『リャマサーレス短篇集』木村榮一訳

何カ月も、何年も過ぎていったが、明日という日はやってこなかった――。スペイン語圏文学の名作『黄色い雨』の著者による集大成となる自選短篇集。

都市で、田舎で、辺境で、刻一刻と奪われ、それでも生きて、滅びてゆく人々の詩情――
世界の片隅への愛と共感が魂を震わせる珠玉の21篇。

『黄色い雨』『狼たちの月』という2つの長編に痺れて読んでみた短篇集。

読み始めてまず、Amazonのユーザレビューにもあるように、長編のイメージとは少しいやかなり異なるテイストにやや面喰らう。

静謐な美しさが文章から立ち昇ってくる長編とは違って、皮肉と風刺に満ちた捻りのある短篇たち。

巧いのは巧いんだけれども、そういうのを読みたかったんじゃないなぁ、と思いつつ読み進めると、半ば辺りからリャマサーレス的な美学が滲み出るようになってくる。

それらの作品にはやはり死の影が濃厚で、生と死のあわいで藻掻く人間の虚しさを描いてこそ、この作家の真骨頂と言える。

というわけで後半は満足度が高いのだけれども、それでもやはり物足りなさが残る。端的に言って短いのが物足りない。もっと濃く長い作品を読みたい。そんな想いが募る。

リャマサーレスは本質的には長編作家なんじゃなかろうか?という思いを抱いた。

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