『フジモリ式建築入門』藤森照信

建築物は、どこにでもある身近なものだが、改めて「建築とは何か?」と考えてみるとこれがムズカシイ。ヨーロッパと日本の建築史をひもときながらその本質に迫る本。

『代表作でわかる世界の建築史入門』で整理した西洋建築史の流れを、藤森照信氏がより深く、独特の史観でもって語る。偶然だけれども良い流れの読書となりました。

藤森氏の著作は何冊か読んでいて、正直少し苦手なテイスト(内容ではなく文体や表現が)なのだけれど、この本も例に漏れずちょいちょい引っかかりながらも、内容は頗る付きに面白く一気読み。

オリエント文明からゴシックまでを最初のターン、ルネサンスからロココまでを2回目のターンと観る独特の歴史把握で、より西洋建築史のダイナミズムがビビッドに感じられます。

『代表作でわかる…』ではバロックの余波、くらいのイメージだったロココも、2度目の大きな区切りとしての存在とされ、ゴシックとのある種の類似性が指摘されてみると、なるほどと納得する。

ところどころに建築家らしいチップスやトリビアも織り交ぜつつ、図録よりも言葉で建築を魅力的に伝えてみせるのは流石。

最終章の日本の民家の歴史は、西洋建築史に比べてボリュームも少なく記述もやや駆け足、また西洋建築史も近代以降は触れられず、それだけで一冊が必要になる、と。

続編的に日本の建築史や近代以降も読んでみたい。

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