸だ!」と感じた作品の数々を改めてご紹介させてください。
とはいえ、気軽に聞けば「フツーに聞いて楽しかった」とか、マジメに聞けば「これはテーマ性の強い作品だ……」とか、いろんな感想を抱くだけの話です。
しかし、制作において「いかに複雑なテーマやメッセージであろうとも、聞き手にはシンプルで的確に感じさせる」というのは非常に難しいことなのです。特にボイスドラマは聴覚のみで伝える必要があるので、難易度は最高かもしれません。
そんな難しさや逆境を跳ね除けて作り上げた素晴らしいボイスドラマに出会えたことが、私にとっては大きな転機となりました。
それと同時に、自分の中である種の諦めや限界も感じたのも事実です。それだけの素晴らしさを誇る作品を「個性派」と呼ぶのは、どこか申し訳なさもあるのですが、今回はこのまま書き進めたいと思います。
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■グレート・オッド・ワン
とにかく最初に、本企画「ボイスドラマ視聴紀行 #09」にてご紹介させていただいた、箱舟壱座さんが企画されたボイスドラマ『ラジオドラマ『グレート・オッド・ワン』』を取り上げたいと思います!
箱舟壱座さんの中でも、特に人気のある作品として有名です。
全5話はオムニバス形式でありながらも、共通のテーマや世界観で括られており、徐々に聞き進めていくとその味わいが深まる不思議な魅力を持った作品となっています。
制作者のNoah Revさんの感性がミラーボールのように輝き散らかす全5話ではあるのですが、その裏に隠された緻密な設定との塩梅が本当に絶妙です。これはオンリーワンな作品であり、多くの支持を集めているのにも納得できます。
また、箱舟壱座としての結束力も随一で、今の段階でこれ以上に強い絆を持ったチームは見たことがありません。素晴らしい制作陣には、素晴らしい声優陣が集うことを痛感させられました。
ここに集いし声優陣の中でも、特にご紹介したいのが……
Scene1に登場する男女のカップル・エチゼン(CV:韮山蒼太)とカミクラ(CV:小湊ミチル)は、絶対に外せません。先に言っときますが、ビックリするので覚悟しといてください。
Scene3は物語の分岐点でもある重要な役目を担っているのですが、クロヤマ(CV:mochimiyu)とアカガミ(CV:Mira)、そしてトゲっち(CV:穂月)の温度差(!)にも注目です!
Scene4のケンザキ(CV:てん)と通称・ユニたん(CV:田中)の軽妙な掛け合いも楽しいので、ここも見所のひとつと言えます。
あなたが「グレオワ」を聞き始め、この世界の秘密に触れた時、この作品の真の奥深さを知ることになるでしょう。
年末年始、特に年始の初笑いには持ってこいの超名作「グレート・オッド・ワン」はお聞き逃しのないよう!
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■みんな田中
続いて、本企画「ボイスドラマ視聴紀行 #13」にてご紹介させていただいた、にくじゃが【ボイスノベル】さんが企画されたボイスドラマ『みんな田中【ボイスノベル】【SFヒューマンドラマ】』を取り上げます。
本作は、まさに「喜怒哀楽のベストブレンドを形作った稀有にして珠玉の作品」です。
初手から聞く者すべてに等しく衝撃を与えながらも、最後にはしっかりと我々に明確なメッセージを受け取らせ、我々の感想を画一化させていく……こんな強引で、あまりにも強烈なボイスドラマは他にありませんよ!
それなのに、ストーリーは静かに流れていく。粛々と進行する物語の中においても、決定的な場面を迎えた瞬間、聴取者は冷水を浴びせられたかのようにハッとさせられるのです。
これはひとえに、脚本を担当された佐藤ユウさんのズバ抜けた才能から生み出した発想が具現化した作品です。
それに加え、編集を担当している可糖さんもまたその意図をよく理解しており、自分なりの味付けでボイスドラマを仕上げています。まさに素晴らしい制作陣……にくじゃがさんもまた、強固なチームだと私は思っています。
本作は主人公である工藤(CV:ながゆー)という女子高校生の視点で描かれますが、タイトルにもある田中(CV::冬衣)も登場します。
むしろ、冬衣さんの熱演が凄まじいです。フツーに聞いたら気付かないと思いますが、聞き慣れた人ならビックリするくらい頑張ってるのに気付けます。
ここまで話したことが、ある意味で「みんな田中」の全てです。
私はここ数日間、総集編を書いていますが……初めて「言葉では説明のしようがない!」と感じています。そんなに長い作品ではありませんので、ぜひ一度「みんな田中」をご賞味あれ!
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■突っ張って見えるが、メッキが剥がれると打たれ弱い
最後にご紹介するのは、本企画「ボイスドラマ視聴紀行 #15」にてご紹介させていただいた、やまさんさんが企画されたボイスドラマ『突っ張って見えるが、メッキが剥がれると打たれ弱い』になります。
本作は、トータルで見た上で「独特な個性を放つ作品」と呼べます。
聴取の途中で物語に対しての難解さを感じたり、ある種の戸惑いを受けてしまう部分が少なからず存在しますが、それらは全て計算ずくです。
むしろ、そういった疑問にも似た感情を持ったまま、聴取を続けていくことで、徐々にクリアーになっていき、一気に解像度が上がるという珍しい構成のボイスドラマになっています。
制作者のやまさんは、あるテーマを掲げてのボイスドラマを制作しており、ある意味で一筋縄ではいかない作品をいくつも輩出しておられます。
制作陣というのは、物語の登場人物に対して「いくつかの可能性を用意して、その中からテーマやメッセージに沿った選択をさせる」という手法を取ることがあります。これはあくまで、制作における一般論です。
これに当てはめるのなら、やまさんは一体どうするか?
やまさんは、ある種「理外の発想を主要人物に与える」ことによって、あえて「危険な化学反応が起きないか?」を探り続けているように思えます。ボイスドラマ制作におけるサイエンティストが、やまさんという制作者の本質なのだと、私のイメージとして強く残っています。
そんな脚本に立ち向かう声優陣もまた逞しい!
主人公で演劇部の3年生・桐島由美子(CV:田中)を主軸とし、部員の伊藤麻理(CV:パンナコッタ)、謎の存在・ハコ(CV:是枝留)が縦横無尽に動くことで、物語は予想だにしないクライマックスへと進んでいくことになるのです。
これぞ「個性派」と呼べる一味も二味も違う本作も、ぜひ年末年始のこの機会にお楽しみください!
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▼全4回の総集編、年内更新はひとまず終了!
今回の更新で「総集編」の更新は、ひとまず終了とさせていただきます。
年末のご挨拶は別途行うかもしれませんので、その際は改めて更新しますので、あんまり期待せずにお待ちください!
年末年始で余裕のある時に、ぜひ市川智彦の紹介記事を読んだ上で、個性爆発のボイスドラマをご堪能くださいませ!
■クレジット(敬称略・リンクあり)
▼グレート・オッド・ワン
▢キャスト
〇Scene1
コーモト:おーたむ
エチゼン:韮山蒼太
カミクラ:小湊ミチル
ボス :中村宏平
〇Scene2
トオノ:焔屋稀丹
コイズミ:大森ショージ
CMの声1:黒真鳴入
CMの声2:望月なつ
構成作家 :Noah Rev(箱舟壱座)
〇Scene3
アカガミ:Mira
トゲっち:穂月
クロヤマ:mochimiyu
カーナビ音声:田中
ラジオの声1:焔屋稀丹
ラジオの声2:大森ショージ
〇Scene4
ケンザキ:てん
ユニたん:田中
ソデイ:武川楓
マサダ:相羽みあ
〇Scene5
シイバ:ミンク
サラブ:茶祖
ラグドル:らっど。
エリマネ:折原幸平
▢スタッフ
脚本/演出:Noah Rev(箱舟壱座)
音声編集:Noah Rev(箱舟壱座)
映像制作:Noah Rev(箱舟壱座)
テーマ曲制作:ロンゲスト
▼みんな田中
▢キャスト
工藤:ながゆー
田中:冬衣
駒田:よね
先生:とみー
飯岡:佐藤ユウ
上野:ありみ
甲斐田:可糖
▢スタッフ
音声編集:可糖
脚本/イラスト/映像編集:佐藤ユウ
▼突っ張って見えるが、メッキが剥がれると打たれ弱い
▢キャスト
桐島由美子:田中
伊藤麻理:パンナコッタ
水野翔樹:佐倉亮
ハコ:是枝留
桐島智:井之上賢
桐島こずえ:円海アルト
桐島さえ子:水沢とおる
顧問:中村宏平
女子生徒A:しのぶ
女子生徒B:ゆっこ
女子生徒C:いろみず
女子生徒D:望月なつ
女子生徒E:月宮はる
女子生徒F:青木玖璃子
職人:るぅ@おすいもの
▢スタッフ
原作・編集:やまさん
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