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竹西寛子『式子内親王 永福門院』

“人間を超えるものの認識なしにこうした歌が読めるであろうか”。式子内親王の3つの「百首歌」、少ない贈答歌などへの細やかな考察を通し、詩人の特性、女として人としての成長、歌境・表現の深化・醇化を「思うままの作品鑑賞」で綴る。三十一文字に自己の心と想念を添わせ、独創的な視点と豊かな感性で展開する「式子内親王」「永福門院」「いま一章、和歌について」を収録した名評論集。平林たい子賞受賞作。

式子内親王(1149 〜 1201、後白河院の皇女)と永福門院(1271 〜 1342、伏見天皇の皇后)二人の女性歌人の人生を、それぞれの歌を通して立ち上げてゆく試み。

単に和歌を鑑賞するというようなものではなくて、詩歌を読むという行為を通して、ここまで凄まじく詠み手の心の奥底にまで迫っていけるものなのかと、圧倒される。

とくに式子内親王のほうが竹西寛子さんの思い入れは強いのか、細やかにしかし大胆に、言葉を掬い取ってその奥に揺れる式子内親王その人の像を描き出そうというその熱意に引きずられるようにページをめくる。

和歌の鑑賞というと静的なものをイメージしていたけれど、激しく滾るような文章でした。

とは言え、理智的で端正な佇まいを崩すことはなく、本当に素晴らしい評論集でした。

竹西寛子さん、これからもっと読んでいこうと思います。

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