乙川優三郎『クニオ・バンプルーセン』

一人の編集者の半生に寄せて、日本文学の美しさを高らかに謳い上げた傑作。

磨きに磨いた文章、極限まで贅を削ぎ落とした言葉で紡がれる物語は驚くほど豊穣で、読みながら何度も涙し心打たれる。

いつもの乙川優三郎ワールド全開で、充実した読後感。

しかしながら…以下は、穿ちすぎだったなと後年笑い飛ばせることを願って記すけれど、作中に充ちる死の気配の濃厚さが、気にかかる。

新潮社の『波』に寄せた一文も、どうにも引っかかってしまう。

これが最後の本になるかもしれないという思いから、今回は本作りに参加させてもらった。

https://ebook.shinchosha.co.jp/nami/202311_05/

乙川さんの健康状態が何か脅かされていたりしないことを、切に祈る。

毎作ごとに到達点の高さを更新し続けているこの作家の、次作をジリジリとした思いで待つ。

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