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黒沢清『蛇の道』

黒沢清初のセルフリメイク作品と言うことで、オリジナルが大好きな身としては、オリジナルと比べてしまって楽しめなかったらどうしようと、いささかの不安を抱えつつの鑑賞になったけれど、そんな杞憂は始まってすぐに消し飛んだ。

柴咲コウ起用はその眼に惹かれたからだと黒沢清は述べているけれど、まさに、観終えて柴咲コウの眼が、強く印象に残る。

そしてもう一つ、パンフレットで蓮實重彦が指摘しているように*1、柴咲コウのデニムパンツと革のシューズが、何ともスタイリッシュで忘れ難い。

パリの街並みの華やかさや、ヨーロッパらしい深い緑の森の景色、オリジナルから舞台をパリに移して、いかにも映画らしい奥行きのある映像を作り出している点も見逃せない。

オリジナルの荒々しい魅力も良いけれど、いろんな意味で深みと成熟を増したリメイク作品となっていて、黒沢清の充実ぶりをたっぷり楽しめる傑作。

*1 『柴咲コウは誇らしげに靴音を響かせながら、男どもをひたすら睥睨する』(映画パンフレット所収)
ちなみに蓮實氏はこの論考の中で柴咲コウが“パンタロン”を履いていると繰り返している。パンタロンなんて履いてなかったよな?と思ったけれど、“パンタロン”がフランスでは、長いパンツ一般を指すことは知らなかった…

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