森有正『バビロンの流れのほとりにて』
「バビロンの流れのほとりにて」「流れのほとりにて」「城門のかたわらにて」の3作が収められている。
パリで暮らした十年の、著者の思索の記録。
一番楽しめたのは「バビロンの…」スペインやイタリア、ドイツなど各地を旅して、歴史や美術について考察するのがすごく面白い。
次第に著者の意識は、歴史や美術作品など外部の存在から、自己自身の内面へと深く沈んでいく。自省的、内省的、哲学的な記述が主となってくると、なかなか歯が立たない。
でも著者の真摯な思索は変わらないので、最後まで緊張感持って読み進められた。
また読み返すと思う、一度目を通して終わり、というような作品ではない。
次に読むときはどういったところに自分が共振するのかと楽しみ。